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     歪んだ感情 ②


フリーアイゼンから、4機のHAが一斉に出撃した。

空を駆け抜けていくι・ブレードとレビンフラックスに、地上へと着陸するゼノフラムとブレイアス。

フリーアイゼンの後方には、イリュードによって託されたスカイウィッシュ部隊。

指揮権は今、ゲン・マツキに移されていた。


目の前に待ち構えているのはアヴェンジャーの大軍……レブルペインやウィッシュと数多くのHAが迫って来ていた。

晶が先行した時よりも、その数は増えている。

敵の目標はメシア本部……フリーアイゼンは、ここで戦線を維持してアヴェンジャーの侵攻を食い止めなければならない。

本部は今、大量のE.B.Bに襲われており非常に危険な状態だ。

ここにアヴェンジャーまでもが紛れ込んでしまえば更なる混乱を引き起こす。

世界をアヴェンジャーの好きにはさせない。

必ず、食い止めて見せると晶は誓った。


「アタシ達が先行する、行くぞ晶っ!」


「ああ、わかったっ!」


晶はグッと力強く、スロットルを握りしめた。

ι・ブレードとの強い絆、それが自分の最大の武器。

その絆の強さを、奴らに見せつけてやろうと晶は意気込んだ。


「……やるぞ、ι・ブレード」


コックピットが赤く灯ると同時に、晶は一気にスロットルを押し込んだ。

ギュゥゥンッ! と、全身に強烈なGが襲い掛かる。

そのまま地上へと急降下をし、勢いを殺さずにムラクモを抜刀した。


バシュンッ! たった一振りで、2機のレブルペインが真っ二つに切断された。

だがそれと同時に、周りのレブルペインが一斉にι・ブレードに飛び掛かる。

危険察知でその動きが見えていた晶は、即座に空高く舞い上がりブラックホークを4発放った。

空高くからアヴェンジャー部隊の向こう側を目にすると、何やら高台で身構えている4機のHAを目撃する。


「あれは……ロングレンジキャノンかっ!?」


かつてアヴェンジャーはフリーアイゼンを落とす為に、惜しむことなくかなりの数を投入したはずだ。

まだ、あの兵器を所有していたというのだろうか、やはりアヴェンジャーは想像以上に戦力を保有していると思える。


「やらせるかよ……っ!」


空を高速でι・ブレードが駆け抜けていく。

地上からライフルが次々と発砲されるが、ι・ブレードの機動力で命中させられる者は早々いない。

あっという間に高台へと辿り着いた晶は、ロングレンジキャノンに向かってブラックホークを構える。

次の瞬間――ズキンッと晶に頭痛が襲い掛かった。


『やっぱり来やがったなぁ、ビリッケツよぉっ』


「あいつ……っ!」


ロングレンジキャノンの陰から、凄まじい速度で一機のレブルペインが飛び込んできた。

晶は即座に機体を後退させ、襲い掛かるレブルペインに向けて何発もブラックホークを放った。

だが、まるで空でパフォーマンスでも披露しているかのような動きでレブルペインは弾を避けて距離を縮める。


『ケッ、尻尾巻いて逃げたと思ったら今度はお仲間連れか? ま、テメェにはそうやって馴れあってる方がお似合いだろうがなっ!』


「……俺は、絶対に負けない。 必ず、お前を仕留めて見せるっ!!」


『言うねぇ、ビリッケツぅ……今までのマグレがいつまでも通用すると、思うんじゃねぇぞっ!』


懐へと飛び込んでくるレブルペインを危険察知で捕えるが、またしてもコックピットが青く灯り危険が告げられる。

ガァンッ! 強い衝撃が襲い掛かり、コックピットが激しく揺れた。

だが、晶は怯まずにムラクモを振るう。

その瞬間、レブルペインは急降下してι・ブレードの下方へと回り込んだ。

バァンッ! 同時に晶は、片手で構えたままのブラックホークを放った。

しかし、レブルペインはギュンッとブーストを吹かせてあっという間にι・ブレードの背後を捕える。


『なぁ、もっと冷静に考えてみろよ』


淡々とした口調で俊が告げると、またしてもι・ブレードは一撃を受けてしまう。

晶は攻撃の手を休めずに、俊の動きを捕えようと必死だった。


『お前は学校で常にビリだった落ちこぼれだ、それもぶっちぎりのだぜ? 笑っちまうよな、普通は3年もやってりゃ赤点ぐらい余裕で超えるってのによ。

ここまで才能がない奴ってのもある意味希少種かもしれねぇぜ?』


「……クッ!」


俊の言葉に、惑わされるな。

確かに晶は成績が最下位だった、いくら頑張ってもシミュレーターで好成績を収めることが出来なかったのは事実だ。


『あの時テメェ、俺が不正したとか騒いでやがったよなぁ? ったく、みっともねぇったらありゃしねぇ……

いい加減、現実を見ろよ? お前が今まで生きてこれたのは、たまたまι・ブレードの性能にカバーされただけであって、テメェの実力でも何でもねぇんだよ』


だけど、それでもι・ブレードで今まで戦い抜いてきた。

ι・ブレードと共に上げた戦果は決してまぐれではなく、晶自身の実力だ。

もう、昔の自分とは違うんだと強く言い聞かせた。


『誰も口にしねぇからよ、ハッキリと言ってやるよ。 テメェは足手まといだ、ゴミクズだ。

テメェみたいな雑魚は、メシアであろうがアヴェンジャーであろうが、必要とされてねぇんだよ。

だから、俺がテメェの戦意を喪失させるまで徹底的にボコッてやるよ……テメェの為だけじゃなく、テメェの仲間の為にもなぁっ!!』


再び、猛スピードでサーベルを構えたまま……レブルペインが襲い掛かってくる。

危険察知でも見えていたが、ι・ブレードはその場に留まったまま……動かない。

晶は顔を俯かせたまま、スロットルを強く握りしめている。

既に間合いに踏み込んだレブルペインは、腕を大きく振り上げて斬りかかる動作にまで達していた。

ビリッケツ・落ちこぼれ・雑魚・足手まとい・ゴミクズ。

その言葉は心を抉るかのように、学校時代での自分を思い出させた。

必死になって練習をしても、クラスメイトに追いつけなかった。

次第にはやる気までも失くしては木葉や竜彦に支えられてきた日々。

それらは全て、『過去』だ。


「うおおおぉぉぉぉっ!!!」


晶は顔をガバッと起き上がらせて、スロットルを最大まで押し込んだ。

ギュオオオンッ! と、急加速を遂げたι・ブレードは、レブルペインを強く押し出した。


「違う……俺はもう、ビリッケツでも落ちこぼれでもないっ!!」


両手でガッシリとレブルペインを捕えた晶は、力強く叫んだ。


『さっさと認めろよ、クソがっ!!』


「お前こそ、認めろよっ!」


晶は力任せに、レブルペインを地上へと向けて蹴り飛ばした。

すぐにブラックホークで追い打ちをかけるが、あっという間に体制を取り戻しレブルペインはライフルを撃ち返す。

危険察知で軽々と交わすと、お互いは一時的に停止した。


「落ちこぼれの俺は、もう何処にも存在しない。 お前の目の前にいる『俺』は、フリーアイゼンのエースなんだぁぁぁっ!!」


『テメェがエースだと? 笑わせるぜ、これだからビリッケツはよぉ……どうかしてるぜっ!!』


ι・ブレードはムラクモを構えると、勢いのまま斬りかかろうとする。

だが、レブルペインは真正面から向かって来ずに、ι・ブレードの下方へと回り込みライフルを撃ち続けた。

交互に撃たれる二丁のライフルを交わしながら、晶は徐々にレブルペインとの距離を縮める。

その瞬間、危険察知が発動した。


『学習能力の、ねぇ奴だなぁぁっ!!』


レブルペインは、一斉にミサイルが発射される。

晶は即座に下がってブラックホークを二丁構えた。


「クッ……!!」


バンバンッ! とミサイルを何とか撃ち落したが、同時に弾切れが訪れた。

その瞬間、レブルペインはι・ブレードの真正面へと回り込んだ。


『そら、もう一発いくぜぇぇっ!!』


「やらせるかよっ!」


晶は力任せにムラクモを振るうが、瞬時にレブルペインはモニターから姿を消した。

コックピットは青く灯された、また死角へ回り込まれたのかと背後を警戒するがレブルペインの姿はない。


『そろそろ、死んどけよ?』


ゾクリ、と晶の背筋に寒気が走る。

まるで本当に背後にでも迫られたかのような感覚だ。

レブルペインは、ほぼ密着に近い状態でι・ブレードの背後を捕えていた。

こんな至近距離から撃たれてしまえば流石のι・ブレードでも装甲が持つとは思えない。

だが、それはあのレブルペインにも言えるだろう。

……脅しなはずがない、あの男は必ず無謀な事をやってのける。

それを察したからこそ、晶は自身の危険を察したのだろう。


『下がれ、晶っ!!』


突如、通信機からゼノスの声が飛び込んだ。

言われるがままに、晶は全速力で空へと向けてスロットルを限界まで押し込む。


『逃がさねぇよっ!!』


同時に、レブルペインから無数のミサイルが発射された。

その瞬間――グォォォッ! と、鉄球が猛スピードでレブルペインの前を通り過ぎて行く。

バババババッ、とガトリングの音が響くと同時にミサイルは全弾撃ち落された。

……そこには、ブーストハンマーで無理やり空へ飛んできたゼノフラムの姿があった。


『チッ、デカブツが邪魔に入ったかっ!』


『悪いが、地上に降りてもらう』


ゼノフラムは2連キャノンをレブルペインに向け、至近距離で発射させる。

だが、レブルペインの動きを捕えきれることが出来ずにあっという間に背後を取られてしまった。


『そんな重い機体で、俺を捕えきれると思ったか? おめでてぇ奴だなぁっ!』


速度を落とさないまま、レブルペインは全力でゼノフラムに斬りかかろうと飛び込んだ。

その瞬間、ゼノフラムがくるりと宙を回転し、肩からミサイルを全弾発射させる。


『チッ……ざけんなっ!!』


至近距離で一斉に放たれたミサイルは数が多すぎてとてもじゃないが掻い潜る事は出来ない。

レブルペインは一度後退し、ミサイルから逃れようと高く飛び上がった。


『やれ、晶っ!!』


「ああ、行くぞι・ブレードっ!」


晶の声に反応し、ι・ブレードのコックピットが赤く灯る。

ゼノスが用意してくれた、たった一度だけのチャンス。

そのチャンスを、逃すわけには行かない。

ミサイルから逃れてきたレブルペインを挟むように、ι・ブレードは立ちはだかった。


「お前を、倒すっ!」


『面白れぇ、やってみろよぉっ!!』


レブルペインは凄まじい機動力を見せつけ、一気にι・ブレードとの距離を詰めていく。

近くにある邪魔なミサイルは次々とライフルで破壊していく姿は、まさに鬼神の如き。

だが、晶は怯まずにレブルペインの動きを捉えようと精神を集中させる。

危険察知が発動し、レブルペインが仕掛けてくる映像が目に入った。

自分でも驚くほど冷静さを保っている晶は、いつも以上に危険察知時の映像の情報が頭に入ってきた。

相手はゼノフラムの位置も完全に把握し、丁度ゼノフラムから見て死角になる位置でι・ブレードに斬りかかろうとしている。

その背後には、破壊されていないミサイルが一つ。

相手がミサイルを当てるのを目的だと考えれば、逃げる方向は上しか有り得ない。

下にはゼノフラムが待ち構えている以上、あの男が警戒しないはずがないのだ。

相手のレブルペインは、確かに早すぎて動きを捉える事は出来ない。

だが、相手の動きを予測すれば……そこに速さなど意味は持たないはずだ。

危険察知の映像が終わった途端、晶は迷わず上空へと舞い上がる。


「うおおおおおぉぉぉっ!!!」


ムラクモを抜刀しようとした瞬間、凄まじい速度で上昇してきたレブルペインを捉えた。


『なっ――テメェっ!!』


ι・ブレードはムラクモを抜刀するが、辛うじてレブルペインはムラクモを避けて、下降していく。

後ろには再びミサイルの嵐が襲い掛かり、レブルペインは休む暇もなく、再度空高く舞い上がった。


『ビリッケツ如きに……読まれた、だと?』


「……もう一度、もう一度仕掛ければっ!」


『自惚れんな、まぐれが当たりそうになったぐらいでいい気になってんじゃねぇぞっ!』


「お前こそ、何時までも俺がただのビリッケツだと思うなぁぁっ!!」


晶はムラクモを構えたまま、レブルペインとの距離を詰めようと迫り行く。

その瞬間、危険察知が発動し……目の前にグレネードが投げ込まれた。


「まずい――」


ズガァァァンッ!!

すぐに後退し、全力で下がり何とか爆発に巻き込まれるのだけは避けた。

だが、その瞬間コックピットが青く灯り危険を告げる。

黒い煙に包まれた、視界が完全に奪われた。

いつ、どこから襲い掛かってきても不思議ではない。


「ι・ブレード、頼むっ!」


晶が叫んだ瞬間、ι・ブレードの周辺に赤い光が集いフィールドが展開された。

これで凌げるはず……だったが、不思議な事にレブルペインが仕掛けてくる様子はない。

数秒ほど時間が経つと、展開されたフィールドは消えてしまっていた。

同時に――危険察知が発動する。

煙の中、動力源を串刺しにしようとブレードを突き立てて突進してくるレブルペインの姿が映し出された。

いくら装甲が優れているι・ブレードでも、あの凄まじい速度から叩き出される突きを防ぎきれるはずはない。

煙のせいで位置が明確に掴めない以上、危険察知の情報はあまり役立たない。


なら、どうすればいい――相手も視界が奪われているはずだが、映像を見る限り相手はι・ブレードの位置を把握できている。

ギリギリまで待ち構えるしかない……晶は神経を研ぎ澄まし、レブルペインが仕掛けてくるのを待った。

煙の中、怪しく輝く二つの赤い光が目に入った。

あれは、レブルペインの頭部――


「落とせぇぇぇぇっ!!」


バァァンッ! ブラックホークから、一発の弾丸が赤い光へと向けて突き進んで行く。

徐々に姿をはっきりさせてきたレブルペインは、映像に出た通りの姿だった。

銃声に気づいたのか、レブルペインは僅かに横にずれて弾を回避する。

晶もそれに気づき、レブルペインの背後を取ろうと大きく横へ回り込んだ。


『テメェ如きが、俺の動きを捉えきれると思うなよっ!!』


「うるさい、俺はお前に……絶対に負けねぇっ!!」


そのまま、ι・ブレードは力任せにムラクモを振るう。

だが、いとも簡単に攻撃は交わされて背後を取られては危険察知で交わす……そんなギリギリなやり取りを繰り広げていた。

段々と煙が晴れて、レブルペインの姿がはっきりと見えてくる。

それを機に晶はスロットルを押し込み、レブルペインへと向けて突進した。

レブルペインは凄まじい動きで旋回し、あっという間にι・ブレードをサーベルで弾き飛ばす。

激しくコックピットが揺れる中、晶は怯まずにモニターを睨み付けた。


『ビリッケツよぉ……お前にしてはよくここまで俺を楽しませてくれたもんだぜ。

だがよ、もう終わりだ。 テメェとの遊びは、ここまでだ』


「戦いが遊びなはずがないだろうが……まだ、そんな事を言ってんのかよっ!?」


『俺にとっては楽しい事は、全部遊びなんだよ。 命を削り合う感覚……いいねぇ、ゾクゾクしてこねぇか?』


「命の奪い合いが……楽しいはずがないだろうがっ!!」


『なら、さっさとくばたっちまえよっ!!』


レブルペインから一斉にミサイルが発射された。

晶はミサイルを撃ち落とそうとするが、またしてもブラックホークの弾が切れてしまっていた。

必死で逃げようとするが、目の前にはサーベルを構え、凄まじい速度でレブルペインが迫る。

回避は間に合わない――その瞬間、バァンッ! という銃声と共に、レブルペインに銃弾が直撃した。


『なっ――』


「い、今のは?」


晶は地上を確認すると、そこには2連キャノン砲を構えたゼノフラムの姿が目に入った。


『今度こそ、仕留めろ』


「……ああっ!!」


僅かに怯んだレブルペインに向かい、晶は全力でムラクモを振るった。

直撃をくらったものの、敵機はまだ身動きが取れるようでギリギリのところで回避をされしまう。


『あの程度で俺を仕留めた気か? なめてんじゃねぇぞっ!!』


だが、晶は……それを見越していた。

ムラクモからは眩しいくらい強い光が放たれている。

……ι・ブレードの切り札、『ムラクモ解放』が晶には残されていたのだ。


「俺の、勝ちだっ!」


晶は力強くムラクモを振るうと、縦一直線に赤き閃光が走る。

バシュゥゥンッ! 目にも留まらぬ速度で、放たれた赤き光の刃はレブルペインを容赦なく切り裂いて行く。

レブルペインの左腕と左足は、綺麗に切断され……地上へと落下していった。


『やりやがった、やりやがったな……クソがっ!! テメェ……タダで済むと思うなよ、そこを動くんじゃねぇっ! 殺す……絶対に、殺すっ!!』


まだ動く……俊は、機体が半壊しようが関係なしに戦いを続ける。

今回もまた、『同じ』かと思った……だが――レブルペインは、動かないまま徐々に地上へと墜落していった。


『おい、クソッ……動けポンコツ……っ! ざけんなっ!!』


「……負けを、認めろよ」


『負けた、俺が? 笑わせるな……まだテメェとの勝負は終わっちゃいねぇんだよ……っ!!』


「認めろよ……お前は、俺に負けたんだよっ!!」


晶は力強く、俊に向かって叫んだ。

もうあのレブルペインは動けない、晶は確信していた。


『負けた……俺が? 天才であるはずの俺が、ビリッケツ如きに……? あり得ねぇ……例え、まぐれだとしても俺の負けが……有り得る訳が――』


煙を吹かしながら、レブルペインは徐々にバランスを崩し落下を加速させる。

……ι・ブレードは、ムラクモを鞘に納めた。

俊との決着は、ついたのだ。


『認めねぇ……認めねぇ認めねぇ認めねぇっ! 畜生畜生畜生畜生畜生ぉぉっ!!! 俺が、俺が負けるなんて……ありえねぇぇだろうがぁぁぁっ!!!』


「……もう、終わりだ」


晶は強引に、俊との通信を切った。

かつて何度も立ちはだかり、ι・ブレードを苦しめ続けた俊を……ついに打ち破った。

だが、レブルペインが落ちていく姿と俊の言葉を耳にすると、何処か心が痛んだ。


『晶、戻れ。 残りの奴らを片づけるぞ』


「……わかった」


コックピットの中ではまだ、叫び続けているのだろうか。

落ちていく俊の姿を哀れみながら、晶は深く深呼吸をして気持ちを切り替えた。


「せめて、生きてくれよ……」


あの状態ではもう戦えないはずだ。

晶は俊にトドメをささずに、その場を静かに立ち去って行った。


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