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第26話 星の記憶 ①


メシア本部跡地にて繰り広げられた激戦は、瞬く間に世界中に広まっていった。

メシア本部が巨大な戦艦となり行方を暗ました事、驚異の大型E.B.Bがメシア本部より投下された事。

その事件を元に、世界はアッシュベルへの不信感を大きく抱くようになった。

元々プロジェクト:エターナルという計画自体は賛否両論であり、当然ながらアッシュベルを支持しない者も多い。

今まで大きな動きを見せていなかった反対派の活動は、この事件を機に活発化していくことに繋がった。。

アッシュベルが支配しようとした世界は、早くも変化を見せ始めている。


だが、ここまで世界は大きな変化を受けすぎてしまった。

E.B.Bの出現を始めとし、立ち上げられたメシア。

その裏で行われていたエターナルブライトの人体実験、その被害者により結成されたアヴェンジャー。

メシアとアヴェンジャーによる事実上の戦争により、メシアとアヴェンジャーは共に滅び、新たなメシアが生み出された。

いつまで経っても安定しない世界の状況に、人々の不安を膨らみ続けるばかりだった。

プロジェクト:エターナルに、人類の未来はない。

しかし、その計画は天才科学者と言われたアッシュベルが導き出した結論でもある。


何故アッシュベルは人類の進化を急ぐのか?

人類がE.B.Bに対抗するには、本当にエターナルブライトによる進化しか道がないのか?

その答えを見つけ出す為に、フラムは機密情報の解析を行った。

大型E.B.Bとの戦いから、既に一週間が経過している。

行方を暗ませたメシア本部の行方は、ソルセブンの協力を得て新生メシア軍より捜索された。

既に位置の特定は出来ているが、メシア本部がそのまま空中要塞と化した以上、何も策を立てずに潜入する事は自殺行為だ。

例のセキュリティ機能は生きている上に、アッシュベルは量産型ι・ブレードという驚異のHAを持つ。

そのメシア本部よりやっとの思いで手にした機密情報だ。

ここで何かを掴まなければならないと、フラムは解析を続けていた。

もう既に三日も解析作業を行い続けている、飲まず食わずで作業を続けていたフラムからは流石に疲労感を隠し切れない様子だった。

少し一息をつき、クシャクシャになった髪を整えると、ふと誰かの視線を感じた。


「いるのだろう、君」


「ああ」


フラムの背後に立っていたのはゼノスだった。

声だけを確認すると、フラムは振り返らずに端末とにらめっこを続ける。


「私は今忙しいのだがね、用があるならさっさと用件だけを伝えてくれたまえ。

それともゼノフラムの開発についての相談かね? そうだな、私としてはそろそろ黄金に輝くゼノフラムというのを実現させたいのだがどうかね?

しかし、金色に輝かせるというのは難しくてな、ι・ブレードのように白い輝きなら実現できなくもないのだが……私の技術不足が悔やまれるところだよ」


「まだ冗談を口にできる程余裕があるんだな」


「冗談に聞こえたかね、私は常に本気なのだが。 それよりもどうした、もしや私の身を案じてくれたのか?」


「この程度の事でアンタは倒れないだろう、心配するだけ無駄だ」


「やれやれ、そういう時は嘘でもいいから『お前の事が心配だった』とでも言えばいいのだよ。

こう見えても私は乙女なんだがね、少しは気を使ってくれても罰は当たらんぞ?」


「乙女という年でもあるまい……それよりも――」


ゼノスが話を切り出そうとすると、フラムは溜息をついて目を逸らす。

ゼノスが何を尋ねようかわかっていたのか、フラムは無言で資料の束を取り出し目の前にドサッと置いた。


「機密事項の解析は既に終わっている。 それが解析結果の報告資料だ、既に艦長に提出している。

結論から言おう、我々はアッシュベルという一人の天才科学者に踊らされているだけに過ぎない。

あの男はプロジェクト:エターナルを実現させるために、たった一人で世界をコントロールしてきたのだよ」


「どういう事だ?」


「メシアとアヴェンジャーの戦争は、アッシュベルによって引き起こされたのだよ」


「なっ――」


フラムの口から語られた事実は、あまりにも衝撃的過ぎた。

思わずゼノスは言葉を失ってしまい、動揺を隠しきれなかった。

しかし、何故意図的に戦争を引き起こそうとしたのか?


「西暦2000年、今からおよそ20年程前になるかね。 アッシュベルは謎の高エネルギー体『エターナルブライト』を世に発表した。

未知なる鉱石であるエターナルブライトは全世界から注目を浴び、近代における新たなエネルギー源として注目をされた。

しかし、その莫大なエネルギーの代償としてエターナルブライトは生命体を狂暴化させる力を持つことが判明した。 彼の言葉を借りれば、進化だがね」


フラムの口から語られたのは、もはや世界では常識とさえ言われているエターナルブライト誕生の経緯だ。

人類とE.B.Bの長き戦いは、全てエターナルブライトの発見から始まっている。

だからHAという兵器が生み出され、人類はE.B.Bと生き残りをかけた戦いを強いられる結果となった。


「長年謎とされてきたエターナルブライトの出現には様々な説が上がっていた。

地球外の物質である説、物質の突然変異或いは人工的に生み出された全く新しい物質……しかし、どれもあくまでも仮説にしか過ぎない。

だが、エターナルブライトの正体はしっかりと記述されていたよ……あまりにも胡散臭く、信じ難い事実がね」


「エターナルブライトの、正体?」


「そうだ、エターナルブライトは自然に生まれた物質ではない。 アッシュベルによって作り出されたのだよ」


「作り出された……だと?」


フラムが語った事実に、流石のゼノスも驚きを隠せなかった。

世界に突然現れた謎のエネルギー体は、アッシュベルによって生み出された。

しかし、何故そんなものを作り出すことが出来たというのか?


「エターナルブライトが発見される少し前、アッシュベルはとある無人島に足を運んだようだ。

彼は極端に人との関わりを避けていたようでね、無人島に籠りながら一人で古代文明の研究を行っていたようだよ。

地球上に古くから存在する古代の遺跡とやらが無人島にあったらしい、そしてアッシュベルはとんでもない代物を見つけ出した」


「……エターナルブライトの元となる物か」


「流石察しが早いな。 あくまでもアッシュベルの記録上での話だがね、もしここに書かれている事が事実だとすれば……これはとんでもない発見だよ」


「アッシュベルは一体、何を見つけたんだ?」


ゼノスがそう尋ねると、あまり口にしたくはないのかフラムは眉間に皺を寄せると目を逸らす。

再びため息をつくと、もう一度ゼノスと目線が合わさった。


「『星の記憶』と呼ばれる代物だ。 古代の文献によると、星の記憶は地球上のありとあらゆる生命情報が具現化した物質らしい。

本来は目に見えるはずもなく手に取る事も出来ない、いわば概念のような存在なのだが……どういうワケか星の記憶は形を持ってしまったらしい。

そしてアッシュベルがそれを手にして、『星の記憶』からエターナルブライトを作り出した」


「地球上の生命情報が具現化? 一体どういう事だ?」


「詳しい事はわからんよ。 この事実を知っているのは恐らくアッシュベルと、機密情報の存在を知っていた未乃 健三だけだろう。

未乃 健三はアッシュベルが星の記憶を使い、エターナルブライトを世に広めた事実を知った。 恐らく、アッシュベルの計画を全て知っていたはずだ」


「……まさか、奴は人類の進化の為に?」


「そうだな、アッシュベルは進化とやらに固執しすぎている。 だから、プロジェクト:エターナルを実現しようと動いているのだよ」


「しかし、何故人類同士を戦争させる必要があった? 人類全体の進化が目的ならば、始めから今のようにエターナルブライトによる進化を強要するべきだ」


「今の今まで人体実験について隠し通したのは、恐らく戦争させることが目的だったのだろうな。 だが、何故彼が人類を争わせようとしたのかはわからんよ。

機密事項には彼の考えが全て書かれているわけではない、あくまでも記録の塊なのだからな」


未乃 健三やアヴェンジャーは、この事実を知ってアッシュベルを止めようとしていたのだろうか。

だとすれば、彼らは――正しかった。

間違っていたのはアッシュベルに味方をした、メシア側だったという事になる。

だからと言って、アヴェンジャーが行ってきた行為は許されるべきではない。

メシアは決して悪ではない、人々の為に戦い続けてきたのは事実なのだ。


「アッシュベルは今、星の記憶が発見された無人島……彼は『神の源』と呼んでいるようだが、そこにメシア本部を停泊させているようだ。

アッシュベルはそこで、プロジェクト;エターナルを実行に移そうとしている」


「人類全体を、強制的にE.B.Bにしようとしているのか?」


「私もそう思っていたのだがね……残念ながらプロジェクト:エターナルの目的は、人類をE.B.Bへ変化させる事ではないのだよ」


「なら、奴の目的は――」


「……人類全体のエターナルブライト化、それが彼が望む『人類の最終進化』なのだよ」












フリーアイゼンの艦長室で、艦長は部屋に籠って資料を目に通していた。

フラムが解析した機密事項に関する報告資料だ。

資料に記載されている事は、とてもじゃないが信じ難い事ばかりだ。

そこにはやはり、アッシュベルがエターナルブライトによる人体実験を行った記録が残されている。

その実験結果をメシア内に流し、陰から人体実験を広めていく事により、被害者がメシアに敵意を抱くよう

或いはアッシュベル自身に復讐心を抱くようにコントロールし、意図的に戦争を引き起こした。


アッシュベルが人体実験を行ったとされる被検体の3名には、『未乃 明菜』という名が載っていた。

そして資料上では、『未乃 明菜』が持った力について詳しく書かれている。

彼女は星の記憶から作られたエターナルブライトに眠る生命の力を感じ取ることが出来る。

それはエターナルブライトが持つ生命情報を読み取ることが出来る、という事だ。

星の記憶が持つ生命情報を読み取る事により、未乃 明菜は間接的に星の記憶から新たな力を手にすることが出来る。

それが『共鳴反応』と呼ばれる事象の全てだった。


未乃 明菜は共鳴反応を限界まで引き起こす事により、自らをエターナルブライトへと変化させた。

アッシュベルは未乃 明菜が起こした共鳴反応を利用し、世界中の人間をエターナルブライトへ変化させる計画を立てた。

未乃 健三は妻を庇う為、エターナルブライトとなった妻と共に逃亡を図り、アッシュベルを阻止すべく動いていた。

しかし、結果的にι・ブレードに使われているコアが未乃 明菜である事に気づかれ、アッシュベルはそのメカニズムを解析してしまったのだ。

アッシュベルを止めるには、まずは星の記憶の在り処を探し出さなければならないが、記録によればそれは既に『アッシュベルの中』にあるという。

資料の最後には、未乃 健三が残したとされるアッシュベルへの『カウンター』が記録されていた。


ιシステムを使った星の記憶への干渉により、世界からエターナルブライトを消滅させる方法。

それが未乃 健三が残した、アッシュベルへ対する切り札であった。

艦長はその資料を見て、何故か愕然としていた。

世界はたった一人の男により、ここまで大きく変えられた。

まもなく人類全体がアッシュベルの手により、エターナルブライトへ変えられようとしている。

アッシュベルとは長い付き合いだ、確かに変人ではあったが、未だにアッシュベルがこのような事をしようとしている事実を受け入れられずにいる。

だが、アッシュベルへ対する切り札はしっかり残されている。

残されているのだが――


「未乃 健三が残した最終手段……私は、あの子にこの決断をさせなければならないのか」


未乃 健三が導き出したアッシュベルへ対するカウンターには、それなりの代償が必要とされる。

それは、ιシステムの使用者への負荷問題だった。

ιシステムを介して星の記憶に直接干渉する事は、エターナルブライトへ干渉し共鳴反応を引き起こす事とは遥かにレベルが違う。


とてもじゃないが、星の記憶が持つ膨大な情報量を一人の人間が受け止めきれるはずがない。

膨大過ぎる情報が一気に身体に流れ込んだ時、人はその情報量に耐えきれず死を迎える。

だからアッシュベルはエターナルブライトという力を抑えた星の記憶を造り出したのだろう。

彼が人類全体を進化させる為に動いた、と仮定すれば。

他に手がない以上、艦長は決断しなければならなかった。


「――パイロット一人の犠牲で世界を救えというのかっ!?」


艦長は資料の束に拳を強く、ガンッと叩き付けてそう告げた。









大型E.B.Bとの戦いを経て、フリーアイゼンはようやくまともな物資補給を受けることが出来るようになった。

閉鎖されていた食堂も再開し、晶は気分転換に食堂へと足を運んでいた。

死を悟っていた父は、息子である晶に全てを託そうとした。

父を殺したのは、俊だ。

晶の心は強い恨みの感情よりも、大きな悲しみに支配されていた。

俊が復讐の道に堕ちたのも、元はと言えば晶がシラナギを殺してしまった事が起因する。

だからといって俊を許すわけではない、当然父の仇ではあるし目の前に現れれば晶も恨みの感情を爆発させるだろう。

ただ、今の晶には他人を恨んでいる余裕はなかった。

晶は父の意志を継いだ、父に代わって真の救世主となるべく為に。


しかし、こんな自分が本当に世界の命運を背負っていいのか?

本当に世界をどうにかできるとは、とてもじゃないが思えない。

今まで晶はι・ブレードで、戦い続け勝利し続けてきた。

だが、それは晶だけの力ではない。

ゼノスやシリアといった仲間に支えられてきたからこその勝利だ。

晶はいつもいろんな人に助けられてばかりだった。


未だに自分はフリーアイゼンの足を引っ張っていると考えてしまう事もある。

最後のE.B.Bとの戦いのとき、晶は艦長から一人で逃げるように告げられた時は、晶はとてつもないプレッシャーに押し潰されそうになっていた。

言いたい事はわかる、父がι・ブレードでしか世界を救えないと言っている以上……

それが事実であるかないかは別として、晶の命が最優先にされることのは当然の事だ。

その時感じた重さが、世界を背負うプレッシャーなのだろう。


だが、晶はそれでも……世界よりもフリーアイゼンを守る事を優先し、自分の為に戦い続けた。

そんな自分が世界を任される資格があるはずがない。

もし、木葉がこの話を聞いたらどんな顔をするだろうか。

笑って慰めてくれるのだろうか、いやそれではダメだ。

木葉は守ると決めた、それなのに木葉を心配させるような真似はしたくない。

……だけど、木葉に逢いたい。

木葉の行方は未だに掴めていない、一体何処へ消えてしまったのか――


「隣、いいかしら?」


ふと耳に女性の声が飛び込んでくると、晶は振り返る。

背後に立っていたのはカレーを両手に持ったヤヨイだった。


「……どうぞ」


「貴方とこうして話すのは初めてかしら?」


「そう、ですね」


晶は顔を俯かせながら、ボソッとそう呟く。

出来れば今は他人と話したい気分ではなかったが、こうして食堂へ足を運んでしまった以上考えられたことだ。

素直に引き籠っておくべきだったと、今更ながら晶は後悔している。


「辛そうな顔をしているわね。 無理もないわ……貴方はここ短期間で、色々なものを失いすぎた」


「それは俺だけじゃないはずです。 皆そうやって、辛いのを乗り越えて戦っているんですから」


「でも、貴方はとても繊細で優しい心を持つ故に、壊れやすい。 貴方はまだ、お母さんみたいな存在が必要なのかもしれないと思うのよ」


「お、俺はもう18歳です。 そ、そんなに子供扱いしないでくださいよ」


「――やっぱり、私なんかじゃ代わりになれないかしら?」


「か、代わり?」


一体何の事を言っているのかわからず、晶は思わず首を傾げてしまった。


「貴方の事、何だか放っておけないのよね。 今まではシラナギちゃんなりに面倒見て貰ったり、木葉ちゃんが支えになってたりしたけど

情勢が変わってから一気に環境が変わってしまってるしね。 せめて、私が貴方の力になれればと思ったのよ」


「大丈夫です、俺は……」


「貴方は普通の男の子だった。 それが、世界を救う大きな使命を背負わされてしまい、今そのとてつもない重さに押し潰されようとしている。

ねぇ、世界を背負うのは辛い?」


「それでも俺は、背負う覚悟があります」


「嘘よ、だからそんな顔してる。 一人で背負うのが辛いのなら、私達全体で背負えばいいのよ。 何も貴方一人が頑張らなくてもいいのだから」


「――わかってます。 だけど、俺だって親父の意志を継いだ以上、一人で戦うほどの覚悟はあるつもりです。

それに……俺はもう、これ以上誰も死なせたくないんだ。 だから、戦う」


晶はその意志を伝えると、スッと立ち上がり席を離れて行く。


「やせ我慢でなければ、いいんだけどね」


ヤヨイはその姿を見送りながら、小さくため息をついた。


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