表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エンゲブラ的短編集

オールドヒューマン

作者: エンゲブラ

「これだからオールドヒューマンは使えないな」


ミス、ほんの些細なミス。

なのに、この言われようはいったい何だ?



オールドヒューマン。

それはインプラントなしの「プレーンな人間」の総称。


現代人の99%は、すでに脳に直接デバイスをインプラントし、常に最適な答えと命令を、常に最速で実行することを基本理念として生きている。


私は「異物」を体内に入れることに対する過度の拒絶反応を生来有しており、この時代にして、インターネット(=世界秩序)には「手持ち型端末」を使って接続することしか出来ない、いわゆる「オールドヒューマン」である。


障害者等級で準1級に当たる「重度障害者枠」による雇用。

会社は政府からの補助金と企業イメージ、費用対効果などを天秤にかけ、「ギリギリ」私を雇用してくれているという。


自分で言うのもなんだが、私は決して馬鹿ではない。

むしろ()()()()()()()()()()()()()では、この会社に勤めている誰よりも優秀な存在でもある。しかし、そんなことは、()()()()()()()()()全くもって無意味なことである。


私を「オールドヒューマン」呼ばわりしてくる人間たちに、()()()()()()()ことは私自身も理解はしている。彼らは脳に直接デバイスをインプラントすることにより、感情に関連する「脳内分泌物の調整」すら完璧に制御されており、ごく客観的な判断から、私を「オールドヒューマン」と呼んでいるに過ぎないのであるから。


―― しかし、である。

それが「正しい判断」であるからといって、そこに「何の救いもない」ことにすら、疑いすら持てない彼らが、果たして本当に「人間として正しい」と言えるのであろうか?



「おいおい、ありえないって!朝からずっと<接続エラー>になって、オフラインのまんまなんだけど、俺!」


「私もよ、こんなの生まれて初めてなんだけど、いったいどうしろっていうのよ!」


朝から、街中の至る所で悲鳴が上がっている。

なんでも、この世界における様々な秩序を一手に担う指令型AI<ニューオーダー>による「社会実験」の影響のようである。


「現代の人間は()()()()()()()で果たして一体どの程度、自律的に判断・行動できるのか?」という()()()()をニューオーダーが表明し、世界中の人々のインターネットへのアクセスにいきなり制限をかけてしまったのである。


今や物心がつく頃には、脳へのデバイスのインプラントを終わらせる時代であり、情操教育からの一切すべてをAIに委ね、人々は生きている。そんな彼らに対し、()()()()()()()()()()()インターネットとの断絶は、死刑宣告にも近い、実験の宣言にも聞こえた。


2106年現在、人類の大半は()()()()思考することを放棄し、オフライン時の平均IQポイントは2000年代初頭に比べ、実に30ポイント超も落ちているとされる。


ちなみに2000年ベースで算出した場合、私のIQポイントはちょうど100に相当し、これはオフライン時の現行人類の中では、上位1%に相当する数字である。


ニューオーダーによる実験予定期間は、ちょうど100年だという。

ちょうど100年後には「文明が発生し始めた時代」に相当する所にまで、人類の()()()()()()()()()ことになるという予測も既に出ている。

この予測は、この後に行われる文明装置の完全破棄ともセットのことなのだそうだが、果たしてこの後「オフライン人間」たちは、いったいどのようにして生きていくこととなるのだろうか?


まずは「最悪の30年」が待ち受けているという予測も告知されている。

果たして……。



現代人をいきなり完全オフラインにしても、まあまあ同じことが起り得そうな話でもあるか、これ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ