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 就職先の鉄工所の業務内容は鋼材の切断・溶接・磨き・塗装等それなりに手広くやっているようで、いろいろな技術を身に付けることが出来そうであった。

 元の世界の鍛冶屋に通じるところがあるり、元の世界に戻ることが出来るのであればここでの経験を活かし冒険者をリタイヤした後のセカンドライフとしてそういうのもありだな、、、などと考えてしまう。

 まだまだ見習いの立場であり先輩職人に指導を受けながら簡単な作業を繰り返すだけであったがそんな状況でも昨日より今日、今日より明日と少しずつではあるが出来上がりの精度が上がっていくことにある種の喜びを覚えつつあった。

 作業を教えてくれる先輩達も様々で、手取り足取り教えてくれる人もいれば技は見て盗めというようなタイプの人もいる。主に磨き作業を担当している細川は後者であり無口で特に何かを教えてくれる訳ではないのだが、決して冷たい訳ではなくケヴィンの苦手とする工程をさりげなく何度も繰り返しやってみせてくれる。

 皆、優しい人ばかりで訳も分からず異世界へと足を踏み入れてしまったケヴィンにとってこの鉄工所はとても居心地が良い場所となり始めていた。


 細川と一緒に作業したある日の晩、寮の部屋でふとレオンハートのことを思い出した。元の世界で駆け出しの冒険者であった時によく一緒に行動を共にしてくれ、冒険のいろはを叩き込んでくれた人物である。多くを語らないがいつも陰ながらサポートをしてくれ戦闘、探索、野営の仕方に至るまで自ら実践し示してくれた。ケヴィンはそれをまねて必死に彼についていった。ケヴィンが冒険者として大成出来たのは彼のおかげと言っても過言ではない。

 ケヴィンが独り立ちしてからはそれぞれ他の仲間と冒険に出かけることが多くなり疎遠となっていたが、レオンハートは既に一流の冒険者として世間に認知されておりギルドなどでも活躍を耳にすることが出来ていた。ある時期までは。

 一年ほどが経ちケヴィン達もいくつかのダンジョンを攻略し少しずつ名を上げてきた頃になると彼の名前をパタリと聞くことがなくなっていた。突然に冒険に繰り出すことがなくなったため当時は引退して辺境で自給自足の生活を行っているという噂もながれていたくらいであった。

 

 まさか、彼もこちらの世界に転生されたのか?

 そんな考えがケヴィンの頭をよぎる。多くはないが転生されてくる人も他にいると三浦が言っていた。レオンハートが転生されているかどうかは別として、他の転生者達と接触してみるのも何かしらの前進になるかもしれない。戻る方法を模索したいのだが何から手を付けるべきか、雲を掴むような気分でいたところに一筋の光が差したように思えた。

 すぐに三浦に電話を掛けようかとも思ったが、唐突にその話を切り出すのもいかがなものかと思いとどまるケヴィンであった。

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