所有
欲しいモノは何だって手に入れる。
それが例えカタチを成さないモノでも、だ。一瞬でも望んだモノを我慢するなんて愚行は出来ない。
どうせ永遠に何て無理なのだから、足掻くのも悪くはないと思う。
「人生は夢だね」
生まれて死ぬまでの間にどれだけのことが出来るだろうか。
「どうせ夢なら好きに生きなきゃ」
にんまりと、嗤う。
それはあまりに無邪気な狂人の微笑み。
「で?」
対して返ってきた応えは、真冬の水のように冷ややかだった。
「どうして欲しいんだよ?」
「傍にいたいだけよ。手に入れたいの」
恍惚と酔いしれるような口調。
誰をとも何をとも言ってはいない。けど、意思は伝わる。
「相手のことを無視してでもか?」
以心伝心とは違う。
「うん、そうだよ」
思想も言動も互いに違う。ちぐはぐな関係。
「だって殺してでも欲しいんだもん」
好きになってとは言わない。
『ヒト』の気持ちは気まぐれだからいらないの。
「でもね」
欲しいのは、それを留めて置く『カタチ』だけ。
「せっかくこうして手に入れたんだから、直ぐに殺しちゃうのはもったいないでしょ?」
いくら鳥籠に閉じ込めても、羽根が在ればいつかは逃げ出してしまう。
なら――――
逃げられないように手足を切断して繋いで置けばいいだけ。
嗤う。微笑う。
無邪気な子供のように、にんまりと笑みを浮かべる。
「でも、これなら傍にいられるね」
欲しいのは永遠じゃない。
一瞬でいい。
貴方が私を嫌いでも構わない。
それでも私を必要としないと生きられないでしょ?