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まだ君が立っている
あの真昼の白い光の中、君が何を見たか知っている。
この世の闇をすべて溶かしたような灼熱。
弱い者が更に弱い者を蹂躙する絶望の果て。
そこに人はいない。
這いまわる弱者を食い荒らす猛獣の群れ。
あの夕暮れの赤い雲の下、君が何を見たか知っている。
理性の輝きの失われた死人の目。
ベルトコンベアを流れていくだけの思考停止。
そこに知性はない。
蟻の行列を踏みにじる無思考の遊戯。
このままくるりと踵を返して、見なかったことにしたかった。
僕がそう思うのと同じように、君もそう思ってるんだろう。
逃げられない現実に両目を塞いで。
でも、まだ君が立ってる。
嘆きのコーラスが風になびく。
足元に希望を踏みつけて、君が立っている。
世界に救いなんてない。
だけど。
君はまだ立っているから。




