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泥濘より咲く
恐ろしく寒い夜、雨に打たれた身体は凍える。
雪混じりの風は冷たく、芯から冷えて熱は消える。
誰かのせいで、と世を恨む。
私のせいで、とお前は嘆く。
火の気のない部屋は寂しく、隣人の灯りは妬ましい。
壁の向こうの幸福が、お前を置いて笑い合う。
たった一人で生きてきて。
ただ一人のまま死んでいく。
何もない手の内に、鉛筆一つ。
ちびた先を毟り、尖らせろ。
胸の内に刻む。孤独、後悔、憎悪に苦悩。
苦々しい不愉快の内から、花開く夢を見ろ。
届かない極楽を紙の上に写せ。
無人の楽園に筆先よ、至れ。
深く暗い夜の天上から、煌く星の光は降る。
お前の不幸よ羽ばたけ、空を翔ける羽になれ。
人々の嘲笑も、透せば真白。
穢れた指で鮮やかな花々を散らせ。
まだ君の知らぬ幸福の降るまで。
のたうち回れ、蓄えよ。
泥濘より生まれた物語よ、叫べ。




