表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/46

国王と神子5



何かが可笑しい、と思った。

馴染みのない香りがなずなの部屋でした。

けれどなずなは何のことだと言わんばかりに首を傾げた。だから気のせいかと思ったのだけれど。


少しの違和感。それをなずなから感じた。

それが一体何なのかは分からない。けれど確かに感じた。


なずなが微笑む。

扉を開けた時は困惑していたようであったのに。いつもならば浮かべる微笑も浮かべなかったというのに。

なのにいつものように微笑んで。いつものようにこちらを気遣って。いつものように。


それもこれも香りに気づいた時からだ。それからなずなはいつも通りになった。

始めに見せた困惑を綺麗に消して。


「何かを、誤魔化そうとした?」


いや、煙に巻こうとした。レガートの意識を逸らせようとした。何から?…香りから?

何故。どうして。あの香りに一体何の意味があるというのか。

気になるのは胸に痛みが走ったからだ。なずながレガートに何かを隠そうとした。それに傷ついたからだ。

…勝手だけれど。


ふ、と回廊から庭を見る。足を止める気などなかった。なかったけれど止まった。

見えるのはなずなだ。腕に抱きついているのはなずなの侍女。そしてまるで泣いているように腕で目をこすっている男。着ている制服は国王親衛隊のもの。

なずなが申し訳なさそうに笑って、男の頭を撫でた。侍女が腕を伸ばして男の頬をつねった。男が何かを叫んで、なずなと侍女が声を上げて笑う。


その姿に目を見開く。

あんなふうに笑うなずなは久しぶりに見る。レガートがまだなずなを裏切る前によく見た姿。

それに胸がざわついた。


なずなが笑う。

以前のように笑う。

それが意味することはなんだろう。

その切欠はなんだったのだろう。




胸が、ざわつく。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ