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最後の星
地表の喧噪に紛れて霞む。
吹き上がる埃に揺らぐ、君は最後の星。
求めたものは失われ、欲したものはこぼれ落ちた。
己が身を燃やすのは苦しかろうと、差し出された手をはね除けて。
世界は、甘いカラメルがけのプディングの中。
種子のように丸まって眠る、君は輝ける星。
巨大な電波塔のアンテナの、先っぽに靴紐を引っかけた。
ソーラーパネルが巻き起こす熱風にスカートの裾が翻る。
誰もが夢見た科学の先で、人工知能に腕を引かれて。
雁字搦めで今宵も瞬く、君は孤独の星。
薄赤い日暮れに真っ先に駆け込み。
誰もが夜を去るまで、ただ黙ってそこにいる。
最初にして、最後の星。
眠れぬ夜の、雨音に包まれて。
姿見えなくても、ただ黙ってそこにいる。
君は。
恥ずかしがり屋の顔した、輝ける星。




