恋が織りなすデスゲーム
犯罪者「…どうやらメンツは揃ったようだな」
イケメン「そのようだね」
係長「みんな今日は集まってくれてありがとう」
ビッチ「べ、別にイケメンさんがいるから来てあげただけなんだからね!勘違いしないでよね!」
アパレル「こうして集まるのも久しぶりね」
ショタ「わーい!みんな元気そうで嬉しいよ!」
学校にある空き教室の一室に中年の男から若い女性や小さな子供が一堂に会していた。
老若男女入り混じったその不思議なメンバー構成はかつて無人島で共にデスゲームをして来た仲間なのである。
ここにニートとカグヤが加わればかつて島でデスゲームをした仲で生きているものは揃うのだが…今回はニートとカグヤはその場にいなかった。
係長「みんなに集まってもらったのは他でもない。実はいま、凪沙の身に不穏な影がチラついているんだ」
ビッチ「不穏な影?」
係長「そう、今日はそれについてみんなで話し合うために集まってもらった」
イケメン「なるほどね、仲間のピンチということか…安心しなよ、僕がいるからには凪沙に傷一つつけやしないよ」
ビッチ「やだ!イケメンさんかっこいい〜!!。あぁ…私も守ってもらいたいなぁ…」
ショタ「凪沙お姉ちゃんを傷つけるような奴は僕が許さないよ!」
イケメン「そうだね。相手が誰であれ、仲間を傷つけるような奴は許せないよ」
ビッチ「さすがイケメンさん!!イケメンさんの敵は私の敵、そんな奴は私がボコボコにしてあげる!!」
アパレル「…それで、その不穏な影っていうのは?」
係長「それに関してなんだけど…みんなはニートが凪沙の部屋に寄生してるのは知ってるよね?」
アパレル「話には聞いてるけど…まだ同棲してるんだね」
係長「それで、みんなも島で一緒に暮らしていたから知ってると思うけど、ニートは屑だ」
犯罪者「屑だな」
アパレル「ど屑ね」
イケメン「まごうことなき屑だね」
ビッチ「動く粗大ゴミでしょ?」
ショタ「…ごめんね、ニートのお兄ちゃん、擁護出来ないよ」
満場一致で屑認定されたニート。
係長「だけど、島にいた頃はそのニートの屑をみんなで分散して背負っていたからちょうど良い刺激物になったんだと思う。だけど、凪沙の場合は違う。部屋で二人で暮らしている彼女は一対一で真正面からニートの壮大な屑を受け止めなきゃいけないんだ」
犯罪者「凪沙も可哀想に…」
イケメン「凪沙の苦労は計り知れないね」
アパレル「ええ、本当よ。彼女のことを思うと涙が出てくる」
ビッチ「惜しい人を亡くした」
ショタ「凪沙お姉ちゃんは凄い人だね」
その場にいたものは皆、ウンウンと頷きながら凪沙の苦労を思っていた。
係長「それで、いま彼女に降りかかっている、もしくは降りかかろうとしている最悪な災厄というのが…その…あくまで僕から見た印象の話なんだけど…実は凪沙は…ニートのことが異性として好き、もしくは好きになりかけているということなんだ」
アパレル「そ、それは…本当なの?」
犯罪者「最近、凪沙は口を開けばニートの話しかしない。一緒に住んでるからそれなりに話題にもなるだろうが…それを差し引いて見てもニートに気があるという印象を俺も受けた」
イケメン「うーん…二人がそういうならかなり有力な線とみて間違いないね」
ビッチ「凪沙も可哀想に…心まで屑に住み着かれて…」
係長「それでもし本当にそうだとして、凪沙の身になってデリカシーのないニートと一緒に暮らしている光景を想像してみてほしい」
係長に言われて各自、目を閉じてニートとの暮らしを想像し始めた。
皆最初は静かに黙していたが、やがてアパレルはわなわなと体をふるわし、声を発した。
アパレル「あっ…ダメ、ダメよ私!幾らムカつくからって包丁に手を伸ばしちゃダメよ!!」
イケメン「…ダメだ、わずか一週間でニートを刺し殺してしまった」
犯罪者「よく一週間も持ったな。俺は三日で刺し殺したぞ」
ビッチ「すごーい!私なんて3分も持たなかったのに…」
ショタ「みんな殺意高くない?」
係長「みんなも身に染みて体験したように、このままではニートが刺し殺されかねない」
アパレル「じゃあ凪沙に襲いかかる不穏な影っていうのは…ニートのことなの?」
犯罪者「そういうことだな」
ビッチ「なるほど、じゃあ仲間を傷つけるようなニートを処理すれば万事解決というわけね」
イケメン「いや、一応彼も仲間だからさ」
犯罪者「仲間を傷つける奴は誰であろうと許さないんじゃなかったのか?」
イケメン「僕もまさか仲間の中にユダが混じっているとは思わなくて…あ、でも人のこと言えないか」
アパレル「それで、私たちはどうすれば良いの?。凪沙の恋を応援すれば良いの?」
ショタ「それはダメだよ。ニートのお兄ちゃんはカグヤ姉ちゃんと付き合ってるんだから」
ビッチ「大丈夫よ、ショタ君。ニートが消えてなくなれば全部解決するから」
犯罪者「まあまあ、一応ニートも仲間だからな」
係長「これはあくまで僕の意見なんだけど、凪沙の恋が成就しようが、失恋で終わろうが、どちらにせよ今の凪沙には良い薬になると思うんだ。あの年の恋愛関係なんてコロコロ変わってもおかしくないし、別に悪いことじゃないと思う。だから僕達がそれにあれこれ言うのはあまり良くないと思うんだ」
犯罪者「それもそうだな。あいつらとお盛んな年頃なんだから恋愛の一つや二つでガタガタ騒ぐもんじゃないな」
係長「だけど…包丁を取り出すようなバットエンドだけは避けたいんだ。そのためにも凪沙に対するケアを常日頃からするべきなんだと思う。…要するに、彼女にはみんな優しくしてあげて欲しいんだ」
アパレル「それもそうね。私達は最悪の結末だけにはならないように影から見守るのが一番ね」
イケメン「凪沙から話を聞いてあげるだけでも十分なストレスの解消にもなるだろうし、彼女を支えてあげないとね」
ビッチ「私も、凪沙が傷ついた時はすぐ駆けつけて代わりにニートを殴るようにするよ」
犯罪者「はっはっは…まさか恋愛面でも殺し殺されかねない状況下に置かれるとは…つくづくデスゲームに縁のある奴だな、ニートは」
ショタ「でもニートのお兄ちゃんなら大丈夫だよ。だって、お兄ちゃんは一度もデスゲームには負けたことがないからね」
犯罪者「はっはっは、それもそうだ。あいつほどデスゲームを経験した奴はいねえからな」
係長「なんにしても、僕達は彼らを見守りつつ…」
アパレル「彼女らを支えながら…」
イケメン「時には優しく…」
ビッチ「時には制裁を加えて…」
犯罪者「高みの見物を決めつつ…」
ショタ「みんなで一緒に…」
係長 アパレル イケメン ビッチ 犯罪者 ショタ「人の恋路を楽しむとしますか!!」
こうして、かつて島で共に暮らした六人のメンバーによる凪沙をサポートしつつ、人の恋愛を観戦しながら楽しむ会、その名も…『とりあえず包丁はしまおうの会』、略してTHSが結成されたとさ。