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     不死の軍団 ②


ι・ブレードのコックピットに座り、晶は一息ついた。

コックピットの中は何処か気持ちが落ち着く。

コアとなった母親は、父親が成し遂げようとしたことを知っていたのだろうか。

自分がエターナルブライトにされて、恨んでいないのか?

それとも、E.B.Bとならなかった事を幸福と感じている?

E.B.Bとなるか、エターナルブライトとなるか。

人にとって幸せなのは、どちらなのだろう。

いや、どちらも幸せなはずがない。

人という今の形を捨てる事は生きる事を放棄するのと同じだ。

世界中の人々が全てE.B.B、エターナルブライトになってしまえばこの星は――


「――どう、なるんだ?」


ふと、晶は疑問に感じた。

アッシュベルはこの星の生命体を全てエターナルブライトへ変えようとしている。

その結果、この星はどんな末路を迎えるのか?

世界からただ、生命体が消えるだけ?

いや、正確には消えない。 現にコアに使われた母親は自らの意思を持つし、生きているとも言える。

身体の自由は奪われても、意思の自由だけは奪われない?


『黒船よりHA部隊を確認っ! 数にして40機を超えていますっ!』


コックピットから飛び込んできたヤヨイのオペレーションを耳にして、晶はハッとした。

考えるな、ここで深く考えすぎてしまうと、戦えなくなってしまう。

晶はそんな予感を頭に過ぎらせて、強引に頭の中を切り替えた。


「ι・ブレード、出ますっ!」


ι・ブレードは猛スピードでフリーアイゼンを飛び出していき、大空へと飛び立つ。

目の前に広がるのは何処までも続く青い海に雲一つない大空。

あまりにも美しすぎる光景に思わず目を奪われてしまうが、その景色を妨害するかのように三隻の戦艦とHA部隊が展開されている。

アヴェンジャーが使うHAは見た事のないタイプだった。

今まで主力としてきたレブルペインとは違う、レーダーの妨害が発生しない事からそれは確かだ。

形状はレブルペインに似ているものの、茶色のボディに赤く輝く一つ目。

新型HAであろうが関係はない、未だにアヴェンジャーが邪魔を続けると言うのならば――迎え撃つまでだ。


「退けよ、アヴェンジャーッ!!」


ι・ブレードがロングレンジキャノンを構えると、晶は精密射撃モードに切り替えて照準を合わせる。

部隊が散開する前に、一機に叩き潰す。

晶がトリガーを引くと、ロングレンジキャノンから紫色の光が一直線に突き進む。

ズガァァァァンッ! 敵部隊が一瞬にして激しい爆風に包まれた。

だが、何機かはこちらの動きに気づいて瞬時に回避に移っている。


「逃がすかっ!」


ムラクモを構え、ι・ブレードはフルスロットルで前進していく。

2機のHAを捉えると、ムラクモを抜刀させ、目にも留まらぬ速さで斬り裂いた。

その瞬間――晶の危険察知が発動した。

真っ二つに切り裂いたはずのHAが、突如上半身のみで切り裂いてくる映像だ。

晶はすぐに後退させ辛うじて回避し、HA2機に向けてブラックホークを構える。


妙だ、何故動ける?

通常HAのコアは胴体部にあるはずだが、あのHAは完全にコアから切り離されていたはず。

にも関わらず、何故動くことが出来たのか?

すると、目の前で信じられない事態が起こった。

先程切り裂いたはずのHAの上半身と下半身が独りでに動き出し、繋がった。

不思議な事に、HAは何事もなかったかのように元通りに戻っていた。


「な、何が起きたんだよ……分離が出来るのか?」


『晶、敵のHAは妙な機能が備わっているようだ。 奴らを落とすにはコックピットを直接狙うしかない』


同時にゼノスが勘付いたのか、晶にそう通信を送ってきた。

機能? 違う、あれは――再生?

再び危険察知が発動すると、晶の予想が現実のものとなってしまった。

敵HAから、E.B.Bのような異形の触手が飛び出し始めたのだ。


「E.B.B――あれが、E.B.Bなのかっ!?」


しかし、何処からどう見てもHAにしか見えない。

まさかアヴェンジャーがHAにE.B.Bを搭載したとでもいうのだろうか?


『――アッシュベルか』


「なっ――」


ゼノスがそう呟くと、晶は思わず声を上げて驚いた。

ジエンスをあれだけ凶悪なE.B.Bへ改造したのもアッシュベルの仕業だ、だとすれば謎のHAもアッシュベルが関わっている可能性が高い。

もしやアッシュベルはアヴェンジャーに力を貸している?

ι・ブレードは2機のHAが放つ触手を撃ち落とすと、ふと目の前を一機のHAが通り過ぎる。

G3に似た群青色の大型HA、プロトGがサマールプラントを使い一気に敵HAのコックピットを潰して見せた。

あのHA、以前E.B.Bと化したジエンスと戦った時に見たHAだ。


『リビングデッドだ』


突如、ι・ブレードに通信が入り込んだ。

この声は間違いない、ガジェロスだ。

あのHAに乗ってきたのだろうが、一体何をしに来たのだろうか?


「リビングデッドだって?」


『――やっぱりな、その反応じゃテメェはあれの存在を知らねぇようだな』


「どういう事だよ、何でアンタが知っているんだ?」


『機密事項に書いてあった、それだけの話だ』


「機密事項に? そんなバカな――」


晶は確かに父親から機密事項を受け取ったはず。

ガジェロスの手にも確かに機密事項が渡っていると言えど、何故その情報に差異がある?


『どういう事だガジェロス、お前が持つ機密事項と俺達が持つ機密事項が違うと言いたいのか?』


『そうだ、俺が持つ機密事項が――メシア本部に隠されていた正真正銘の機密事項だ』


「な、なら親父が俺達に託した機密事項は何なんだっ!?」


『簡単な事だ、テメェの親父が用意した機密事項と――本物の機密事項の二つが存在しただけだろうが』


「親父が、用意しただって……?」


一体何故父親はそんな事を?

晶はあまりにも衝撃的な事実を受けて頭の中が真っ白になっていた。


『お前が持つ機密事項には、未乃 健三すら知り得なかった真実が記されていた。 そう言う事だな?』


『さあな、未乃 健三が手にしていた機密事項は何なのかは俺は知らん。 だがこれだけは言える、俺の持つ機密事項は間違いなく本物だ。

何よりも、お前達が知り得ないHA――『リビングデッド』の存在がそれを物語っている』


「親父が知り得なかった、真実――」


まだ、何か隠されているというのか?

あの機密事項には全てが記録されていたわけではない。

ならば、ガジェロスの言う『本物の機密事項』には何が記録されていた?


「答えろよ、アンタが手にした機密事項には何が書かれていた? アッシュベルの目的は、一体何なんだっ!?」


『それを知ってしまえば、お前はもう戦えん』


「戦えない?」


ズキンッ――

その瞬間、激しい頭痛が襲い掛かる。

一掃したはずのリブングデッドが全て再生し、一斉にライフルを放って来る映像が映し出された。


「クソッ!!」


ブラックホークを構えつつ、晶は敵のライフル弾を交わし迎撃し続ける。

コックピットを正確に狙い撃ち、一機一機確実に潰していくがリビングデッドの数は数を増していくばかりだ。


『晶、ゼノスっ! ボサッとしてんじゃないよ、あいつらゾンビみてえに蘇ってきやがるっ!』


「――ああ、わかっているっ!!」


晶は苛立ちながら、シリアに怒鳴るように返す。

父親が命を捨ててまでも託した機密事項。

それにすら記録されていなかった事実とは一体何なのか?

父親が隠したのか、或いは本当に知り得なかった事実なのか?

ガジェロスは何を知った?

アッシュベルは何を知っている?


『ガジェロス、真実を知ったお前の道は変わらないのか?』


『俺は復讐の為に全てを捨てた、アッシュベルを討つ目的は未だに変わらない。 だが、やはりお前とは相容れぬ関係だという事だっ!!』


ガジェロスが叫んだ途端、プロトGから無数のサマールプラントがブレイアスへと襲い掛かる。


「ゼノスっ!?」


晶が助けに入ろうとするが、無数のリビングデッドに取り囲まれてしまい身動きが取れなくなってしまう。


『何のつもりだガジェロス、俺達はお前と同じようにアッシュベルを討つ為に動いているに過ぎない』


『言ったはずだ、俺はテメェらと馴れ合うつもりはない。 アッシュベルは俺が討つ、そして奴のプロジェクト:エターナルは……俺が引き継ぐ』


『――それが真実を知った、貴様の答えか』


『そうだ、それが復讐に全てを掲げ……多すぎる犠牲者を生み出した俺の償いとなるっ!』


『落ちるところまで落ちたか、ガジェロスッ!!』


ブレイアスはサマールプラントを掻い潜り、サーベルを片手にプロトGの懐へと飛び込む。

ガキィィンッ! サーベル同士がぶつかり合い、金属音が鳴り響く。

それが二人の戦いの、ゴングとなった。









「クソッ、どけよっ!!」


倒しても倒しても蘇ってくるリビングデッドを薙ぎ払い、晶はゼノスの元へと向かおうとする。

だが、黒船から次々と現れるリビングデッドの対処に間に合わずに囲まれてしまった。


『晶ぁぁっ!!』


その瞬間、2機のブレイアス(ウィン)が凄まじい速度で接近してくる。

サーベルを2本持った黄色いブレイアス(ウィン)は、あっという間にリビングデッドを切り裂き、ι・ブレードの抜け道を作り出した。


『下がって、ロングレンジキャノンを使うわっ!』


「わ、わかった!」


ラティアの警告を確認し、ι・ブレードはシリアが切り開いた道から脱出すると一瞬にして周囲は紫色の光に包まれる。

しかし、リビングデッドの数が一向に減る様子はない。

E.B.B並の再生力を持ったHAは、ある意味E.B.Bよりもよほど危険な存在だ。

こんな兵器を生み出したアッシュベルはとてもじゃないが正気とは思えない。

HAとは人類がE.B.Bと戦うための希望の兵器であったはずだ。


「――あれは?」


ふと、晶は妙に目立つHAが目に留まる。

綺麗な翼を持つ銀色のHAだ。

何処かフェザークィーンを思い出させる特徴的な外見。

ι・ブレードとも類似点がいくつかあった。

すると、晶に頭痛が襲い掛かる。

警戒すると翼を持ったHAから羽のような物が飛び出し一斉に襲い掛かってくる映像が映し出された。

何処かソードコアと似ている、ι・ブレードの量産型とは違うようだが……決して無関係とは思えない。

晶はソードコアを射出させ、襲い掛かってきた羽を全て薙ぎ払うとコックピットが青く灯る。

僅かにだが、凄まじい速度で接近してくる翼を持つHAの姿を捉えた。

咄嗟にムラクモを構えると、ガキィィィンッ!! と激しくサーベル同士がぶつかり合う。


「クッ……また、新型かっ!?」


『―――晶くん』


「え――」


その時、コックピットに懐かしい声が響き渡る。

もう長い間、逢ってなかった……探し求めていた声。

聞き間違えるはずのない、木葉の声だった。


「木葉、木葉なのか? ど、何処だよ……何処にいるんだよっ!?」


『ごめんね、ごめんね――』


木葉は掠れた声がそう呟いた。

泣いている、何故?

まさか黒船の中に捕らわれているとでもいうのか?


「捕らわれているのか? 待っていろ、今……今助けるからっ!」


『違う、違うのっ!!』


「違う? 違うって何がだよ?」


『私は、ここにいるよ。 今、晶君の目の前に』


目の前、と聞いてモニターに映し出されたのは翼を持つHA。

木葉は一体何を言っている?

晶の目の前に映し出されているのは敵のHAだけだ。

だが、晶はふと嫌な予感を頭に過ぎらせる。

翼を持ったHAを見た時に、最初何を感じた?

そう、フェザークィーンと何処か似ていると感じたのだ。

フェザークィーンと言えば木葉が無理やり乗せられて戦わされた大型HA。

まさか、木葉は――

その瞬間、ι・ブレードのコックピットに映像が受信された。

間違いなく、そこにはパイロットスーツを身に着けた木葉が映し出されていた。


「そう、私はここにいる。 同じιの名を持つ、『ι・フェザー』のコックピットに」


「どういう、ことだよ。 何で木葉が、木葉がそんなものに―――」


晶の頭の中は、真っ白になった。










「クッソッ! これじゃキリないっ!」


リビングデッドはE.B.Bと同様にコアを破壊しない限り再生を続ける。

小型E.B.Bとは違い、HAの性能を持ったE.B.Bとは想像以上に厄介な存在であった。

このままではフリーアイゼンは神の源へ辿り着く前に全滅してしまう。

だが、ここで諦めるわけには行かない。

せめてフリーアイゼンが進む道だけでも切り開こうとシリアは戦い続けていた。

すると、ブレイアス(ウィン)の背後にリビングデッドが回り込んだ。


「しまった――」


反応が遅れたシリアはそのままリビングデッドに切り裂かれようとした時――バシュゥンッ! とライフル音が響き渡る。

ラティアのブレイアス(ウィン)が、リビングデッドのコアを撃ち抜いた。


『気を付けて、まだ来るわ』


「ああ、ありがとな姉貴っ!」


ラティアの援護を受け、シリアはそのまま後ろへ振り返るとサーベルを両手に構えてあっという間に3機のリビングデッドのコアを切り裂いた。


『ここは片付いたみたいね』


「まだまだ先は長いけど――ん、あれは?」


リビングデッドの集団の中から、他の機体とは明らかに動きの異なる2機が急接近していた。

同じリビングデッドではあるが、色と武装がそれぞれ異なっている。

赤を中心としたカラーリングのリビングデッドと、青を中心としたカラーリングのリビングデッドだ。

真っ赤なリビングデッドは、他のリビングデッドを凌駕した凄まじい速度でサーベルを片手に仕掛けてきた。

辛うじて捕えきる事が出来たシリアは、サーベルで重い一撃を抑え込むと激しい振動がコックピットへ伝ってくる。


「な、なんて速さだっ!」


『―――ウヒヒ』


「ん、笑い声――」


突如聞こえてきた笑い声に、シリアは思わず背筋をゾクッとさせる。

そんなバカな、有り得ない。

二度と聞くはずがなかった、あの笑い声と酷似している。

いや、違う――同じだ、何度も聞いてきたシリアには確信があった。


『アハハハ、アッハッハッハッハッハッハァァッ!!! アァーーッハッハッハッハッハッハァッ!!』


「どういう事だ、何で……何であいつが生きているんだっ!?」


コックピットに響き渡ってきた、狂っているかのような奇妙な笑い声。

間違いなく、アヴェンジャーとの戦いで死んだはずのフィミアの声であった。

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