怨念のE.B.B ⑤
小規模な爆発を繰り返し、トリッドエールは墜落した。
制御系統が不完全な状態であったトリッドエールは、ちょっとした衝撃どころか通常通り動かしているだけでもオーバーヒートを起こす可能性は高かった。
危険を承知でシリアはトリッドエールを動かし続けていたが、機体の制御は想像以上に難しく、結果的にこのような事態を招いてしまった。
爆発による灼熱と墜落による衝撃により、パイロットスーツはボロボロとなり露出した肌は火傷を負っている。
頭を強打したのかヘルメットは外れてしまい、シリアの頭からは血がダラダラと流れ続けていた。
辛うじて意識はあるが、恐らくHAは動かせる状態ではないだろう。
それでもシリアは必死で操縦桿を握りしめ、スロットルをがっしりと握りしめる。
身体中に怪我を負っても、まだ戦おうというのか。
だが、虚しくもトリッドエールは静止したまま動く事はなかった。
「クッ、アタシはこんなところで終わるのか……?」
墜落したポイントは小型E.B.Bが大量発生しているポイントだ。
ソルセブンの部隊が展開されていると言えど、恐らく救助は間に合わない。
せめてここから移動だけでも出来れば――
『―――シリ、ア』
「な、なんだ?」
突然、頭の中から少女の声が響き渡った。
通信機からではない、かと言って耳元で囁かれているワケでもない何故の声。
『生きて―――』
もう一度少女の声が響きだすと、突然コックピットが真っ赤な光へと包まれていく。
トリッドエールに乗る前に感じたあの感覚、そして何処かで知っているこの光。
「アンタだったのか、アタシを呼んだのは――」
声の正体が、死んだはずの『フィミア』だと気づいた時、シリアの意識はそこで途絶えた――
艦長は再び、アヴェンジャーへの呼びかけを試みた。
一度目は失敗に終わったが、2度目は僅かにだがアヴェンジャー軍に変化が生じている。
しかし、彼らが素直に協力してくれるとは思わない。
だが、かつてアヴェンジャーとして立ちはだかったG3のパイロットであるガジェロスが、フリーアイゼンに協力している以上、決して望みがない訳ではなかった。
「これは……アヴェンジャー軍、撤退を始めました」
「何? ……いや、彼らが戦闘行為を中断しただけでも奇跡と思うべきだな」
ヤヨイから告げられた一言は、艦長が望んでいた状況とは少し違ったが、今は素直に喜ぶべきだろう。
「けどよ、これだけじゃ明らかに戦力がたりねぇだろ? フリーアイゼンの白紫輝砲だけで何とかなる相手でもねぇだろ、あの大型E.B.Bは?」
「仮にソルセブンを加えたとしても戦艦は2隻、データを見る限り最低でもアイゼン級20隻近くは必要なんですよ?」
少なくともフリーアイゼンに対して敵意をむき出しにしていた彼らが、このように撤退を判断したのだから。
艦長が組み立てたプランは至ってシンプルだ。
無数のコアを持ち、ありとあらゆる手段で攻撃を無効化するE.B.Bのブレインを破壊し
無抵抗となった大型E.B.Bを主砲で集中砲火し、全てのコアを同時に消滅させる事。
第1難関であるブレインの破壊は、今は晶達を信じるしかない。
第2難関はあの大型E.B.Bのコアを破壊つくすだけの火力を確保できるかどうか。
おまけにブレインは本体から切り離せたとしても、本体とリンクをしていれば何度でも再生してしまう。
ブレインを完全に破壊したとしても、時間がかかりすぎたら『新たなブレイン』が生まれ、再びブレインの破壊するしかなくなる。
そうなってしまえば消耗戦となり、戦力が少ないこちら側が明らかに不利な状況となってしまうのだ。
「……方法はない訳ではない。 だが、その時はお前達には艦を降りてもらう」
「ど、どういう事ですか?」
「おいおい、今更俺達に降りろって言うのかっ!?」
「――まさか」
ヤヨイとライルが同時に声を上げる中、リューテが艦長の意図に気づいたのか顔を青ざめさせる。
フラムはただ目を細めて、艦長を睨み付けるだけだった。
「フリーアイゼンを自爆特攻させる、それしか方法はあるまい」
『その必要はない』
艦長が決死の覚悟を決めて、クルーに告げた途端――イリュードから通信が入り込んだ。
『既に我々の方で援軍の手配を進めている。 直にここにメシアからの増援部隊が手配されるはずだ』
「援軍を待っている時間はない。 こうしている間にも周囲に被害が広まり続ける一方なのだぞ」
『貴方はここで死ぬべきではない、とだけ伝えておこう』
「何を言う?」
『安心したよ、貴方はテロリストに成り下がっても……メシアの本分を忘れていない事にね。
出来ればこれを機に、私は貴方にメシアへ帰ってきてほしいと願う。 しかし、貴方がそれを望まない事も承知している』
「……今は、E.B.Bが優先だ」
『そうだったな、引き続き我々はE.B.Bの殲滅を続ける。 最後にもう一度だけ告げよう、ゲン・マツキ艦長、貴方はここで死ぬべきではないと』
イリュードはそれだけ告げると、通信は途切れた。
一度は敵対関係となったと言えど、彼の志と本分は何一つ変わっていない。
「我々人類は強くならなければならん、今こそ人類が試される時だ……っ!」
艦長はブリッジルームで、力強く叫んだ。
人類の強さを信じ、明るい未来を掴む為にも。
この戦いに、負ける訳にはいかない――
E.B.Bから再現されたブラックベリタスは、決してオリジナルには劣らない性能だった。
容赦なく繰り返される銃撃とソードコア、ι・ブレードはその動きについていくのがやっとで反撃の隙はまるでない。
晶自身が、解放されたι・ブレードの力を使いこなせていないのも原因の一つだ。
空中を飛び回るブラックベリタスを抑える事が出来るのは、ι・ブレードだけ。
地上戦を得意とするゼノフラムでは、捕えきることは難しい。
頼みのシリアも落とされてしまった以上、今は一人でこの場を凌ぐしかなかった。
「俺が、俺がここでやらないとっ!」
強大なE.B.Bを討伐するにはブレインを破壊する以外方法はない。
ここで晶が失敗するわけには行かなかった。
『下がれ晶っ!』
その時、ゼノスから通信が入り込んだ。
すると、地上からブーストハンマーが空高く舞い上がっていく姿が目に入る。
同時に、ゼノフラムの巨体が宙へと持ち上げられていた。
その瞬間――無防備となったゼノフラムに四本のソードコアが一斉に襲い掛かる。
「させるかぁぁっ!!」
ι・ブレードから2本のソードコアが射出され、ぎりぎりのタイミングで4本のソードコアを弾き飛ばす。
ゼノフラムはブーストハンマーで強引に浮いたまま、ブラックベリタスに向けてミサイルを全弾発射させる。
近距離から発射されるミサイルを回避する事は容易い事ではない。
だが、ブラックベリタスはいとも簡単にミサイルの合間を潜り抜けて行く。
しかし、ゼノスの狙いはこの状況を作り出す事にあった。
『今だ、晶っ!!』
「あ、ああっ!」
晶も意図を理解したのか、ムラクモを構えてι・ブレードを前進させる。
ミサイルによって動きを制限されたブラックベリタスの真後ろへと回り込み、ムラクモを縦一直線に振るう。
すると、大型E.B.Bとブラックベリタスを繋いでいた複数の触手がまとめれ切り離された。
しかし、周囲からはすぐに別の触手がブラックベリタスに向けて突き進んでいく。
晶は追撃をしようとムラクモを解放させ、光の刃を飛ばそうとする。
「うおおおぉぉぉっ!!」
バチバチィンッ! 火花を散らしながら、白く輝いたムラクモから眩しい程に光り輝く刃が炸裂した。
だが、その一撃が読めていたのかブラックベリタスは軽々とι・ブレードの一撃を避けてしまう。
「外した?」
『いや、それでいい。 メインは、こっちだっ!』
ゼノスの通信を確認した瞬間――ズガァァァンッ!! と、突如空中から真っ赤な光がブラックベリタスを包み込んだ。
「あ、圧縮砲っ!?」
空中からゼノフラムが、圧縮砲をブラックベリタスに向けて発射していたのだ。
あれだけの高火力を浴びせれば、本体から切り離された状態である以上……耐えきる事は出来ないはずだ。
『ホホホ、ι……ι・ブレード、イオタイオタイオタイオタイオタァァァッ!!』
突如耳元から狂ったかのような声でジエンスが語りかけてくると、晶は思わず背筋をゾクッとさせる。
この声、俊と同じだった。
負の感情に支配され、復讐に満たされた者の声そのものだ。
『貴方が、貴方が私を討たなければ――世界がアッシュベルの手に渡る事もなかったっ!!
わかっているのですか、全て貴方の責任なのですよ……未乃 晶ぁぁっ!!』
圧縮砲の直撃を受けていたはずのブラックベリタスは、赤き光の中から豪速に飛び出しι・ブレードへ向けて凄まじい速度で迫り来る。
ブラックホークで応戦しようとしたが、全て弾は避けられてしまう。
ιシステムのおかげで動き自体は頭に入ってきているのだが、思考が追い付いても晶自身が追い付いていない。
ブラックベリタスはあっという間にι・ブレードの目の前に辿り着くと、両手でι・ブレードの首を掴み始めた。
『ホホホ、殺して差し上げますよ……ι。 そして私は、全てを破壊する。 この世界にもう価値はないのです。
だから私は目覚めましょう、新たな神……『破壊神』としてっ!!』
「な、何を――」
『そう、私の望みは破壊のみ。 価値を失った世界はただ、滅び行くのみ。 ならば私が、全てを破壊するのですよ』
ジエンスの言葉が頭に響くと同時に、ブラックベリタスのヘッドが突如二つに割れ始める。
一体何が起きているのか理解できないまま、晶は呆然をモニターを直視すると……ブラックベリタスの頭部から触手を通じて人が飛び出してきたのだ。
やがて飛び出された人が、ι・ブレードのヘッドに向けてその姿を見せる。
それはほとんど人としての形を失ったジエンスだった。
腹はまるで何かに切り裂かれたかのように開かれている。
中はE.B.Bのような禍々しい色をしており、いかにジエンスのE.B.B化が進んでいたかが伝わってくる。
更にそこから触手なようなものが伝い、ジエンスの頭部へと繋がっていた。
頭も同じように切り裂かれており、中身は空洞となっていた。
だが、晶の頭の中にはこうしてジエンスの声がはっきりと聞こえている。
やはり、ジエンスの意識だけは別のところに残されているはずだ。
考えられるのは一つ、ブレインの役割を果たしている『コア』だけだ。
『私をこんな醜い姿に変えた貴方を、私は許せませんぞ。
ι・ブレードと未乃 晶、私の全てを狂わせた元凶……殺す、コロスコロスコロスコロスゥゥッ!!』
「なっ……何だってんだよ、アンタはっ!?」
晶は必死でブラックベリタスを振り払うと、後ろへと下がりながらブラックホークを放つ。
背筋が凍りつくかのような感覚が晶に襲い掛かる。
まるで俊が放つような強い恨みの感情を感じ取った。
『貴方がいなければ、今頃世界はもっといい方向へ進んでいたはずです。
貴方が私の邪魔をするから、私を殺してしまうからっ!』
「もう、やめろっ! 俺に、俺に語りかけないでくれっ!!」
耐えきれなくなった晶は頭を抱え、耳を塞ぎこんでしまった。
だが、ジエンスは延々と晶に語り続ける。
今までぶつけようがなかった恨みや憎悪といった負の感情を、晶にぶつけるかのように。
その瞬間――ι・ブレードから真っ白な輝きが失われてしまった。
ようやくジエンスの声から解放された晶は、胸を撫で下ろす。
ιシステムが強制的に通常モードへと戻されてしまったようだ。
するとその隙を狙ったブラックベリタスが一気に加速して、ι・ブレードへ襲い掛かろうとする。
解除された直後のせいか、危険察知が発動しなかった。
幸い晶自身がブラックベリタスに気付けたが、反応が遅れてしまった。
このままではやられる――
ガァァンッ! その時、目の前をブーストハンマーが通過し、ブラックベリタスを吹き飛ばしていく。
間一髪にゼノフラムが助けに入ってくれたようだ。
だが、一時しのぎにしか過ぎない。
すぐにブラックベリタスは驚異の速度で迫って来ていた。
『晶、ヘッドを狙えっ! そこに奴のコアがあるはずだっ!』
「ヘッドだって? でも、あそこには――」
何もないはず、と続けようとした時
ふと晶はもう一つの可能性を導き出した
ヘッドには確かに、何もない。
だからコアらしきものは別に存在すると考えていた。
だが、それは違う。
ヘッドからは既に、コアは姿を現していたのだ。
「消えろよ……アンタはもう、死人なんだよっ!」
その瞬間、再びι・ブレードから白い輝きが放たれ始める。
迫り来るブラックベリタスの動きが、頭の中に直接伝わってきた。
咄嗟にブラックホークを構え、晶はトリガーを力強く引く。
バァンッ――弾丸は一発だけ、ブラックベリタスのヘッドへと向かい突き進んでいった。
すると、ブラックベリタスのヘッドから再びジエンスの抜け殻が飛び出される。
バァァァンッ! と、激しい音を立て、ブラックベリタスの頭は破壊された。
連鎖するように、E.B.Bから作り出されたブラックベリタスは形を徐々に失い、崩れていく。
だが、まだ終わっていない。
晶は切り離されたジエンスの抜け殻を目で追う。
宙へと舞っていたジエンスの抜け殻に向かい、数本の触手が向かっている光景を目にして晶は確信した。
「うおおおぉぉっ!!」
バンッ! バァンッ! ブラックホークは正確に触手を狙い撃ち、晶はジエンスの抜け殻へと接近する。
『ホホホ、まさか気づかれるとは』
「やっぱり、お前自身がコアだったのかっ!」
『どうやら、これで本当に終わりのようですな』
「ああ、アンタはここで終わるっ!」
新たな触手が来る前に、決着をつける。
晶はブラックホークを構えて、ジエンスの目の前へと突きつけた。
『見事ですな、この私を二度も打ち破るとは。 私に代わり、貴方が世界の救世主となりますか?
いいでしょう。 貴方にその覚悟があるのなら、私を撃て。 その代わり誓うのですぞ、必ず世界をアッシュベルの手から守ると』
ジエンスが静かに語りかけてくると、晶の手は震え始める。
救世主、父親が最後に残した言葉でもあった。
世界は救世主となるべく立ち上がったメシアに守られていた。
だが、メシアは一度崩壊し、新たに生まれ変わった。
それは、この世界にとっての救世主ではない。
だからこそ父親は晶に託した。
そしてジエンスも、やり方は間違っていたと言えど……世界の為に戦っていたのは事実と思える。
「俺は、アンタの意思は継がない。 だけど、俺のやり方で必ず……世界を――世界をっ!」
バァンッ―――
晶のブラックホークが弾が、一直線に突き進みジエンスを木端微塵に砕いた。
これでブレインは破壊された。
大型E.B.Bには変化が生じていた。
巨大な体を小刻みに震わせ始め、徐々に体の一部が分離していく。
力を失っている合図だ。
『晶、下がるぞ』
「下がるって? こ、これからあの大型E.B.Bを倒すんだろ?」
『ここにいると巻き込まれる危険性が高い、後ろを見ろ』
「後ろ?」
晶はそっと後ろへ振り返ると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
フリーアイゼン、ソルセブンを中心に艦隊が組まれていたのだ。
アイゼン級、レギス級と数は合計20隻を超えている。
更に地上には既にロングレンジキャノンを構えたブレイアスの部隊まで整列していた。
フリーアイゼンのブリッジルームにて、艦長は険しい表情でモニターを睨み付けていた。
まさか本当にこれ程の戦力が短期間で集まるとは想像もしていなかった。
イリュードが増援を要請した時間と合わせても僅かに15分だ、そんなすぐに応戦を出せるはずがない。
そうなると、イリュードはもっと早くから動いていた?
もしくは、メシア支部が独自に部隊を送っていたとしか考えられない。
いや、そもそもフリーアイゼンを包囲する為にイリュードが事前に呼んでいたという事も考えられた。
今はただ、大型E.B.Bを討伐する事だけを考えればいい。
『ゲン・マツキ艦長、後は貴方の合図を待つだけだぞ』
「私が合図を出すのか?」
『無論だ、貴方以外に誰がやると?』
「いいだろう、引き受ける」
艦長に強いプレッシャーが圧し掛かるが、毎度クルーの命を預かっている身だ。
今更この程度のプレッシャーで臆する事はない。
すると、大型E.B.Bが徐々に形を崩し始めた。
ブレインの破壊に成功した証だろう。
だが、直後に撃つのは得策ではない。
万が一まだコアの能力が働いていた場合、白紫輝砲が跳ね返された時のようなしっぺ返しを受ける危険がある。
艦長は力が完全に無くなるタイミングを、見極めなければならないのだ。
かと言ってモタモタしていれば、次なるブレインが生まれてまた同じことを繰り返す必要が出てくる。
早すぎず、遅すぎないタイミングを……見極める。
艦長は大型E.B.Bの様子を慎重に確認し、額から汗を流す。
見る見るうちに形が崩れ始めていると、大型E.B.Bはふとその動きを止めた。
このタイミングに違いない、ほぼ直感的ではあるが艦長には確信があった。
『撃てぇぇぇぇっ!!!』
艦長の合図と共に、一斉に戦艦から主砲が発射されていく。
真っ赤な主砲から紫色、そしてフリーアイゼンの白紫輝砲にロングレンジキャノン、ゼノフラムの圧縮砲まで加えた強力な一撃が大型E.B.Bへと襲い掛かる。
バチバチィンッ! エネルギーとエネルギーが衝突し合い、激しい轟音が鳴り響き続ける。
爆発が発生し、光が炸裂し思わず目が眩んでしまう。
だが、まだ大型E.B.Bは消滅していない。
火力が足りないというのか……?
すると、背後から突如、白紫輝砲が発射された。
フリーアイゼン以外に白紫輝砲を搭載している艦は、ただ一つ。
アヴェンジャーの黒船以外にありえないが、まさか――
信じられない事に、アヴェンジャーの戦艦が砲撃に参加していたのだ。
それだけではない。 不思議な事に、徐々に戦艦が集い始め、一斉に大型E.B.Bへと向けて砲撃していく。
『シェルターが破壊された時、その事件はすぐに世界へと向けて報道された。
その時、たった一隻で驚異の大型E.B.Bへ立ち向かう戦艦の姿が全世界に向けて報道されたのだよ。
それが、フリーアイゼン。 貴方の艦なのだよ』
「何……?」
『皆、貴方の力になろうと集ってきてくれたのだよ。 メシアから追放されようとも、E.B.Bとだけ戦う姿勢は何一つ変えない。
メシアの代名詞とさえ言われたフリーアイゼン部隊が現役である事を知って、皆惹かれたのだよ……貴方達の勇姿にね』
大型E.B.Bは、徐々に形を崩し崩壊していく。
一気に10隻近くの主砲が加えられ、懸念されていた火力不足も補うことが出来た。
やがて主砲が一斉に止むと、大型E.B.Bの周辺は黒い煙に包まれていた。
無事、大型E.B.Bを討伐することが出来たのか?
艦長は生唾をゴクンと飲み込みながら、大型E.B.Bがどうなったかモニターで確認する。
煙が晴れてくると、そこには大型の姿はなかった。
「カイバラっ! 大型E.B.Bの反応はっ!?」
「あ、ありません。 完全に……ロストしていますっ!」
「お、おいおいマジかよ。 勝ったのか? 俺達勝ったぞっ!?」
「まさか、本当にあれ程の力を持ったE.B.Bを……?」
ライルとリューテが歓喜の声を上げる中、艦長は安心したのか椅子にゆっくりと腰を掛けて微笑んだ。
「だが、あの大型E.B.Bによって一つのシェルター地区が犠牲になっている。 それだけではない、周辺の住宅街にもE.B.Bによる被害が及んだ。
これ以上、E.B.Bによる犠牲者を生み出すわけには行かない――フラム博士」
「うむ、わかっている。 機密事項の解析を急ごう。 そして、我々で未乃 健三が成し遂げられなかった使命を、果たそうではないか」
一つの大きな戦いが終わっても、まだまだ戦いは連鎖する。
疲労しきった人類はもはや限界が近い。
だからこそアッシュベルもプロジェクト:エターナルを実行に移したのだろう。
全ては人類の真の平和の為。
全てを終わらせるために。
フリーアイゼンは、希望に満ちた未来を掴む為に。
戦い続ける事を決意した。