魔法使いと神子3
笑う。
笑う。
笑うしかない。
ぽたぽたと絨毯に落ちる涙。
強く強く握りしめた両手。
なのに発する声は笑い声。
「私が、神子だか、ら?」
いなくなられては困るから。
そして国王との現状を民に知られては困るから。
「だから、なの?」
辛そうに謝罪した宰相。
彼も辛かったのだろう。こんなことしたくなかったのだろう。
けれど彼は宰相だ。国を守る義務がある。国を治める国王を守り支える役目がある。
だからどうした!!
ぶんっと拳を振り上げて床に叩きつける。
裏切られた、という気持ちが膨れ上がる。
確かに打算はあったのだ。どこにも帰れないから、もうここしかないから、だからそれに縋りついたのは自分だ。
けれど信じていた。一緒に戦った彼らを。彼らを責めずに受け入れるほどには、彼らを好きだった。なのに彼らは信じていなかったのだ。なずなを信じていなかった。
どこかに行かれないように。
誰かに現状を洩らさないように。
彼らはなずなを疑った。
しゃらしゃらと鳴る腕輪。
こんなもの、と掴んで腕から外そうとする。
こんなもの、大事に持っていた自分の何て愚かなこと!!
なのにそれを阻まれた。
顔を上げれば男。なずなに彼らの裏切りを教えた男。
ああ、この男さえこなければ自分は何も知らないでいられたのに。
睨みつければ、頭を撫でられた。
目を細めて、ああ、だからかと男は呟いた。
「だからお前を助けてくれと、俺に頼んだのか」