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     裏切りの翼 ②


フリーアイゼンのブリッジより、一隻の巨大戦艦を確認した。

ヤヨイは即座に戦艦の解析を行い、報告した。


「本艦にレギス級が一隻接近中……間違いありません、ソルセブンですっ!」


「イリュード艦長が助けに来てくれたのか?」


今まで行方を暗ましていたが、どうやらフリーアイゼンと同様に何処かに逃れていたのだろう。

ソルセブンもあの時、アッシュベルの襲撃に巻き込まれた一人である。

よくぞ無事でいてくれた、と艦長は心の底から安心しきっていた。


「ソルセブンよりスカイウィッシュ部隊が出撃しています、こちらに向かってきているようですが……」


ソルセブンからは次々とスカイウィッシュ部隊が出撃をし始めていた。

何機かのHAが長いコードを纏ったロングレンジキャノンを抱えているようだ。

従来の物より小型化されており、恐らく動力源である電力は戦艦から配給されているように見える。

しかし、援護にしては武装が大げさすぎる。

アヴェンジャーの部隊は数は少ないし、近くにE.B.Bと思われる敵影も見えていない。


「ソルセブンと通信を繋いでくれ」


「ダメです、通信が拒絶されています」


「なんだと?」


「スカイウィッシュ部隊より熱源反応確認……来ますっ!」


「クッ……右舷方向へ旋回させろっ! ラティア機は至急迎撃に迎えっ!」


「チッ、リューテの野郎こんなしんどい事いつもやらされてんのかよっ!?」


ライルが全力で舵を曲げると戦艦は大きく旋回しようと傾き始める。

ズガァァンッ! 同時に、爆音と共に戦艦が激しく揺れた。

至近距離からの発射では回避が間に合わずにフリーアイゼンは直撃を受けてしまった。


「被害状況を知らせろっ!」


「スカイウィッシュ部隊、散開しました。 現在ラティア機が迎撃へ向かっています」


「ヤベェぜ……今の一撃でフィールド制御にちっと異常をきたしちまってる。 このまま空は危険だ、不時着させていいかっ!?」


「……あの岩場なら敵の攻撃を一時的に凌げるはずだ、そこへ一度艦を降ろせ」


「ああっ! ちっと揺れるぜ、文句言うんじゃねぇぞぉっ!!」


艦内はいつもよりも激しく揺れ、指示された箇所へ向けて舵を進めていく。

リューテならばもっとスマートにやれただろうが、ライルの強引な性格もあって艦長は多少覚悟はしていた。

ガタンッ! っと強く艦内が揺れると、ようやく地上に着陸出来た事を確認する。

だが油断はできない、ここから敵機がフリーアイゼンを取り囲みに来るはずだ。

このままジッとしていては、敵に完全に包囲され身動きが取れなくなってしまう。


「艦のチェックを急がせろ、ライルはもう一度フィールドの調整を頼む」


「了解です」


「ああ、わかってるっ!」


ブリッジルーム内に、緊迫した空気が漂っていた。







フリーアイゼンが急降下を続ける中、ラティア機は必死で甲板にしがみついていた。

危うく何度か振り下ろされそうになったが、その状況下でありながらも何機かの敵は撃墜している。


「……何故なの、イリュードっ!?」


ラティアはショックを受けていた。

待ちに待ったソルセブンの登場、フリーアイゼンを……いや、自分を迎えに来てくれたのかと思っていたのに。

現実は違った、ソルセブンは突如フリーアイゼンに攻撃を仕掛けてきたのだ。

ガガガガッ! と地上が削れるような音が耳に流れ込む。

付近には砂埃が舞い、ラティアの視界は奪われていった。

どうやら、フリーアイゼンは不時着したのだろう。


しかし、この状況は危険すぎる。

視界が奪われている状態ではスナイパーライフルは役に立たない。

ラティアはスナイパーライフルを分解し、レールガンへと切り替えた。

その時、レーダーに1機のHA反応を確認した。

単独でフリーアイゼンに接近してきたというのか。

ラティアはすぐにその方角にレールガンを向けた。


「――っ!?」


その時、ラティアは言葉を失った。

目の前には背中に翼の形をしたブースターを取り付けた真っ赤なHA、レッドウィングの姿があったのだ。


『ラティア、今すぐ私と共に来い。 フリーアイゼンと行動を共にしても未来はないぞ』


「イリュード、貴方なのっ!?」


『ああ、そうだ。 信じられぬのなら、証拠を見せてやる』


レッドウィングから通信を確認すると、突如レッドウィングの胸部のハッチが開き、人が姿を現す。

真っ赤なパイロットスーツを身に纏った男がヘルメットを外すと、そこから赤い長髪が風に乗られてふわりと舞う。

間違いなく、そこに立っていたのはイリュードだった。


「聞こえるか、ラティアっ! もう一度だけ問う……私と共に来いっ! でなければ俺は、お前を討たねばならんっ!!」


「――イリュード、どうしてっ!?」


ラティアも同じく、ブレイアスのハッチを開きコックピットから身を乗り出す。

ヘルメットをコックピットへ投げ捨て、ラティアは叫んだ。


「今まで何処で何をしていていたのか、全部話してっ!!」


「話せば長くなる。 私を信じるかどうかは君次第だ……だからあえて先に言わせてもらう、私は新生メシアに属している。

つまり、君達とは敵同士となったという事だ。 我々の任務は新生メシアへの反逆者の始末、つまりフリーアイゼンの始末だということだ」


「何故……何故なのっ!? 貴方は、アッシュベルが望む世界を支持するというのっ!?」


「我々に残された時間は、君達が思うほど長くはないのかもしれない。 アッシュベルはそう言っているのだっ!」


「だからといって――」


「私と共に来るか来ないか、それだけ考えろっ! 君がフリーアイゼンを信じるのなら止めはしない、私はこの場でラティア……お前を討つまでだっ!」


「そんな――」


行方を暗ませていたイリュードが、生きていた。

アヴェンジャーとの決戦後、ずっとイリュードの安否だけを考え続けていたラティアにとっては、どれ程待ち望んでいた再会だったのだろうか。

しかし、この再会が意味するのは違う。

事実上、イリュードはフリーアイゼンの『敵』……『新生メシア』の一員として姿を見せたのだ。

彼が何を意図してアッシュベルの配下へついたのかわからない。

考えもなしに動くような男ではない事をラティアはよく知っている。


だが、フリーアイゼンには仲間がいる。

短い間ではあるが艦長やクルー達、そしてゼノスには世話になり続けている上、何よりも大切な妹がここにいるのだ。

イリュードも裏切れないし、妹であるシリアを裏切る事も出来ない。

ラティアの心は揺らいでいた。


「……わかった、それがお前の答えなのだな」


沈黙を否定と捕えたイリュードは、何処か寂しい表情を浮かべてコックピットへと戻ろうとした。

このままでは、嫌――


「すまなかったな、ラティア。 どうか、私を許してくれ――」


最後に一言だけ、イリュードはそう告げた。

その悲しそうな瞳は、ラティアの瞳を強く捕えていた。

何故、そんな目をするのか。

必要とされている、私はイリュードに必要とされている?

ラティアは堪えきれなくて、叫んだ。


「待って、イリュードっ!」


その時、イリュードは足をピタリと止めた。


「―――連れて行って」


「何?」


「私は貴方を信じるわ、だからお願い。 私をここから連れ出してっ!」


「……本当に、いいのだな?」


「……ええ」


ラティアに迷いはなかった。

イリュードが何を考え、新生メシア軍に入ったのか知りたいから。

フリーアイゼンがもし、本当に間違っているとしたら……自分達で彼らを正さなければならない。

――勿論、逆も考えられる。

もしも、イリュードが道を間違えてしまっているのならば。

ラティアが正さなければならないと――

ラティアはコックピットへと戻り、ヘルメットをつけないまま機体を発進させる。

視界の邪魔となる前髪を手で払いのけると、ふわりとラティアの金髪が靡いた。


「ごめんね、シリア。 また貴方を、裏切ってしまうのね……ダメな私を、どうか許して――」


そう呟くと、ブレイアスの頭上をレッドウィングが通り過ぎ背後に着地をする。

するとブレイアスの両脇を抱え、その大きな翼で空へと舞っていった。








「フリーアイゼンはまだ出航できんのか?」


「残り時間5分程です……おかしいですね」


モニターに算出された数字を読み上げて、ヤヨイはふと首をかしげた。


「どうした、カイバラ」


「いえ、先程からラティア機から通信が返ってこないのです。 損傷した形跡も見受けられないのですが」


「どういう事だ? クッ、レーダーがこの状況では何もできん……っ!」


『フリーアイゼンに告ぐっ!』


突如、フリーアイゼン内に通信が飛び込んできた。

どうやら敵機のHAからのようだが、この声には聞き覚えがある。


「イリュード艦長、やはり貴方なのだな?」


『……いかにも。 フリーアイゼンは我々が完全に包囲している、貴方に逃げ場は残されていませんよ』


「ならば、どうするというのだね?」


『武器を捨て、我々に投降するか、そのまま抗うかのどちらかです』


「ふざけるなっ! 我々はアッシュベルには従わん、プロジェクト:エターナルは世界を地獄へ突き落すだけなのだぞっ!?」


『やはり、そう答えますか。 貴方ほどの人を失くすのは惜しいですが……やむを得ないですね』


それだけ伝えると、イリュードとの通信は途切れてしまった。


「イリュード艦長、何故だ」


ガンッと、艦長は力強く拳を台へ叩き付けた。

かつてアヴェンジャーの脅威からメシアを守る為に、共に戦い続けてきたというのに。

イリュードはいとも簡単に、フリーアイゼンを裏切るというのか――


「周囲より高エネルギー反応を確認……ロングレンジキャノンが来ますっ!」


「クッ、ラティア機はまだかっ!?」


「……ラティア機の反応が途絶えました。 通信も繋がりません……っ!」


「どういう事だ、まさか敵襲にっ!?」


「おいおいやべぇぞ、このまま直撃しちまったらフリーアイゼンは飛べねぇっ!」


「ミサイルで弾幕を張れっ! 出来る限り敵の狙いを妨害させろっ!」


「チッ、俺がやるしかねぇかっ!!」


ライルはミサイルの操作を行い、すぐに全弾発射させた。

フリーアイゼンからは勢いよく数十ものミサイルが発射され一斉に爆発する。

すると白い煙がもくもくと出現し始め、辺り一面は瞬く間に白い煙に覆われた。

だが、同時にブリッジルームに激しい振動が伝わる。

何発かのロングレンジキャノンが放たれてしまったのだろう。


「被害状況を告げろっ!」


「左舷ブロック、右舷ブロック共に損傷率50%っ! 次の一撃は持ちませんっ!」


「だが、フィールド調整には影響がなさそうだ……あと2分で出せるっ!」


「すぐに出せないのか?」


「途中で落ちるのを覚悟すんなら、出してもかまわねぇけどなっ!!」


「高エネルギー反応を再度確認……このままでは――」


「構わん、出せっ!!」


「チッ、あいつじゃねぇけど……どうなってもしらねぇからなぁっ!!」


艦長の決断は早かった。

どの道このまま、2分もあの場を持たせることは難しかっただろう。

フリーアイゼンは宙へと浮き、凄まじい速度で上昇していく。


「ウラァァッ! かっとばすぜぇぇぇっ!!」


「ロングレンジキャノン、きますっ!」


「うるせぇ、しるかっ! このまま突っ切っちまうぞっ!」


「それでいい、行けっ!」


「うおぉぉぉぉっ!!」


上昇していくフリーアイゼンに向けて、一斉にロングレンジキャノンの一撃が襲い掛かろうとする。

その瞬間、フリーアイゼンは急加速をし凄まじい速度で前進していった。

だが、ロングレンジキャノンの一撃を避けきることが出来ず一部損傷を負ってしまっている。

フリーアイゼンはバランスを崩さず、そのまま前進して戦域を離脱していった。







コックピットの中、イリュードはため息をつく。

猛スピードで空を突き進んでいくフリーアイゼンを見て、思わずにやついた。


「まさか、こんな簡単に逃げられてしまうとは」


『イリュード艦長、彼らを追いますか?』


「深追いはするな、どうせあの状態では遠くへは逃げれん。 やはり一筋縄に行く相手ではないな、フリーアイゼンよ」


イリュードは過ぎ去っていくフリーアイゼンを睨み付けて、そう呟いた。


『アヴェンジャーの残党はどうしますか?』


「……いや、放っておけ。 奴らはこちらに仕掛けるつもりはないようだ、無理にこちらの戦力を削る事もあるまい」


『畏まりました』


『艦長っ! E.B.Bの反応を確認しましたっ! 大型E.B.Bの奴も付近にいるようですっ!』


「了解した。 行くぞ、我々の任務はフリーアイゼンだけではあるまい、E.B.B討伐も忘れるなっ!」


『了解ですっ!』


レッドウィングは大きな翼を広げ、ソルセブンへと帰還していった。


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