国王と神子2
すまない、と言われた。
すまない、と。
いいよ、なんて言ってあげられなかった。
だって好きだったから。信じてたから。
でもそれ以上に思ったことは、
これから私にどうしろって言うの。
だった。
無理やり召喚されて、神子だと呼ばれて。
初めは嫌だった。できるわけないと思った。勝手に決めないでと。
けれどだんだんと周りが見えてくる。
ああ、こんなに求められてる。縋りつかれている。神子として呼ばれた私にしかできないことなのだ。
なら仕方がない。見捨てられなかったから。そしてここを放り出されたら行くあてなんてどこにもなかったから。
皆を助けたいと思ったのも本当。
けれど自分の保身のためであったのも本当。
そうして辛くて苦しい戦いを乗り越えて。
元の世界に帰れない状態で途方に暮れる前に、レガートに結婚を申し込まれて。
ほっと、した。
好きな人とこれからも一緒にいられるから。
そして、帰る場所ができたから。
そんな気持ちでいた罰だろうか。レガートに他に好きな人ができたのは。
すまない、と苦しそうに言われた。
すまない、と辛そうに言われた。
強く強く握りしめられた拳は、一体どれほどの罪悪感と戦っていたのだろうか。
ごめんなさい、と泣いた。
ごめんなさい、と。
一人で泣いた。泣いて、泣いて。
なのに、
勝手に人を召喚したくせに!勝手に神子にしたくせに!なのに用が終わったらさようなら?ふざけないで!!
そう、憤った。
最低。
最低。
最低。
感情はぐちゃぐちゃで。
いろいろなものを責めた。
自分を、レガートを、民を、世界を。何でも責めた。
そして全部出し切って落ち着いた頃、宰相が話をしたいと言ってきた。
話の内容はレガートとのこと。放心状態の神子に宰相は痛ましそうに、けれど言った。
「神子は我が国の平和の象徴です。そして陛下の最愛の方。そんな民を裏切るわけにはいきません」
だから、と。
だからどうか、と。
この城にお留まりください、と。
それはこのまま王妃であれと。たとえ形だけであったとしても、王妃となった神子として民の前に立てと。そう言っていた。
その代わり、居場所はここに。
笑った。
泣きたいのに、笑った。
大好きな人。
レガートも、そして目の前の宰相も。他にもたくさんの大好きな人がこの国にはいる。
でも、レガートは他に好きな人ができて。宰相は国のために城に留まらせようとして。民はそんなこと知らずに神子様と、王妃様と呼んで。
それら全てを我慢する代わりに、居場所をなくさずにすんだ。
そんな状況に、笑うしかなかったのだ。