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9話 酒の魔の手

「――――――うっ…………うーん……?」


 眩しい……。

 目を開けていないが、顔に当たる確かな光を感じる。それに、ガヤガヤと人の話し声? 足音? いろいろと混ざった音が聞こえる。

 もう朝か……。

 起きて、まずは顔を洗って……ご飯食べて、歯を磨いて……。そして学校か……。

 もう少し寝ときたいけど、早く起きないと遅刻してもいけないな。

 そう思い、俺は目を開いた。

 視界が真っ白になり、目が慣れるにつれてだんだんと見え始めた。


「ふわぁ~っ――――え、あれ? 俺の部屋じゃない……?」


 目を開けると、そこには見慣れた自分の部屋の天井ではなく、建物によって細長い長方形に切り取られた青空と、頭の向いている方角には太陽が目に入った。


「ここどこだ?」


 俺は、まだ寝起きでぼーっとしている頭で考えた。

 俺は部屋で……部屋で…………?

 ――いや、俺は死んで異世界に来てたんだった。寝ぼけて忘れていた。

 寝起きで頭のまわっていない俺は、異世界に来たことはなんとか思い出した。

 起きたらいつもの天井が青空に変わってるから何が起こったのかと思けど、ここ異世界だもんな。そうかー、異世界に来たんだよなー。

 あー、風と日光が気持ちいいなー……。良い匂いもするし……。


「…………」


 頭の方角から吹く風に、髪やコートの裾がたなびく。俺は心地のよい風に吹かれ黄昏たそがれていた。しばらくそのままぼーっと空を見上げていた。

 だが、そうしているうちにだんだん眠気はとれ、頭がさえてきた。


「あぁー……ほんと良い風だなぁ――――ん? ちょいまった、風? それに青空? え? ここ外じゃん!?」


 頭がやっと正常運転を再開し、自分が外で寝ていたということに、今更気がついた俺は飛び起きた。

 手でバンッと床をたたき、その反動とともに体を素早く起こした――――つもりだったが、叩きつけた右手は床に触れることなく華麗かれいくうを切り、そのままバランスを崩して何かから転げ落ちた。

 右手は空を切ったものの、左手はそのまま自分の乗っていた物をとらえていたせいで、仰向けの状態から空中で半回転して顔面から床にたたきつけられた。


「んぐぅぅ……おー、痛たたたた」


 ガチャガチャと背中の剣をならしながら地面に落ちた俺は、落ちたときに強打した鼻を押さえながら、自分の落ちてきた方を見た。俺は並べて置かれた木の箱の上から地面の上に落ちていた。その箱は俺の体二個分程の幅しかなかった。


「うーん……? 俺は何でこんなところに?」


 そこは薄暗く、狭い道だった。左を見ると明るく、人々が行き交うのが見える。

 どうやら大きな道から1本外れた裏路地にいるみたいだ。

 どうして俺はこんな所にいるんだ……?

 昨日は確か――クエストの報酬を貰った後にトイレさんに飲みに誘われて、そのまま酒屋に連れて行かれて……。

 えーっと――よし、だんだん思い出してきたぞ。

 その後は確か、その酒場でワライジニダケのバターソテーとかいうなんとも手を出しにくい食べ物を食べさせられて――トイレさんが「めでたいときは酒に限る!」とか言って俺の分までビールを注文して――。

 ――確かその後、周りにいた客を巻き込んで乾杯することになって、流れ的に飲まなきゃいけない感じになって――。

 乾杯して、ビールを一杯みんなと飲んで、それから――。

 それから……………………?

 あれ? 全く思い出せない……。ビールを飲んでからの記憶が全くない。

 やばい、覚えていない……。大人がよく飲み過ぎで途中から記憶がないって言ってるあれか? ビール一杯でか? いくら子供でもそんなことあるのか?

 くそー……。

 あの後どうなったんだろう。

 そして、それも気になるんだが、なぜ俺はこんなところにいる? 思い出せないから分からないけど、ここで寝てたってことは俺、ここで野宿したのか!? なんでだ!?

 金はかなり持ってたはずだし、野宿なんてしなくていいはずだ。そうならないようにゴブチンを狩ったんじゃないか!

 なのにどうしてこんなところで寝てるんだ?

 結局、人生初野宿になったじゃねぇーかよ!

 マジでわけ分からねぇー……。


「うおぉぉぉぉ! なんで野宿なんかしてんだ、俺はー!」

「おうおう、荒れてるな! アリサ! もしかしてまだ酒が抜けてないのか?」

「……!?」


 そんな声が自分の右後ろから聞こえてきた。どこか楽しそうな聞き覚えのある声。

 俺は声のする方を向いた。

 風でたなびく長めの茶髪の髪、長くて尖った耳、軽装に腰にさしている二つの剣、そしてむかつくぐらいのイケメン……。

 そこにいたのは、昨日行動を共にし、一緒に飲みに行ったトイレさんだった。

 トイレさんは俺の寝ていたであろう木の箱の反対壁側に置いてあった木のたるの上であぐらをかいて、こちらを楽しそうに見ていた。

 何でこいつがここに? なんか知ってるのか?

 それと顔が腹立つ……。


「お前、なんでここに? というかなんで俺はここに?」

「やっぱ覚えてないのか! ブフォー!」


 トイレさんは口を手で押さえ、手で樽をバンバン叩きながら笑っている。


「なんか知ってるんだったら教えろよ!」

「ほんとに覚えてないんだな。プププー」


 樽の上から楽しそうに俺を見てやがる。笑い方といい、顔といいすごい腹立つな……。

 でもこいつぐらいしか何があったか聞けないし――我慢するしかないのか……。


「ほんとに教えてくれよ! 俺はなんで金があるのに野宿なんかしたんだ?」

「あ、金なら持ってないよ」

「はぁ!?」


 急にそんな訳の分からないこと言われて、俺は急いで金を入れていたズボンのポケットに手を入れた。

 しかし、言われた通り、本当にそこには硬貨の一枚も入っていなかった。

 その代わりに腰に黒いポーチが付いているのに気がついた。

 次々と訳の分からないことが増えていく……。


「何で金がないんだ……それにこのポーチなんだよ……」

「まぁまぁ、その辺の話も話してやるよ」


 本当に何があったんだよ……。聞きたくないような気もするけど、今の状況は謎が多すぎる。

 トイレさんは樽から足を下ろして座り直し、楽しそうに語り始めた。


「昨日の夜10時頃だったかな? 俺は酒で酔ってベロンベロンになったお前を連れて、近くの宿屋を目指して歩き出したんだよ。そしたら、路上で人だかりが出来ててな、そこにおまえが行きたいとか言って入っていったんだよ」


 何のことだよ……。

 というか、俺は何でそんな怪しそうなところに入っていったんだ……?


「全く記憶にないぞ……」

「だろうな。それで、しょうがないから俺もついて行ったんだよ!」


 トイレさんは樽の上で、体を前に後ろに大きく揺らしながら楽しそうに話している。


「それで? なんか良いことでもあった?」

「あぁ……天国があった……」


 トイレさんは満足に満ちた笑顔をしていた。

こいつにこういう顔をされると嫌な予感しかしない。


「はい? 訳が分かりませんよ? 天国って何だよ?」

「ふふふ……聞いて驚け! この村の夜の一大イベント、第十五回参加者男限定ブラジャー早外し王決定戦だ!」


 嫌な予感的中。そして、確かにいろいろと驚いた。

 そんな、いかにもくだらないことを天国だとか言うこいつの頭については今更として、何だよ夜の一大イベントって……。

 だいたいブラジャー早外し、しかも男限定って大丈夫なのか? この世界に法律とかあるかは知らないけど、絶対に村の中で気軽にやって良いことではないよな?

 そんな大会が十五回って……よくばれなかったな…………。


「なんてところにおまえを連れて行ってしまったんだ……」

「アリサがいないと気がつかなかったよ!」

「ちっ……酔った俺は何してんだ——それでおまえはその大会に出たのか?」

「出てないよ!」


 え? 出てないのか? 意外だな。こういうのが大好きなこいつのことだから出てると思ってたんだが……。


「何で出なかったの?」

「ぷっ……ぷはははははは!」


 は? 何かそんなに面白いことを言ったか?

 いつにもまして笑い方がキモいし、うざい。


「なんだよ?」

「ひーっ……お、おまえ本当に覚えてないんだな!」


腹を抱え、足で樽をバンバン蹴りながら、ひーひー言って笑っている。俺の知らないことを自分が知ってるという立場がよほど嬉しいらしく、ここぞとばかりにおちょくってくる。

こいつ、後でおぼえてろよ……。


「だからそう言ってんだろ!」

「あー、面白い! 優勝したのに、あんなこと言ってたのにそれも全部忘れたのか!」


 はい? 俺が優勝……? マジで言ってんのか?

 というか、俺がそんなくだらないことに参加した?

 いやいや、ないない。あるわけがない。

 こいつ、また俺をおちょくってるのか?


「俺が優勝? 冗談も大概にしろよ!」

「ぷーっはははは——冗談ねぇーよ! おまえが酔った勢いで参加してぶっちぎりで優勝したんだよ!」

「本気で言ってるのか?」

「うん、酔った勢いで」


 信じられない俺は、嘘を言ってないかトイレさんの顔を見た。

 ————た、確かに嘘をついてるようには見えない……。酔った勢いでもそんなことするか?

 でも、酔ってる間の記憶は俺にはないし、トイレさんが嘘を言ってるようには見えない。

 ということはマジなのか……。


「止めてよ……」

「止めたよ!」

「何でよりによってそんなところに行ってしまったんだ……」

「確かにそうだな。あの人だかりだとかなり近寄らないと何が起こってるか分からなかったからな。————でも、あれだと人だかりの中で何が行われているか分かっていた感じだった気が——」

「え? なんて?」

「あ、いや、なんでもない……」


何か言ったような気がしたが……まぁ、いっか。


「それで、嘘じゃないんだよな?」

「ほんとだって! それに出ちゃうと、今日手に入れたお金が全部なくなっちゃうから止めとけって忠告までしたんだよ?」

「おい、ちょっと待て。金が全部!? それ参加費いるのか?」

「そうだよ。ちょうど10000コス」


 それで俺の金が……。

信じたくはないがトイレさんは嘘はついてない。顔を見ればそれぐらいのことは容易にわかる。

 ということはやっぱり……。


「そんなことで……うぅぅ……」

「アリサ、俺が止めたとき言ってたよ? 『俺はタクミからブラジャーを外すテクを教わってるんだ! だからこんな奴らに負けるわけにはいかない!』って」

「俺がそんなことを!? もはや別人だな……」


 そういえば拓実(たくみ)が話していたどうでもいい話の中にそんな内容のことがあったっけ……。

 確か、止めているところに指を置いて————って、今はそんなことどうでもいい。

 いや、今後一切そんなことはどうでもいい……。


「でもすごかったんだぜ、アリサ! おまえのブラさばき! もう、ほんと一瞬で、手が触れたかと思うとブラがもう……」

「止めてくれ! 聞きたくない!」

「いきなり人だかりの中心に行ったかと思うとな——」

「おい、人の話聞いてるか……?」


 俺の声が届いていないトイレさんは、足を肩幅より少し開いて軽く膝を曲げ、右手をにぎり左手を開いて、急に叫び始めた。


「空ぅぅ前! 絶後のぉぉ! ブラジャーハンター! すべてのブラを愛し、ブラに愛された男!」


あまりに急だったので驚いた。そして、物凄いことを平然な顔をして叫んでいるこいつにも驚きだ。

こんなこと叫んだら周りの人にやばい奴らと思われると思ったが、幸いなことにその路地には俺とトイレさん以外誰もいなく、通りを歩く人にも聞こえていないようだ。


「カップブラ、スポーツブラ、フロントホックブラ! すべてのブラの生みの親!」


 今度は、恥ずかしい単語叫ぶたびに親指、人差し指、小指の順に胸の前で指を立てていった。

 この世界にもそんな種類の物が存在してんのかよ……。

 それをこいつが生み出した?

 いや、それはないな……。


「そう! 我こそは~…………たとえこの身が朽ち果てようとも、ブラを求めて命を燃やし、燃えた炎はブラとなり、見る物すべてのブラを外す!」


 何言ってるのこいつ。どうやって見る物すべてのブラ外すんだよ? 人混みでも目に入った人全員外すのか? まぁ、考えるだけ無駄だな。


「そ~う! 我こそは! サンシャイ~ン……あ————まいお菓子が大好きでぇ~す!!」


 長いな、この茶番はいつまで続くんだ……。


「貯金残高10000コス! 携帯番号の下四桁0・2・8・1! 乙パイと覚えといてくださ~い!」


 ん? 携帯番号? そんな物までこの世界にあるのか——え? あるの!? ないだろ?

 というか、その番号って……。


「この世のすべてのアリサの中で最もブラを愛する我こそはぁぁ~! サンシャイ~ン……ア……ボイン……リ、サ!」


「ア」で腰に手を当てて上半身を後ろに倒し、ボインという効果音とともに胸の前で半円を手で描き、そのまま言い切った。

 ア……リ……サ…………? アリサ!?

 え? なんで俺!?

急に自分の名前が出てきて驚いた俺はトイレさんに説明を求めた。


「おい、なんで——」


 なぜ俺の名前が出てきたのか聞こうとしたら、それを遮るようにトイレさんが体を起こした。

 そして、目を見開いて叫んだ。


「イエェェェェェェェエエイ!!!!」


 うるさい。

 そしてなんだったんだ……?


「長いな——それと、なんで俺の名前出てきたの?」

「あー、長かった」

「うん。で、これがなんなの?」

「おまえが、何十人もの男冒険者とブラをしたそういう職業の女性達の前で叫んだ自己紹介だよ! ブッフォォォ!」


 え? 俺が今のを? 嘘だよね……?


「え……今の超恥ずかしくてキモイのを俺が……?」

「そうだよ!」


 信じたくないが、やはりこいつが嘘を言ってるようには見えない。

それに、携帯番号の下四桁も合ってるし、乙……って覚え方も昔拓海(たくみ)が言ってたやつだし……。


「あ、そういや終わった後に『ジャァァスティスッッ!!!』と叫んでたな」

「ほんとに俺かそれ……?」

「おまえだよ!」


正義(ジャスティス)ってなにがだよ……。

もう完全に別人格になってるよな……。


「それで、周りの人はなんて……?」

「始めは固まってたけど、ブラ外し王の称号を持つにふさわしい人間だってみんな盛り上がってたよ」

「……」


 穴があったら入りたい……そしてそのまま埋まって死にたい……。

 歩いていると周りの人からブラを外す変態と思われるとか、死んだ方がましだ。

 これじゃあ、ただの生き地獄だな……。


「そんなに落ち込むなって! 男たちからしたらおまえはブラ外しの王なんだぜ? 変なことなんて言われるはずないよ!」

「そう思われてることが嫌なんだよ……」


 これは面倒くさくなりそうだ……覚悟しとかなきゃな……。


「ところで、優勝したんだったら何かもらえたのか?」

「あぁ、そりゃあ、ブラ外し王の称号だろ?」

「え? それだけなの!?」

「いや、そんなことはないけど……」

「じゃあ、何がもらえたの?」

「ほんとついでみたいな物だぞ?」


 あんな称号のついでって——いったい何が…………。


「そのポーチだよ」


 そういってトイレさんは、俺の腰に付いていた黒いポーチを指さした。

 それでこんな物もってたのか……てか、これついでじゃないだろ?


「なぜそれを先に言わない……あれじゃあ称号がメインかと思ったぞ」

「え? 称号がメインに決まってるじゃん! そんな高い金さえ出せば買えるポーチなんかより!」


高い金を出して買わなきゃいけないものが貰えるっていい事じゃないのか……?

そう思い、トイレさんに反論しようとしたが————うん、凄いマジな顔をしてる。こいつにまともな答えを求めた俺がバカだったみたいだ。

 それよりも、こいつが今サラッと言ったが、このポーチ高いのか?


「なぁ、このポーチ高いのか?」

「なんだよ。称号よりポーチかよ! これだから貧乏人は……」


貧乏人なんて初めて言われたな。ちょっと新鮮だな。

でも、こいつに言われるのは事実だとしても嫌だ。


「人の物盗んでお金持ちな奴にだけは言われたくない! いいから教えろよ!」

「へっ! たったの……たったの! 100000コスだよ」

「うぜぇ……でも、めっちゃ高いじゃん」

「そこまでじゃないよ? ポーチにしては高いかな? って程度だよ」

「俺から見たら高級品だ」

「そっか、今の所持金ゼロだったね!」


そっか、くだらないものに金を使ってしまって、また金がないんだった……。


「くっ……またクエストに行かなきゃな……」

「今日は午後から用事があるから一人で行けよ?」

「あ、分かった。まぁ、始めからそうしようかとは思ってたんだけど——ところで用事って何だ?」

「ついてくるか?」

「いや、嫌な予感がするのでやめときます」


こいつの用事なんてどうせろくなものではないだろ。多額の金の入るアルバイト的なものでも正直迷うな……。


「ふふふ、宝が私を呼んでいる……!」


 凄いいやらしい笑顔でトイレさんは笑った。

うん、1日で億万長者になれたとしてもやらない。

 しかし、こいつは俺の前でよく平気で犯罪予告できるな。

 こいつ国につきだしたら金もらえないかな……。


「聞かなかったことにしよう」

「なあ、アリサ? 午前中はあいてるんだが何か知りたいことはないか?」

「お! いいのか? じゃあ文字教えてくれ!」

「そういや読めなかったね! プププー!」

「うぜぇ……」


一刻も早く文字を覚えなければ……。


「まぁ、とりあえず図書館でも行くか! ここからすぐ近くにあるし」

「どうも。なんかいろいろとすいませんね」

「気にするなって! あのブラさばきのテクを教えてくれればいいよ!」

「絶対嫌だ」

「えー! なんでよー! あの一瞬で外せるテクが身につけられると思ったのに!」


こいつに教えては駄目だ。犯罪の肩を持つようなことはしたくない。


「おまえが身につけると大変なことになりそうな気がする」

「よく言うぜ! おまえのあのテクなんて毎日外しまくってるかんじだったぞ!」

「変なこと言うなよ!」

「もしかして本当に……」

「断じてない!」

「アリサ……ほどほどにな……」

「おい! 聞いてるか!」


くそ、このネタでいつまでいじられるのだろうか……。

ほんとに面倒くさいことになりそうだ……。


「え? なに? ブラジャーキング?」

「おい、言いたいことはそれだけか?」

「や、やめて! 私ブラなんてしてないわ!」

「殺す!!!」

「きゃー、外すのは八百屋のおっちゃんのだけにしてくれ~!」


自分の胸を守るようにしてトイレさんは言った。

 外すのは八百屋のおっちゃんのだけ?なんだそのもうすでに外したみたいな言い回しは……?

 というか、おっちゃんがブラジャー!?


「なんで俺がすでに八百屋のおっちゃんのブラを外したみたいな言い方なんだよ!」

「え? 自分で言ったんだろ? 見た物すべてのブラ外すって」

「そ、そうだけどさ……で、でも、それだと八百屋のおっちゃんがブラしてるってことに!」

「そうだよ?」

「え……」


何それ、もしかして…………?


「アリサ、人にはね、それぞれ趣味というものがあるんだよ」

「お、おう」


 聞かなければよかった……次に八百屋のおっちゃんと会ったときどんな顔すれば良いんだ……?

 俺、もうあそこで食材買えない……。


「そして俺の趣味は——」

「あ、興味ないし、なんとなく予想つくし、聞きたくもないのでいいです」

「ちぇっ! 男のブラ外す趣味の奴に言われたくないな!」

「……」


 俺はシュヴァルツルースを勢いよく背中の鞘から抜き、斬りかかった。


「え、あっ、ちょっ、危ない危ない」

「死ねぇぇぇぇぇぇええ!」


 シュヴァルツルースが周りの箱や樽を切り裂くのを見て、トイレさんは顔を青くして走り出した。


「くそっ、待て!」

「危ない危ない! 剣しまえ~……」


俺らは昨日と同じく鬼ごっこを始めた————。


 ◇◆◇◆TO BE CONTINUED◇◆◇◆


更新遅れててほんとすいません!

書き直しがだいたい終わったので、最新話書くの頑張ります!

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