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BASS☆MASTERZ  作者: 江戸川維新07
第3話
11/21

失速

 AM8:30


 立て続けに二匹のバスを釣り上げた大介だったが、その後スピナーベイトでのアタリ(魚がルアーに食いつく事)は得られず、攻め方とルアーの選択に疑問を持ち始めた。


(クソ! このポイントならもっとバスの反応があってもおかしくないはずだが......それほど一昨日の雨の影響が強いって事か......それなら!)


 大介は違う竿を取り出しルアーをセッティングし始めた。


「あれ? ルアー変えるのか?」


「そうだ。スピナーベイトに反応するバスが少なすぎる。濁りのせいで、まだバスが口を使う事を避けてるんだ」


「え!? 濁り? 避ける?どういう意味だ!?」


「しょうがねえな、説明してやろう。今芦ナ湖の水は濁ってるだろ? しかし、ここの水は本来透明なクリアウォーターなんだ」


「透明なクリアウォーター?」


「そう。浅場なら底が見えるほど透明だ。しかしそこに大雨が降り、湖の水は増水。クリーム色に濁り始める。そうなってくると、バスは水が透明だった時とは違う動きをする様になる」


「違う動き?」


「例えば、夜にお前が部屋でテレビを見ている時に停電になったとする。さあ、まずは何をする?」


「何をって、まずは懐中電灯かローソクを探すだろ」


「そうだ。間違えても夜飯を先に食べようとは思わないだろ? バスも一緒だ」


「そ、そうか! 透明な水に濁りが入った事によって、バスの視界は悪くなって食うのやめるのか! あれ? ならなんでさっきのバスはルアーに食ってきたんだ?」


「まだ濁りがあるからと言って、ずっと何も食わないワケにはいかないだろ? 体力のある魚からエサを食い始めるんだ。ちなみにこのポイントは流れ込みがあるおかげで新しいキレイな水が入ってくるし、湖底にウィード(水草)が生えていて酸素も豊富だ。エサを食うには申し分ないポイントなんだ」


「でも、兄貴は最初だけだったよな!」


「うるせえ! まだバスの状態が良くなかっただけだ! これだけいい条件が揃ってれば魚は必ずいるはずだ! ただ、エサを食おうとはしてないんだ」


「ええ!? なんだよそれ! お手上げじゃんか!」


 すると大介はニヤッと笑った。


「それがな、そうでもないんだ」


 そう言うと大介はルアーボックスからあるルアーを取り出し、タカシに見せた。


「クランクベイト。これでやる気のない魚にリアクションで食わせる」


「リアクション!?」


 大介が取り出したのは、ずんぐりむっくりした丸い体に透明なプラスチック製の舌がついたルアーだった。


「まあ、見てな」


 そう言って、大介は流れ込みの近くの何もないエリアにルアーを投げた。


「この下には、割と大きめな石がたくさん沈んでる。食う気のないバスはそう言うストラクチャー(障害物)に寄り添ってボケーっとしてるんだ」


 すると大介の竿がコンコンと揺れ始める。


「よし、底の石に当たってる。これで少しでも出っ張った石があれば......」


 タカシは大介の竿に視線を注ぐ。竿はコンコンコンコンと小刻みに揺れていたが、ある時少し大きめにコンと揺れるとそのままグーッとしなり始めた。


「よしっ! これがリアクションだ!」


 大介は鋭くフッキングすると、そのまま強引に引き寄せキャッチした。


「500gってとこか。ギリギリだがキーパーだ。」


 30センチ程のバスを生簀に入れると、クランクベイトを手に取り話し始める。


「今の竿先見てたか?」


「ああ! 小刻みに揺れてたのに急にブンってなったかと思うと釣れてた! 何だったんだ一体!?」


「クランクベイトっていうのはな、ケツを振りながら水中に潜って行く様に泳ぐんだ。最初のコンコンは地面の岩に当たったのが竿先に伝わっている。後からの大きい竿の揺れは、何か出っ張った石に当たってクランクベイトが泳ぐ体制を崩したんだ」


 そう言って大介はクランクベイトがどう体制を崩すのかを空中でやって見せた。


「この体制を崩すっていう行為は、エサとなる魚が急にパニックを起こして、暴れ出した様な錯覚をバスに与えるんだ。するとそれを見ていたバスは本能的に口を使ってルアーをくわえてしまう。これがリアクションだ」


「そうなのか! バスは食い気だけでルアーを食うんじゃないんだな!」


「その通り。まあ、いろいろと諸説あるが。大きく分けてエサにどう似せるかって言う釣り方と、バスの本能を意識した釣り方の二通りがあると思っていい」


「すげえな。奥がふけーんだな!」


「当たり前だ。ん?」


 大介のポケットに入っていたスマートフォンが鳴る。そのままポケットから取り出し画面を確認した。


「もう9:00か。早えな。ん? 中間報告?」


 大介はスマホの画面を獣の様な目で見つめた。


「おい! どうしたんだよ兄貴! そんな顔して!」


「ガキ......ちょっと黙っとけ」


 タカシは大介の物凄いオーラに口をつぐんだ。あの、川藤と言うプロと話していた時の様な殺気が漂っていたのだ。

 大介はゆっくりとタカシにスマホの画面を見せる。


「こ、これは......!!」



『1位 川藤チーム2000g 3匹 2位 青井チーム1200g 2匹』



 大介は殺気を込めて呟いた。


「あのジジイ! リミットメイクしてやがる!」

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