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    絶体絶命 ②


ゼノフラムとイエローウィッシュの2機が、戦場となる地へと降り立った。

瓦礫の数々から、昔この地は街であったことが物語られている。

地面が抉られたかのような穴が一直線に広がっていた。

フリーアイゼンによる主砲の一撃の後だ。


これだけの破壊力があれば、大半のE.B.Bは一掃されたはず。

レーダーを確認する限りでは、E.B.Bの反応もかなり減少している。

大型E.B.Bの反応を確認し、モニター越しでその姿を捕えた。


黒く細長い、不気味な塔のようなものが聳え立っている。

一見ただの建物のようにしか見えないが、よく観察するとところどころ蠢いていた。

根本は地面に完全に埋まっているが、周囲には地面が抉られたかのような後が続いていることから決して移動ができないワケではない。


事前に分析されたデータと比較すると、どうやら頂上を位置する個所にコアが存在するようだ。

だが、コアのようなものは外見からは見えない……内部に隠されていると考えるのが自然であろう。


その時……E.B.Bがゼノフラムに飛び掛かってきた。

咄嗟にガトリングを放つと、あっという間にE.B.Bは地へと落とされ消滅する。

同時に、次々とバッタのようなE.B.Bが地中から出現し始めた。


『ぼさっとすんなよ。 とにかく雑魚を片づけるぞ』


「ああ、わかっている」


イエローウィッシュが、先陣を突っ切って次々とE.B.Bを切り裂いて行く。

その後に続き、ゼノフラムは次々とE.B.Bをガトリングで撃ち抜いた。

大型E.B.Bに近づいていくと、突如大型E.B.Bが奇妙な動きを見せ始める。

すると、表面上からボコボコッと黒い塊がまるで生えてきたかのように出現した。


「まずい……退け、シリアっ!!」


キシャアアアッ!!

奇声と共に無数の黒い塊が一斉に飛ばされた。

豪速で飛ばされてきた黒い塊は、凄まじい破壊力で地を抉っていく。

まさにE.B.B式の『大砲』に相応しい破壊力だ。


「クッ……っ!」


動きを肉眼で捕えたゼノスは、二つの黒い塊をゼノフラムの素手で掴み取る。

とてつもない衝撃が襲い掛かり、ゼノフラムの巨体でさえも数センチほど退かされた。

手にした黒い塊を確認すると、少し紫色に帯びた謎の物体は……恐らく鉄の塊であろうと推測される。

周囲の瓦礫の山から、E.B.Bが生成したとでもいうのだろうか。


だが、砲丸の雨はそれだけで終わることはない。

ゼノフラムに向けて大量の砲丸が降り注いだ。

ゼノスはガトリングを発砲すると、砲丸は全弾地へと砕け散っていった。


「無事か? シリア」


『ああ、ビックリしたぜ。 鉛の雨なんて異常気象だよ』


「あれでは迂闊に近づけん、主砲で隙を作るぞ」


『わかった、一旦退くよ』


ゼノフラムとイエローウィッシュの2機は、一旦フリーアイゼンの後方へ向けて発進させる。

その時……突如、レーダーが異常をきたした。


「……シリア」


『ああ、奴らが来たみたいだね』


機体を停止させ、周囲の様子を注意深く見渡す。

すると、黒い影の集団を確認した。

あれは間違いなく……アヴェンジャーだ。


「奴らの目的は恐らく俺達だ……引き付けるぞ」


『チッ、相変わらず面倒な奴らだね』


ゼノスは黒い影の位置へ向けて、機体を前進させる。

限界まで加速させ、土煙を舞い上げながら突き進んだ。

段々と敵の姿がはっきりしていくと……ふと、ゼノスは機体を急停止させる。

ギィィィッ! と、耳を塞ぎたくなるような音が響き渡った。


だが、それどころではない。

ゼノスは、モニターに映された映像を前に、思わず目を疑った。

目視で確認するだけでも、50機を超えるレブルペインを確認した。


それだけではない、恐らくアヴェンジャーが奪ったと思われるウィッシュだって含まれている。

敵機のHAの数が、想像以上に多すぎる。

いくらゼノフラムやイエローウィッシュを奪う為と言えど、これほどの数を用意するのは異常だ。

かつて、ι・ブレードを狙った際と規模が違いすぎる。

いよいよ本格的に軍事力を身に着けたか……或いは、別の目的があるか。


『我々の優先すべき事項はE.B.Bの殲滅だ』


艦長が、二人のパイロットにそう告げた。

E.B.Bでさえ手を焼いているというのに、流石にアヴェンジャーの相手まではできない。

最悪大型E.B.Bさえ仕留めることが出来れば、E.B.Bによる被害はかなり抑えることはできる。

それを考慮したうえでの、艦長の判断だろう。


「……了解した」


『主砲発射します、パイロット各位はレンジ外へ移動してください』


ゼノフラムとイエローウィッシュは、一旦引き返して大型E.B.Bの元へと向かう。


「シリア、大型E.B.Bは俺一人でやる」


『は? なんで?』


「二手に分かれるぞ、奴らが混じってしまえばE.B.B殲滅に支障をきたす。

俺があの大型E.B.Bを仕留めるまで、なるべく敵を引き付けてくれ」


『随分無茶な注文してくれるね……アタシにあの大軍を相手にしろと?』


「やれるか?」


『アタシを誰だと思ってるのさ』


「頼りにしているぞ、シリア。 というワケだ、艦長」


『……お前達の事だ、どうせ止めても無駄だろう。 好きにしろ』


二人の会話を耳にした艦長は、一言そう告げるだけだった。

今までたった2機で修羅場を超えてきた二人の腕は誰よりも理解している。

E.B.Bの数は100を超えており、とてもじゃないがゼノフラム一機でどうにかなるような相手ではない。

ただでさえ味方の数が不足しているというのに、それを分散してしまうのは無謀としか思えない行為だ。

だが、この二人ならやってのけるかもしれない。

そんな信頼関係が、いつの間にか築かれていたのだ。


「行くぞっ!」


『あいよっ!』


ゼノスは、スロットルを最大まで押し込んだ。

ガタガタとコックピットが揺れ、尋常ではない振動が伝うがそれでもスピードを緩めない。


ズガァァァンッ!!

背後からフリーアイゼンによる、主砲を確認する。

黒く聳え立つ大型E.B.Bに、紫色の光が一直線に走った。

表面が焼かれ、溶かされた内部からはグチャグチャと気色の悪い臓器のようなものが飛び出していく。


主砲の効果はあるようだが、それ以外に目立った外傷はない。

ゼノスは、露出された内面に向けてガトリングを撃ち込んだ。

その瞬間、突如露出していた内部が元の黒いツルツルの表面へと変化していった。

いや、変化ではない。 恐らく、再生だ。

E.B.Bには再生能力があるが、この大型E.B.Bは特にその力が優れていると思われる。


やはり、一筋縄でいくような相手ではなかった。

再び、ゼノフラムに向けて砲弾の雨が降り注ぐ。

ガトリングで全てを撃ち砕きながら、ゼノフラムは大型E.B.Bへの距離を徐々に縮めて行った。

もっと火力の高い武装で攻めない限り、本体のダメージを与えることはできない。

ならば、さっさとコアを破壊するしかないが……ゼノフラムでは大型E.B.Bの頂上までたどり着けそうにはなかった。


「……へし折るまで、か」


先程の塞がれた傷、あの地点が恐らく大型E.B.Bの脆い部分だろう。

フリーアイゼンの主砲発射にはまだ時間はかかる、それまでにやれることはただ一つ――


「ブーストハンマー、射出っ!」


大量の砲丸が降り注ぐ中、ゼノスは怯むことなくハンマーを射出させて潜り抜けて行く。

目標は、先程大型E.B.Bが傷を再生させた箇所だ。

ブーストハンマーの爆発的な推進力により、ゼノフラムは引きずられるように宙へと浮いた。

何度か砲丸が直撃しかけたが全てガトリングで破壊をしてやり過ごしていく。

あっという間に、大型E.B.Bの目の前までたどり着いた。


砲丸は容赦なく生産され続け、ゼノフラムに向けて降り注ぎ続ける。

更には周りに集っていたE.B.B達が一斉に襲い掛かってきた。

だが、砲丸は敵味方関係なく無差別攻撃そのものであった。

集っていたE.B.B達のほとんどが砲丸の餌食となり、次々と潰されていった。


ズガァンッ!

コックピットが激しく揺れた。

ゼノフラムが砲丸の直撃を受けてしまった。

近距離になるにつれて、ゼノスの反応が追い付かなくなってきたのだ。


「……だが、退くつもりはない」


ゼノスはブーストハンマーを射出し、大型E.B.Bへと向かっていく。

ガンッ! ガンッ!! と、火花を散らしながら容赦なくハンマーは大型E.B.Bへと突進していった。

だが、表面に少し傷が入るだけでダメージが通っているようには思えない。

ゼノスは何度も、何度もブーストハンマーをぶつけ続けた。


その間にも砲丸は止むことはない。

ブーストハンマーに引かれているせいか、機体の制御は思った通りにはいかなかった。

避けるきるのが無理だと分かったのか、ゼノスは砲丸からのダメージを最小限に抑えるよう直撃を避けながら受け続ける。

このままダメージが蓄積されれば、ゼノフラムと言えど無事ではすまされない。

その時、ゼノフラムの目の前からボコッと砲丸が作り上げられた。

この距離から発射されれば、流石のゼノスも反応しきることはできない。


「チィッ!」


舌打ちをするとゼノスはブーストハンマーをぶつけて、その砲丸を破壊して見せた。

更に、ボコボコボコッと砲丸が次々と生産されていく。

発射させる前に、キャノンとガトリングを全力で浴びせ続け、何とか砲丸の発射を防ぐことはできた。

すると、周囲の黒い表面が薄くなっていきうっすらとだが先程見えた内部が顔を見せ始めた。

ゼノフラムはブーストハンマーでその個所を打ち続けると、バリンッ! と、ガラスのように黒い表面が崩れ去っていく。

更にブーストハンマーでその個所を抉るように、容赦なく発射させ続けた。


「主砲はいけるかっ!?」


ブリッジルームに向けて、ゼノスは叫んだ。


『はい、準備はできました。 レンジ外へ避難してください』


「そんな暇はない、俺に構わず撃てっ!」


『で、ですが……』


「撃つんだっ!」


『……わかりました』


ヤヨイは不安げな声であったが、了解をしてくれた。

発射準備が整ったことを確認すると、ゼノフラムは肩からミサイルを全弾発射させる。

ズガァァァンッ!! と、ミサイルの爆発によってゼノフラム自身が吹き飛ばされてしまった。

だが、ゼノスは何とか操縦桿を握りしめ地面へと着地させた。

……大型E.B.Bには、まるで抉られたかのような大きな傷跡が残されたままだった。


その時、紫色の光が一直線に大型E.B.Bを貫いていく。

ゼノフラムは間一髪で、主砲の一撃を避けきった。

その途端、砲丸の雨がピタリと止んだ。


ゼノスが切り開いた内部に主砲の一撃が重なったことにより、大型E.B.Bはその巨体を支えるバランスを失った。

ギギギ、とその巨体を地面へと向けて倒していく。

ゼノフラムは巻き込まれないようにと、全力でその場を離れて行った。

ガトリングの弾薬は尽き、ミサイルも全て打ち切った。

残された武装だけでコアを破壊しなければならない。


「だが、やるしかあるまい」


フリーアイゼンの主砲がなければ、こう簡単に事が運ぶこともなかった。

やはり、HA単機で大型E.B.Bを討伐することは難しい事なのだろうか。

ふと、ゼノスはフリーアイゼンへ目を向けた。

その時――


「なっ――!」


2本の紫色の光が、フリーアイゼンを貫いていた――








迫り来るアヴェンジャーの部隊へ向けて、シリアは機体を前進させ続けた。

あの数とまともにやりあう気はない、要はゼノスが大型E.B.Bを何とかするまで時間を稼ぐのが目的だ。

イエローウィッシュの機動性であれば、相手を錯乱させることも容易であろう。


「できれば大人しく、E.B.Bの相手をしていたいんだけどねぇ」


敵軍との距離は徐々に縮まっていく。

そろそろ仕掛けるか、とシリアはグレネードを敵に向けて投げ飛ばした。

ズガァァンッ! と、派手な爆発と共に砂埃が発生する。

イエローウィッシュは砂埃の中へと入り込んでいった。

視界が悪い中、HAの影を確認するとイエローウィッシュは2本のサーベルを抜刀した。


「まず、一機っ!」


バシュンッ! と、バーニアを吹かすと目にも留まらぬ速さでイエローウィッシュは一機のレブルペインを切り裂いた。

レブルペインは膝を地へつかせ、ガタンッと倒れていく。

すると、2方向からバババッ! と、ライフルが発砲された。

難なく回避を行うと、イエローウィッシュはライフルを構えて音を頼りに一発ずつ発砲する。


ガンッ! と金属音を確認すると、サーベルを手にギュンッと機体を前進させた。

怯んでいるレブルペインの姿を確認し、イエローウィッシュは鮮やかな剣裁きで切り裂いた。


「どうしたどうした、たった一機に手こずってるのかい?」


敵を挑発するもの、砂埃の中にいつまでもいるつもりはない。

シリアは一旦その場を退いた。

中ではバババッとライフルで撃ち合う音だけが聞こえていた。


「これで同士討ちしてくれりゃ、かなり楽なんだけどねぇ」


と、ため息交じりで呟くと現実は甘くないと言わんばかりに2機のレブルペインがシリアを追い姿を晒す。

2機のレブルペインは、一斉にライフルを放つとイエローウィッシュは華麗なる動きで避けきった。


「アタシを、なめんなっ!」


ガキィンッ! と金属音を響かせると、2機のレブルペインは両腕を切り落とされていた。

だが、それでもイエローウィッシュへと2機のレブルペインは飛び掛かっていく。

その状態ではできることが限られており、突進しか選択肢はない。

シリアは冷静にライフルで2機のヘッドを撃ち抜いて見せる。

2機のレブルペインは地へと足をつき、そのまま倒れて行った。


『図に乗るなよ、貴様』


『アハハ、お姉さんまた逢えたねっ!』


「……テメェらっ!!」


砂埃の中から、2機のHAが姿を現す。

今となっては忌々しき深緑色の巨体、ι・ブレードを打ち破った『G3』。

もう1機は、レブルペインではあるが、問題はそのパイロットにある。

過去に何度も戦った際に、尋常ではないしつこさでシリアを追いかけまわした『フィミア』だ。


『大人しく投降しろ、今なら命だけは助けてやるぞ』


『ウヒヒ、お姉さんこっち来ない?』


「ざけんなよ……テメェらみたいな迷惑野郎と一緒になるぐらいならここで死ぬことを選ぶね」


『ならば、死ね』


G3から無数のサマールプラントが飛び出した。

シリアはスロットルを限界まで押し込み、サマールプラントを振り切ろうとする。


『アハハッ、やっぱりお姉さんと私は相性抜群だねっ!』


すると、イエローウィッシュの前を先回りし、レブルペインがサーベルを片手に襲い掛かってきた。


「だから、アンタなんてお断りだっつーのっ!!」


シリアは強引に2本のサーベルで、レブルペインを弾き飛ばす。

ガキィンッ! と、鈍い音共にコックピットが大きく揺れる。

わずかに停止したイエローウィッシュに数本のサーマルプラントが突き刺さったのだ。


「チッ!」


再び最大速度まで加速させるが、サマールプラントは逃げても逃げてもイエローウィッシュを追い続ける。

その間にも徐々にアヴェンジャーの本体が合流を果たし、数機のHAからライフルで狙われ始めた。

バシュンッ! バシュンッ! と、四方八方から飛んでくる弾丸を辛うじて避けながらも、イエローウィッシュはそのスピードを緩めない。


「クッソ、相変わらず厄介な武器だねあれはっ!」


シリアは敵機の2機の敵HAが発砲している姿を確認し、そのポイントへ向けて機体を前進させた。

敵HAは怯むことなく、ライフルを発砲し続けるが全て避けて見せる。

このままサーベルで切り付ける、かと思いきやイエローウィッシュは敵のレブルペインの裏側へと回った。

ズガァンッ! と、サマールプラントがレブルペインを容赦なく串刺しした。


「ふぅ……ようやく止まってくれたな」


ホッと一息をつく間もなく、突如上空からレブルペインが斬りかかってきた。

ガキィンッ! と、サーベル同士がぶつかり合い火花が散る。


『ねぇねぇ、今日はどんな愛し方してくれるの? すっごく激しい方が好きだよ?』


「キモいんだよ、クソっ!!」


ガンッ! と、レブルペインを蹴り飛ばすと再びサマールプラントがイエローウィッシュへと向けて襲い掛かる。

シリアは咄嗟にサーベルでサマールプラントを切り裂くと、できるだけ遠くに離れようと一旦退避をしていく。

ようやくシリアが起こした砂埃が収まろうとしている中、敵軍の姿が再度肉眼を捕えることが出来た。


「……あ、あれは?」


敵軍の後方に、2機のレブルペインが長身の銃を両手で構えている姿を捕えた。

……いや、あれはただの狙撃銃ではない。

あの形状と言い、シリアは同じようなものを見たことがあった。


「ロングレンジキャノン……っ!!」


そう、間違いなくレブルペインが手にしているものは『ロングレンジキャノン』だった。

照準はシリアではなく、明らかに『フリーアイゼン』へと向けられている。

急いで狙撃を止めなければ、取り返しのつかないことになる。

だが、あの敵軍のど真ん中へ単機で突っ込むのはあまりに無謀すぎた。


「……黙ってみてられるかっ!」


迷わず、シリアは敵陣の中を突っ切っていく。

目標はロングレンジキャノンの動力源。

発射には大量の電気を使用する為、あれさえ潰してしまえば狙撃を防ぐことはできるはず。

最悪ケーブルさえ千切る事さえできればいい。


「間に合ってくれっ!」


スロットルを限界まで押し込み、機体は最大速度まで達する。

一斉にライフルで狙われるが、この速度であれば当てられる心配はない。

ロングレンジキャノンの機能を停止させて、すぐに戻れば生還はできるはずだ。


だが、既にロングレンジキャノンのチャージは始まっている。

動力源を狙っていては間に合わない……ならばケーブルを切断するしかない。

シリアはケーブルに向けて、ライフルを発砲させようとした。


ズガァンッ!!

突如、コックピット内が大きく揺れ始めた。

警告音が響き、イエローウィッシュはガタンッと敵陣のど真ん中で動きを止めてしまった。


「ど、どうした? う、動かない?」


ウソだろ? と言わんばかりに、シリアはスロットルを押し込んだり引いたり、操縦桿をガチャガチャと動かすがイエローウィッシュはビクともしなかった。

よほど当たり所が、悪かったようだ……。


『アッハッハッハッ!! 駄目だよお姉さん……もっともっと私と愛し合ってくれないとぉっ!!』


「クソッ……動けっ!!」


あのフィミアが、ライフルで動きを止めたというのか。

操縦桿を叩き付けるものの、イエローウィッシュは機能停止にまで追い込まれてしまっていた。

徐々にアヴェンジャーのHAへと囲まれ、イエローウィッシュは包囲されていく。


「……参ったね、こりゃ」


流石に成す術がないと、シリアは力なく呟いた。

その時、一機のレブルペインが全速力でイエローウィッシュの元へと近づいてきていた。

……恐らくは、フィミアの操るHAだ。


『アハハ、アッハッハッハァッ! お姉さん、お姉さぁぁぁんっ!』


「あんのバカっ! アタシを殺す気かっ!?」


シリアがいくら操縦桿を叩き付けようがスロットルをガチャガチャと押し込もうがイエローウィッシュの反応はなかった。


『ウヒヒィ……私と、一つになってよぉぉっ!!』


「やめろ、おい――」


ガキィィンッ!!

シリアの叫びも虚しく、レブルペインのサーベルはイエローウィッシュの胴体を貫いた。


「……チッ、じゃあな、相棒――」


覚悟を決めたシリアは、脱出ボタンを叩き付けるように押した。

ズガァァァンッ!!

同時に、イエローウィッシュは大爆発と共に大破していった――


『アハハハッ! アッハッハッハァッ!! 一つになっちゃった、お姉さんと一つにぃぃっ!!』


大爆発の中、フィミアの奇声に近い笑い声だけが響き渡る。

それと同時に、2機のレブルペインからロングレンジキャノンが発射されていく。


バシュゥゥンッ!!


轟音と共に、2本の紫色の光が発射された。

2本の紫色の光は、フリーアイゼンを貫いていった――


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