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9 話
悪夢を見ていた。――僕は本当は男では無く女だったという夢を。
「んん――」あれ、いつもより感覚が違う。妙に感覚が敏感というか。
「起きたのか、奈織?」
うん、と短く答えて僕は起き上がろうとするが俊に止められる。
「まだ身体を動かさない方がいい」
「え、なんで?」そこで僕は声の異常と身体の異変に気付いた。
あれは夢じゃなかったの?
「――だ、嘘だ嘘だ!」
「奈織落ち着け! 魔力が暴走するぞ」
「だって、この姿を見てよっ! 祐樹は落ち着いてられるっていうの!?」
「落ち着いてられるさ――」祐樹の言葉がなぜか威圧的に感じた。
「……わかった」
普段は感じることがないだろう祐樹の変化に僕は従うことにした。
そして沈黙の空気が流れる。
「奈織、この事はシルヴィには黙っておこう」
この沈黙を破ったのは祐樹だった。
「そうだね。でも時間稼ぎにしかならないと思うよ」
「俺が考えておくから奈織は寝ろ」
「うん、そうする」
身体が睡眠を要求していたせいかすぐに眠気が襲って眠ってしまった。