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     EternalBright ③


光の柱から生まれた謎の巨体。

E.B.Bのようにも見え、人の形をしているように見えるその姿に晶は困惑した。

何故、突然こんなものが姿を現したのか?

だが、謎の巨体は何もしようとせず、ただじっと、ι・ブレードの事を見つめているように見える。

ダァン、ダァンッ!! すると、背後から銃弾の音が鳴り響くと、コックピット内が激しく揺れた。


「キャッ!?」


衝動で木葉はシートから投げ飛ばされると、晶は上手く木葉をキャッチして壁へと叩き付けられる。

呼吸が少し困難になり、晶は咳きこみながらもギュッと木葉を抱きしめた。


「――晶くん、お願い。 私にやらせて……私にはもう、十分に生きたよ……晶くんと、こうしていられるだけでも十分に幸せだから――」


「木葉――」


晶は木葉を抱きしめたまま離そうしない。

このまま手を放してしまえば、木葉はι・ブレードとの共鳴を始めて星の記憶へ干渉しようとする。

そんな事、認められるはずもなかった。

木葉は星の記憶を握りしめたまま、決して離そうとしない。

これを持っているだけでも、木葉の身には相当負担がかかっているはずなのに。

木葉を苦しませるわけには行かない―――晶は木葉から星の記憶を奪い返そうと、触れた。


「――あ」


「……な、何?」


すると、木葉は顔を上げて晶と目線を合わせた。

先程まで苦しそうな顔をしていた木葉であったが、今は不思議そうな表情を晶に見せている。

そして、晶自身にもどういう訳か頭痛が襲い掛かってこなかった。

晶は確かに星の記憶に触れた時、頭痛に襲われた事を覚えている。


耐性がついた……いや、違う。

今、晶は自分の握りしめている手を確認した。

晶と木葉は互いに片手で星の記憶を握りしめている、お互いが石を挟み込むように。

もしや、星の記憶への負担が―――分散されている?


「……星の記憶への干渉は、莫大な情報が流れ込んでくるが故に身体が耐えきれなくなって死を迎える。

だけど……二人なら、どうなんだ?」


「え?」


「―――木葉、二人でやろう。 もしかすると、星の記憶への負担が分散されるかもしれない」


「二人、で……?」


「だけど、結果は変わらないかもしれない。 むしろ、二人とも死んでしまう危険性だってある。

だけど、こうして二人で星の記憶を持てば、負担が軽減されたのも事実なんだ。 試してみる価値は、あるはずだ」


「晶、くん……でも―――」


「――どちらかを置き去りになんて、できないだろ。 だけど、二人ならば奇跡を起こせるかもしれない。

一人の力では不可能でも、二人の力なら生き残れるかもしれないッ!」


咄嗟の思い付きではあるが、全く根拠がない訳ではない。

現にこうして星の記憶への負担が分散されているのも事実だ。

お互いが生きて無事帰るには他に方法が思いつかない、それが晶が思いついた最後の方法だった。


「わかった、私……晶くんを信じるよ」


「……ありがとう、木葉」


二人が決意を固めた時、晶はシートへと座り深呼吸をする。

機体のバランスを整え、ι・ブレードはムラクモを構えた。

目の前の巨人は両手を大きく広げると、その巨大な口を開き始めた。

口からは紫色の光が集い始め、バシュゥゥンッ! と凄まじい爆音と共にエネルギー砲がι・ブレードへと向けて発射される。

晶は必死で回避をすると、木葉を一緒にシートへ座らせて、二人で星の記憶を強く握りしめた。


「あの光の巨人、私達の邪魔をしようとしている……」


「……星は、本気で俺たち人類を滅ぼそうとしているのか」


アッシュベルは言っていた、未来は決して変える事は出来ないと。

しかし、そんな事はあり得ない。

晶はこれまで……たった数秒先に見えた未来を変えてきた。

あの映像はあくまでも機械が作り出した予測にしか過ぎない、しかし『未来予知』である事には変わりはない。

ιシステムが見せる未来と、星の記憶が見せる未来は……同じだという確信が晶にはあった。


ι・ブレードのラストコードが発動した。

星の記憶の力も強まっていき、晶は激しい頭痛に襲われる。

木葉も同様に苦しんでいるが、今は耐えきるしかない。

ι・ブレードの出力は限界を超えて、上昇し続ける。

その度に機体からは真っ白な輝きが放たれ続け、星の記憶からも赤い光が強く放たれ続けた。


「行くぞ、木葉。 俺達の想いを、星の記憶へ伝えるんだ。 そして……世界からエターナルブライトを、E.B.Bを……この手で消し去る為にもっ!」


「大丈夫、もう……怖くないから」


晶は精神を集中させ、ムラクモに全てのエネルギーを集わせる。

ι・ブレードはムラクモを天に掲げると、白い輝きはムラクモに纏わりつくように集結し、徐々に巨大な光の剣が作り上げられていく。

アインズケインに放っていた時よりも遥かに出力が上昇しており、その分晶達への負担は想像以上に高かった。


「クッ、木葉……大丈夫かっ!?」


「――大丈夫、私はっ!」


光の巨人は二射目を放とうと、ι・ブレードに向けてもう一度口を開き始める。

この状況では回避をする事もι・フィールドを展開する事も不可能だ。

こうなったらもう一撃放たれる前に、ラストブレードを解き放つしかない。

一瞬でも遅れれば落とされかねないが、元より死は覚悟の上だ。


「――晶……くん、もしかすると最後になるかもしれないから……伝えたいことがあるの」


「伝えたい、こと?」


「うん……私ね、晶くんの事、大好きだよ。だからね……もし、私と晶くんが生き残って無事帰れても……

たった半年しか余命が残されていない私でも……晶くんは、私を愛してくれる……かな?」


「……木葉」


最期かもしれない、という言葉には重みがあった。

仮に生き残れたとしても、木葉には力の代償としてたった半年の余命しか残されていない。

だけど、晶は迷わずに答えた。


「愛するに、決まってるだろッ! 俺もだ、俺も木葉の事が大好きだッ! たった半年でもいい……この世界で、同じ時、同じ場所で……二人で過ごしたいッ!」


「晶くん――ありがとう」


「終わらせるぞ、この一撃で……全てに決着をつけるんだ。 そして世界にわからせてやる……人類は、未来さえも変える力を持つって事をッ!」


「……うん」


木葉は微笑んで頷くと、木葉はもう片方の手で晶と共にスロットルを握りしめた。

間もなく巨人からはビーム砲が放たれようとしている。

同時に、ムラクモの輝きが最高潮にまで達した。


「「ラストブレードォォォォォッ!!」」


晶と木葉はほぼ同時に、その名を叫んだ。

ι・ブレードは、機体を仰け反らせ、巨大な光の剣となったムラクモを、縦一直線に振り下ろす。

ブォォンッ! と凄まじい風圧を起こすと同時に、光の刃は何処までも伸びて行き、神の源まで到達する。

遅れて巨人から、ビーム砲が放たれたが――ラストブレードの一撃によって、簡単にかき消されていく。

しかし、ラストブレードの凄まじい力は、ι・ブレードに想像以上の負担がかかっていた。

機体はメキメキと音を立てながら、装甲がボロボロと剥されていく。


「もってくれ……ι・ブレードッ!」


「お願い……私達と共に、世界を救ってッ!」


晶と木葉はスロットルを強く前に倒したまま、叫び続ける。

ラストブレードは、縦一直線に振り下ろされていき、神の源に立ちはだかる光の巨人を真っ二つに切り裂いた。

その瞬間、周囲一帯は真っ白な輝きに包まれていく。

真っ白な輝きによって視界が潰されようが、晶と木葉はただ願いを乗せたままラストブレードを振り落し続けた。

そして、二人の意識はそのまま途切れてしまった―――













ドサッ、晶は背中に砂のような感触を感じ取った。

何が起こったのか理解できずに、身体を起こそうと両手で地面を触れると、そこにはサラサラとして砂のような感触がする。

コックピットの中のはずなのに、どうして砂が入り込んでいるのか?

足が砂に取られながらも、晶は身体を起こし周囲を見渡す。

そこは、ι・ブレードのコックピットではなかった。

周囲にはただ、延々と砂漠が続くだけ。

夕焼けのように赤く染まった太陽を背に、晶は呆然と立ち尽くしていた。


「……ここは?」


ι・ブレードは確か海の上で戦っていたはず、なのにどうして砂漠の上で晶は倒れていたというのか?

一歩踏み出そうと晶が歩み始めようとすると、ふと身体がふわふわと浮き始めた。


「な、なんだ? か、身体が……浮いている?」


何かに導かれるように、晶は空高く飛び上がっていき、段々と周囲の全貌が明らかになっていく。

……同じ光景が、ただ延々と続いていただけだった。


「晶くんっ!?」


「こ、木葉?」


木葉の声が聞こえると、晶は振り返った。

木葉もどうやら空を飛んでいるらしい、一体何故二人でこんな事が?


「ここ、何処なんだ?」


「わ、わからないの。 私、砂漠で倒れていたと思ったら突然身体が浮いて……そしたら晶くんがそこにいて――」


晶と木葉が話している間にも、二人はどんどん空高く上昇していく。

だが、空から見下ろす光景は不思議な事に何も変わらなかった。

どれだけ遠くから見ても景色は何一つ変わらずに、ただ黄土色の砂が広がり続けるだけ。

段々と風景が遠ざかっていくと――気が付いたら晶と木葉は宇宙にまで辿り着いていた。


「これは――まさかっ!?」


「そんな――」


二人はようやく気が付いた。

自分達が今見ているのは、星の記憶が見せている物だという事に。

二人の目の前には、赤みを帯びた土色の星が映し出されていた。

しかし、周囲には衛星が打ち上げられていることや、ところどころに見える機械仕掛けの建物を目にして

あの変わり果てた姿をした星が『地球』であるという事に気づくのは、そう時間がかからなかった。

すると突如、周囲の光景がグルグルと円を描きながら消されていき、テレビの砂嵐のような光景が周囲へ作り出される。

やがて、砂嵐は新たな映像を作り出そうとグルグルと円を描きながら形成されていく。

……同じだ、ι・ブレードが見せた『危険察知』の映像と。

次に目の前に映されたのは、HAとは違うが人が何らかの兵器を使って戦争を行っている映像だ。

戦艦の主砲のようなビーム兵器を始めに、人同士の戦争により次々と自然が破壊されていく。


「――アッシュベルは、これを見たのか」


「酷い……こんなことって――」


映像に映された人の戦争は激化の一方を辿り、生み出された兵器によって次々と自然が破壊されていく。

気が付けば、人々が作り出した兵器により……地球上の水が全て干上がってしまっていた。


「技術の進歩が招いた悲劇……これが星の語る、全ての真相なのか」


「晶くん、私―――」


本当に、これでよかったのか。

晶は自分の決断に迷いを抱いてしまった。

アッシュベルはこの未来を目の当たりにして、プロジェクト:エターナルを決行した。

しかし、晶はこの映像が単なる警告であり、人類は未来を変える事が出来ると信じた。

父親が人類を信じたように――


「……大丈夫だ、木葉。 星の記憶が見せたように、この星を人の手で終わらせはしない……ッ!

世界に伝えるんだ、この星の未来の事を。 俺達の手で、未来を変えなければならない事を。

俺がι・ブレードで未来を変えてきたように……星が見せた未来だって、俺達の手で変える事が出来るはずだッ!」


『うふふ、中々言うようになりましたねー』


「この、声は――」


突如聞こえてきた懐かしい声に、晶は思わず周囲をキョロキョロと見渡した。

すると、目の前に光が集まり始めて徐々に人の形が作られていく。


「はいはーい、お久しぶりですねー晶くんに木葉ちゃん」


「シラナギさんッ!?」


間違いない、死んだはずのシラナギが晶の目の前に姿を現したのだ。

一体何が起きているのか、晶は混乱してしまった。


「晶くんが星の記憶に飛び込んだと聞いて、思わず助けに来ちゃいましたよ。

だってこのままだと晶くんも木葉ちゃんも、危ないですからねー……本当、無茶をやってくれますね」


「ど、どういう事ですか? 何でシラナギさんが――」


「ここは星の記憶の中です、私のような死人が唯一形を保てる場所でもあるんですよ。

とは言っても、こうして形が保てているのは……二人がここに来てくれたおかげなんですけどね」


まるで死人と感じさせない言動に晶は思わず呆れてしまうが、木葉は戸惑いを隠せなかった。

何処か落ち着かずに晶にギュッとしがみ付いたまま身動くを取らずにいる。


「……ちゃんと、木葉ちゃんを守る事が出来たんですね。 ならば、私はこれ以上思い残す事はないです。

大丈夫です、二人ならきっと幸せになれます。 この私が保証するんですからっ!」


「し、幸せにって……」


『ウヒヒ、みーつけた』


再び二人の目の前には光が集い始め、人の形を形成し始める。

この笑い方……該当する人物は一人しかいない。

トリッドエールのパイロット、フィミアだ。


「私、君に一つだけ謝りたいことがあるの。 だから、わざわざこうして君の所へやってきたの」


「……謝りたい事?」


「あのね、君はちっとも……弱くなかった。 私、君の事を散々弱いだのバカにしてたけど、本当は違う。

君は誰よりも強くて、凄くカッコイイ男だって事がわかったの。 だからね、君達はここで死ぬべき人じゃないよ」


「俺が、弱くない?」


晶はフィミアと交戦した時に、確かに『弱い』と言われた事があった。

だが、確かに技術面は劣っていたし、押されていたのも事実だ。

……面と向かって言われると恥ずかしく感じるが、フィミアはただ笑ってそう告げた。


『晶、ついにここまで辿り着いたな』


「―――親父っ!?」


次に聞こえてきたのは父親の声だった。

聞き間違えるはずのない、もう二度と聞くはずのなかった声。

父は晶の目に前に姿を現した。


「すまなかった、私がもっとしっかりしていれば……お前に責任を押し付けるような真似をしなかったというのに。

だが……よくやってくれた、ここまで来れば後は私達に任せてくれ。 ――必ず、君達を返すと約束しよう」


「親父……俺、正しかったのか?」


「お前はただ自分の正義を貫いただけだ、世界の未来は星の意志によって決まらない、我々は未来を変えるだけの力を持っている。

よくやってくれた、晶。 よくぞ、私の意思を……継いでくれた。 後は、お前達次第……だぞ」


「―――親父」


星の記憶が見せた未来を前にして、晶は戸惑いを隠せなかった。

父の言葉は晶の胸に響いた。

自分が信じた正義を貫いた、だがそこで全てが終わったわけではない。

これからは、人類が過ちを犯さないように、導かなければならないのだ。


『ヘッ、まさかテメェが世界にケンカを売るとはな』


「……俊?」


次に聞こえてきたのは、俊の声だった。

同じように光が集うと、目の前には俊の姿が形成されていく。

お互い何度も何度も激しくぶつかり合ってきたが、最後の最後に俊は晶の事を認めて死んでいった。


「世界相手にここまでやりやがったんだ、今更そんなシケた面すんじゃねぇよ。

テメェは世界を変えた、変えちまった。 だったら後は、星の記憶が見せた未来をぶち壊してやるだけだろ。

テメェの手で壊せよ、何もかも全てぶち壊して……自分の都合のいい未来を作って見せろ」


「壊して……作る、か」


何とも俊らしい発想だと、思わず笑ってしまった。

かつて敵として何度も立ちはだかってきたが、最後の最後にお互いは認め合って分かり合えた。

だから俊も今、こうして憎しみを剥き出しにせずに晶の目の前に現れたのだろう。


『晶、久しぶりだな』


「え――」


次に聞こえてきた声を耳にして、晶は思わず思考を停止させる。

これまで晶の目の前に現れたのは、全て戦いの中で死んでいった者達であった。

通常、こんな現象が起きている事事態信じ難い事で、有り得ない事ではあるのだが

それでも晶は、この声を聞いて驚きを隠せなかった。

光が集い、目の前に人の形が形成されていく。


「あ、ああ―――」


木葉は思わず両手で口を覆って、声を上げた。

二人の目の前に現れたのは、晶の親友でもあり二人の兄貴に近い存在であった竜彦だったのだ。


「二人共、ちょっとでかくなったか? あれから随分経ってるからなぁ、特に晶……お前、変わったな」


「竜彦ッ!?」


「あの時の約束、ちゃんと果たしてくれたんだな。 やっぱりお前に木葉を任せて正解だったぜ」


竜彦はニカッと笑って見せたが、晶はただポカーンと口を開けたままだった。

あまりに予想外すぎた登場に、驚きを隠せていないようだ。


「クラスでビリだと嘆いていたお前が、今じゃ世界を救うヒーローとはなぁ。 けどな、俺はお前が伸びるってわかってたよ。

お前、今まで自分を低く評価しすぎていたんだ。 自分がここまでしか伸びないとか、限界を決めつけちまってたから……学校での成績も伸び悩んでいた。

でも、気づいたんだろ? 俺もやれば出来る、エースになれるって事によ」


「……そうかも、しれない。 俺は確かに、何もできないどうしようもない落ちこぼれだと思い込んでいた。

俺はあの時、お前から木葉の事を任された時……正直、自信が無かった。 でも、俺が守らなきゃいけないと思って、必死で……ずっと必死で戦い続けて――」


「ありがとよ、俺の分までしっかり木葉を守ってくれて。 もう俺に思い残す事はねぇな……後は、お前達を送り返してやらねぇと」


「送り返す?」


先程から竜彦を含め、同じような単語を何度も耳にする。

一体どういう事なのだろうか?

彼らは何かをする為に、この場に集まったというのか?


「ほら、二人で天に向かって手を伸ばしてみろ」


晶は木葉と顔を合わせると、木葉はコクンと頷く。

晶は右腕をあげ、隣に立つ木葉は左腕を天高く伸ばすと……突如、星の記憶がその場に姿を現した。

あれは、晶達が最後まで握っていた星の記憶の欠片だ。


『――晶、よく聞いて』


「母さん……?」


何処からともなく、母親の声が晶の耳に飛び込んできた。

一体何処にいるのだろうときょろきょろと辺りを見渡すが、母親らしき姿はない。

だが、声だけは確実に聞こえていた。


『貴方達はまだ、完全なる死を迎えたわけではない。 だけど、星の記憶の膨大な情報量が一気に流れ出せば、貴方達は確実に死を迎えてしまう』


「……そんな」


母親から告げられて、晶は改めて自分達が危険な状態にあると認識した。


『だから、私達が今……貴方達の代わりに膨大な情報量を受け取ります。 その間に貴方達は、破壊してください』


「受け止める? それに、破壊って……?」


『貴方達が破壊しなければならない者、それは星の記憶……いいえ、エターナルブライトです』


「星の記憶を、破壊するだってっ!?」


「そうです、この世界からエターナルブライトを消し去り……E.B.Bの存在を消す為に、星の記憶の一部を破壊しなければなりません。

それが、アッシュベルが生み出した星の記憶の中にある、エターナルブライトなのです」


母親からそう告げられた途端、周囲の光景が突如変化をし始め、何も映らない真っ暗な空間へとあっという間に切り替わる。

そして、その中心部には禍々しく紫色に輝く巨大な鉱石が眠っていた。


「そう言う事なのです、それじゃ私はもう消えますね。 ウフフ、今度こそ本当のお別れですけど……悲しんじゃダメですよ。

しっかり木葉ちゃんと幸せになってくださいねっ!」


シラナギは笑いながら手を振ると、元の光へと戻り、晶達が持つ星の記憶の中に入り込んでいく。


「ウヒヒ、私も行かなきゃ。 シリアによろしくね、お兄さん」


「晶、世界の未来をお前に……託すぞ」


フィミアと健三も同時に姿を光へ戻し、星の記憶の中に入り込む。

光は徐々に強まっていき、掌からは手が火傷するんじゃないかと思うぐらいの熱さを感じていたが、晶は何とか堪え続ける。


「あばよ、ビリッケツ。 世界なんて、テメェの手でぶち壊してやりな」


「晶、木葉の事……頼んだぞ。 お前になら、出来るよな?」


最後に俊と竜彦が二人同時に姿を光へと戻し、星の記憶の中に入り込んだ。

すると、光が最大限にまで達し……星の記憶から光の刃が生み出された。


「これは、ラストブレード……ッ!?」


「ど、どうして?」


『―――さあ、行きなさい。 貴方達の信じた未来を掴む為に、貴方達がいるべき世界へ……帰る為に』


二人は宙に浮かぶ星の記憶を握りしめ、怪しく紫色に輝き続けるエターナルブライトへ刃を向ける。


「……木葉、準備はいいか?」


「うん、いつでも……大丈夫」


晶は木葉と目を合わせると、木葉は微笑んでくれた。

二人は星の記憶を天高く捧げると、天空を貫くほどの巨大な光の柱が生み出された。


「おい、世界ッ! 俺達人間はアンタが思うほど、落ちぶれちゃいないっ!

だから、だから俺はアンタにそれを証明する為に……必ず生きて帰ってやる、だからアンタは……そこで人類の行く末を見守っていやがれッ!!」


「世界は変わる、私達の手で変えてみせるっ! 貴方の意志一つで、人類を終わらせるわけには、いかないんだからっ!」


誰に対して告げている訳でもない。

世界が人の言葉に耳を貸すのかどうかも分からない。

だけど、晶と木葉は叫んだ。

世界の意志に届けと言わんばかりに、世界へと向けて。


「行けよ、ラストブレードッ!」


「お願い、全てを……終わらせてッ!!」


その名の如く、晶と木葉は最後の剣を力いっぱい振り下ろす。

バギィィィンッ! 激しい金属音と共に、エターナルブライトが砕け散っていく。

すると周囲の光景が段々と歪み始め、グラグラと激しく揺れ始めた。


『……さようなら、愛しの我が息子。 どうか、強く……生きて―――』


バキィンッ! 同時に、二人が握りしめていた星の記憶も砕け散っていった。


「晶くんっ!?」


「大丈夫だ、皆を……俺を信じろッ!」


晶は木葉を強く抱きかかえて、叫んだ。

必ず生きて帰る、皆返してくれると約束してくれたはずだ。

晶は諦めずに信じた。

空間が崩壊していく中、ただじっと動かずに木葉を必死で抱きしめ続ける。

やがて二人の意識は、闇へと落ちて行った。


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