Ep,6 秘密
すいません!手違いで、EP6のところをEP5と書いていました!
混乱された方もいると思います、、
すいませんでした!
「……私の、異能は……」
レイの言葉に、僕はごくりと唾を飲んだ。
いつも気怠げな彼女が、ほんの少しだけ真剣な表情をしているように見えたからだ。
「……聴覚の異常なまでの発達」
「聴覚の異常なまでの発達!?」
思わず大きな声が出た。図書室なのに。でも、無理もないだろう。
幸いにも周りに人はいなかったから騒がれることはなかった。
レイは僕の反応を見て、うんざりしたようにため息をついた。
「普通の人よりも耳がよく聞こえるってだけ…」
「でも、異常なまでの、なんだろ?」
「……うん、だから普通の聴覚発達の上位互換だと思えばいい」
レイは淡々と説明する。
「いつもはどうしてるんだ?、流石にずっと異能を使ってるわけじゃないだろ?」
「うん…この異能は、人の息遣い、集中すれば心音まで鮮明に聞こえるようになる、だけどうるさい」
「…だから日常生活では使用してない」
「なんで……そんな、すごい異能を、隠してたんだ?」
僕が尋ねると、レイは再び視線を伏せた。
「……騒がれるのが、嫌だから」
簡潔な答えだった。確かに、もし彼女の異能が知れ渡ったら、周りは騒がしくなるだろう。
特に、異能向上高等学校のような場所では、な。
「…陽一の異能も教えて」
レイが言った。少しだけ、期待しているような声色だった。
「僕の異能はな……」
僕は少し間を置いた。
レイの猫耳がぴくりと動くのを感じながら、口を開く。
「存在希薄化」
レイは首を傾げた。
意味が分からなかったのだろう。
「存在希薄化?」
「ああ。簡単に言うと、僕の存在感を薄くする異能だ」
僕はそう言って、少しだけ異能を発動させてみた。すると、レイの目が少しだけ見開かれる。
「……視認しづらくなった」
彼女はぽつりと呟いた。
僕は異能を解除し、元の状態に戻る。
「だろ? 完全に透明になったり、消えたりするわけじゃない。でも、人の意識から外れやすくなる。大勢の中にいても、まるで初めからいなかったかのように、見過ごされることが多いんだ」
入学式の時も、誰も僕を止めなかったのは、この異能が働いていたからかもしれない。
もちろん、合気道で捌いたのは僕の力だけど。
「……だから、あの時……」
レイは何かを納得したように頷いた。
僕が男子生徒に絡まれた彼女を助けに行った時、なぜ僕が目立たなかったのか、彼女には不思議だったのかもしれない。
「この異能のおかげで、今まで目立たずに生きてこれたんだ」
僕は少し自嘲気味に笑った。
「…じゃあ陽一はその異能を向上させたいの?」
レイが僕の顔をじっと見つめた。
その黒い瞳の奥に、強い探究心のようなものが宿っているように見えた。
「まあね。もっと自分の存在感を消せるようになったら、色々と便利だろうし」
僕の言葉に、レイは何も言わなかった。
ただ、僕の顔をじっと見つめている。
その視線に、僕は居心地の悪さを感じて、視線を逸らした。