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Absolute Plaything  作者: N
8/22

親子

静寂。正確に言えば静寂ではなく、沈黙。


耳障りなあの声は聞こえない。

とてつもなく耳障りなアイツの声。

足の踏み場すらない見慣れた部屋。


昨日とは違う散らかり方なのか、それすら判らない。


そんな部屋だ。


『ただいま』


今更、言う気も起きない言葉。


自分の家なのにも関わらず、相変わらず落ち着かない。

ここは他人の部屋のようだ。


異物を拒絶するだけの、仮初めの『家庭』は苦痛でしかない。


子供の頃から、馴染めない関係だけが残る場所。

血が繋がっていると言うだけの他人と住むのは、地獄だ。


ましてや――――


その共同生活をしなければいけない相手が、重度の精神病だと言うならなおさらだ。


部屋の隅で動く物体と、目が合う。

何か言いたそうに口を開く。


聞き取れないぐらいの呟きが辛うじて聴こえた。その声に吐き気がする。


煩い。


今すぐにでも殺してやりたいとすら思う。


人間には我慢の限界と言うものがある。

いくらコレが自分を生んだと人間でも、この世から消えて欲しいとすら願う。


自分を生んだと言う事実だけで、縛られるのは納得がいかない。


コレと一緒に生活しなければならないという事は、自分の人生を捨てろと言う事だ。


それを要求したのは他ならぬ頭の悪い血縁者ども。


『何てコトを言い出すのっ』


ヒステリックな声。


『そんなお金何てないでしょっ』


二言目には金の話。


『うちは一銭も出さないわよっ』


宗教に出す金はあっても、どうやら人間一人を救う金はないらしい。


冷たいとすら思わない。『血』の繋がり何て、所詮はただの幻想。

だから、『見捨てられた』だ何て思わない。


最初から一人だ。その事実は変わらない。


いるのは自分と、どうでもいい他人だけ。


一番近い他人ですら拒絶する『自分』を受け入れようとする人間なんて――――


何処にもいない。

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