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もしも、僕が。
もしも、僕が王さまだったなら。
君の欲しいもの、何だって買ってあげるのに。
きらきら輝くサファイアの首飾り。
金色に縁取られた、繊細な彫刻の馬車。
真っ白な壁に空を映す、君のためだけの宮殿だって。
もしも、僕が吟遊詩人だったなら。
君を讃えるうた、いくつだって謳うのに。
打たれても立ち上がる、強い心。
希望を失わず前を見る、その瞳のうつくしさ。
自分だけの正義を、黙って両手に包む優しさだって。
もしも、僕が魔法使いだったなら。
どんな魔法だって、君にあげるのに。
君の心が傷付いたあの日まで、時間を巻き戻そうか。
長いこと夢見てる君の願い、叶えてあげようか。
それとも、大空を翔けて海を渡って。
君のこと嫌う人が誰もいない場所まで、連れて行こうか。
もしも、僕が。
もしも、僕が今、君の隣にいたら。
秋風に吹かれる寂しい肩、抱いてあげられるのに。
たった1人で冬へと向かってく背中。
そっと、押してあげられるのに。
もしも、僕が今、君の目の前にいたら。
きっと2人、抱きしめ合って、春を待てるのにね。