魔法使いと神子6
「凄い雨だな」
粉にした薬草を小瓶に入れて、戸棚に片付ける。
屋根を叩きつける音が耳にうるさい、と集中が途切れた今になって思う。こんな日に外に出る気にはならない。というよりも、こんな雨の中、箒で空を飛ぶなど自殺行為だ。
だから今日は神子の元を訪れず、減ってきた薬草の補充をしていた。母に教わった知識。怪我であれ病気であれ、魔法で治せる魔法使いである自分には、本来必要ないもの。
眉をしかめる。
思い出した記憶にため息をついて、使った道具を片付けようと道具に手を伸ばす。
が。
「…っ」
頭に割り込んできた映像。
準備もなく突然のことだったせいか、頭痛がして額を押さえる。
雨だ。
激しい雨が降っている。
「な、に」
ばしゃばしゃと音。
荒い息遣い。
目を強く強く瞑る。
治まってきた頭痛。
『ーーーーー!!』
押し殺した悲鳴。
その主が汚れるのも構わず土の上に崩れるようにして膝をついた。
「!」
目を開ける。
あれは、と唇が動いて。
早く早くと焦る気を感じる。
今の映像を見せたものの気。
「どうしてそんな状態になっている!!」
叫んでも答えは返らない。
男はローブを羽織って箒を手に取る。そして激しい雨の中、乱暴に開けたドアから躊躇い一つなく外へと飛び出した。