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アマネ独白:透明なる嘆き #誰まほ!

作者: syuno
掲載日:2026/08/09

「へんざい組:【遍在】前後のツーショット」を先に読むことが推奨されます。

 終わってよかった。

 ヒトエちゃんが生きててよかった。

 私は消えなくてよかった。

 ……先輩方、ごめんなさい。


 大変な戦闘だった。まだ3回目の戦闘だった。初めて人の死を目前にした。

 アマネにとっては何も出来ないことを実感させられる戦闘であった。

 しかし、これからは違うのだと奮起するきっかけになった。自身の魔法少女としての姿は失われた。でも、今のアマネの方が役に立てる。

 アマネの魔法は「自身と接触する相手に効果を与えるもの」だ。戦闘中に絶えず触れ続けなければなんの意味も成さない魔法。元のアマネでは足手まといにしかなれなかったが、その場全てに【遍在】する今は違う。その場にいる全体がアマネの魔法の支配下だ。

 それにもう人の視線に怯えることはない。こんなにも、身体も気も軽い。


 ……明日からまた頑張ろう。


 今日は目覚めて診察も終わったヒトエちゃんとお家に帰るのだ。勝手に動いた件についてはさっきもう怒られたし、帰り道では優しくしてくれるだろうか。

 そんなことを考えながら、一足先に変身を解除して外でヒトエを待つ。

 五分もしない内にヒトエが出てくる。


「あ、ヒトエちゃん」

「あれ、アマネまだいない……課の中にいるか分からないのは今後不便ね」

「……え?」


 辺りを見回したヒトエは、その目にアマネを映すことなく壁に寄りかかる。


「ね、ねぇ……ヒトエちゃん、ひとえちゃん。わたしここにいるよ、ねぇ!」


 すぅっと血の気が引ける。

 そんな、自分の姿が見えていないみたいな……。


 違う、大丈夫。だってさっき、医療部でお話しした。ちゃんと声は届いてた。


「返事、してよぅ……私、目の前にいるよぅ」


 声をかけても、肩を揺さぶっても分かってくれない。

 涙が溢れてくる。

 

 ……これが、固有魔法(アトモスフィア)の代償…………?

 高畑先生なら、なにか分かるかな……?


「ひ、ヒトエちゃん、待たせてごめんね。ちょっと、行ってくる、ね」


 魔法少女課に入って、変身して、高畑先生を探す。

 すぐ近くを歩いていた事務員さんにおそるおそる声をかけた。


「あっ、あの」

「えっ、どこ?」

「ご、ごめんなさいぃ、魔法少女アマネですっ。姿が見えないようになっちゃっててっ」

「あ、あぁアマネさん。確かに連絡が来ていたわ。驚いちゃってごめんなさい。どうしたの?」

「高畑先生探してるんですっ」

「それなら向こうに……」

「ありがとうございますっ、し、失礼しますっ」


 最早走る感覚もないが、新たな感覚の中でできる限り先を急ぐ。


 ……よかった、聞こえてた。お話しできた。

 なら、高畑先生も。


「高畑先生っ」

「ん? あぁアマネくんか。もう今日は帰ってよかったんだけど、なにかあったかい?」

「帰ろうとしたら、ヒトエちゃんが私のこと見えてなくてっ、声も聞こえてないみたいで……」


 アマネの訴える異常をすぐさま固有魔法の影響だと看做し、高畑は手元の作業を止めた。


「ふむ、一回落ち着こうか。いくつか話を聞きたいんのだけど、いいかな」

「は、はいっ。あ、でもヒトエちゃん外でずっと私のこと待ってて……」

「じゃあそれは中で待ってもらうよう連絡しようか。あと我々も会議室に行こう」


 内線に連絡を入れた後、移動する。

 扉を閉めて、外から見たら高畑が一人で喋っているだけの空間が出来上がる。

 アマネが部屋の中にいることが確認できると事情聴取が始まった。


「さて、早速だけれど、ヒトエくんとは戦闘後喋っていなかったのかい?」

「いえ、医療部で喋った時は普通に答えてくれました」

「となると変身解除が問題か……? アマネくん、今ここで変身解除してみてもらえるかな」

「はいっ」


 アマネは変身解除して、高畑のすぐ正面に現れる。


「えっと、これでいいですか……?」


 返事がない。


「アマネくん? 嫌なら嫌と言ってくれていいんだが……」

「た、高畑先生……?」

「もしかしてもう変身解除済み、か。アマネくん、何度も悪いんだがもう一度変身してくれ」


「へ、変身しました、あのっき、聞こえてますか……?」

「あぁ聞こえている。なるほど、変身解除状態では認識出来ない、ということか」

「そ、んな。」

「一度対策を考えよう。申し訳ないんだが、今日は魔法少女課に泊まっていってもらっていいかな? 親御さんとヒトエくんにはこちらから伝えておこう」

「は、いぃ……。あのっ変身した時に話せるなら、ヒトエちゃんとは喋れません、か?」

「ふむ、それは別に問題ないだろう。下の部屋にいるだろうから呼んでこよう。アマネくんはここで待っていてくれるかな」

「はい」


 誰もいない部屋。自分のいる一点もなく、ただその部屋全体が知覚できる。

 もうすぐここにヒトエが来る。


 ……大丈夫。だいじょうぶ。今度はきっと応えてくれる。お話しはできるはず。

 だいじょうぶ。


 あんなに軽かった心が、これ以上ないくらいに重い。

 こわい。不安だ。誰かに縋っていたい。

 ヒトエの腕に抱きつけたらどんなに安心できるだろうか。



 あぁそうだった。

 もうそんなこともできないんだったか。



 願ったり叶ったりな代償だなんて、そんな甘い話があるわけがなかったね。


〇情報更新

固有魔法:【八面玲瓏(アトモスフィア)

効果:自身の基本形態を永続的に【遍在】状態とする。

代償:コスト無しに実体化できない。また、変身解除時、誰にもその姿・声・行動を認識されない。

特記:魔法少女アマネが発動した固有魔法。当該魔法少女は現在も【遍在】状態で活動中。変身解除時の代償に関して、バディの魔法少女ヒトエから情報あり。本人の実体から離れた物(涙等を含む)は認識可能になることが確認済み。

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