表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/38

永劫の書棚

 この書棚の中には、あなたの書いた物語があるのです。


 都会の排気ガスと舞い上がる熱風で燻製になった、私の脳細胞の真ん中。

 内側のまだみずみずしい場所を、規則正しく区切った木製の書棚。

 私だけの秘密の分類で並べてあります。


 小さな私は隙間に入り込んで、今宵の1冊を探します。


 どこからか、甘い香りが漂ってきました。

 しっとりと肌を覆う、大人の恋。

 頬がきゅっと窪むような、少年少女の淡い想い。


 時折、書棚の影を照らし出すように、稲妻が奔ります。

 ページの間から閃光がはみ出ているのはヒロイックサガでしょう。

 敵に挑む勇者達の剣の煌めき。

 人々に紛れ込む闇の軍勢を押し退け、光を当てる英雄達。


 こちらの棚からこぼれ落ちるのは、まだ見ぬ異国の香ばしいスパイス。

 あちらの棚から流れてくるのは、遠くから響く至高の音楽。


 空中を舞ってキラキラ輝く、友情、愛情、希望に栄誉。

 胸を貫いて飛び抜けていく、悪意、嫉妬、破壊に孤独。


 指先が迷って、大事な1冊を取り落としてしまいました。

 私はそれを拾い上げ、角の折れたページを指先で伸ばし、そして、胸の中に抱え込むのです。

 書棚の隙間に戻って、広げたページの中へ潜り込むために。


 あなたの物語が、ここにあります。

 私の命の中で、最も熱い血の流れる、永劫という名の書棚に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ