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移動手段

「まだ車には慣れませんか?」

 病院へ向かうタクシーの手すりにしがみつくようにしている、ケヴィンに向かって三浦が問いかける。

「道が綺麗に舗装されていて揺れは少ないですけど、、、」


 こちらの世界に来て初めて病院から出た時に受けた衝撃は今でも忘れることが出来ない。病院の入り口に待機していた自動車と呼ばれる、馬なしで動く馬車?はとても静かにそして速く走る。地面がやたらと近くにあるためより一層そう感じられるのかも知れない。

 特別な移動手段ではないようで大小様々な自動車がルールに従って道路に溢れかえっている。更にルールを学び、試験に合格すれば誰でもその乗り物を操ることだ出来るというのだ。(特別なスキル不要)

 退院の日以降、何度か利用はしたのだがケヴィンはどうしても馴染むことが出来ず、すれ違う対向車にすら恐怖を感じてしまう。炎を吐くドラゴンと対峙した時ですら感じたことのない感情である。どうやっても勝てる気がしない。

 最初の利用時に三浦にそのことを伝えると、「間違っても戦いを挑まないでくださいね、勝ち目はありませんから。」と一蹴された。


「シートベルトをしてますし、そんなに固まっていたら疲れてしまいますよ。」

「そもそもこんな金属の塊が高速で走っていることが信じられなくて。」

「大丈夫ですって、ほら、向こうには金属の塊が空を飛んでる位ですから。」

 三浦の指さす方向を見ると研修で見た飛行機という乗物が空を滑るように飛んでいた。数百人の人を乗せた金属の塊が空を飛び、大陸を渡ることが出来る、半分信じていなかったが実際に目にすると信じるしかない。

 これらの移動手段があれば数日掛けて馬車で次の街に向かったり、数か月掛けて隣の大陸まで船旅をする必要もなく冒険の進度も格段に上がっていただろうなと思わずにはいられない。

「まぁ、これも慣れですから。生活していくにはやはり交通機関を利用する必要も出てくるでしょうし、近々バスも利用してみましょうか。」

 あの大きい奴か、出来れば利用しないで済むような生活を送りたいと切に願う。


 そうこうしているうちにタクシーはケヴィンが目を覚ました病院へと到着し、苦痛から解放されるため急ぎ外へと飛び出す。目の前には元の世界では考えられない高さの無機質な建物がそびえ立ち、平らに整備された無機質な道路が続いている。

 この世界は技術が進んでいて確かに生活しやすいかもしれない。だが人々がその生活を得るために自然を無機質なものに置き換えてしまい、手を加えていない自然に触れるためにわざわざ交通機関を使い遠方まで赴いたり、無機質な所に緑化という名目で木々を植えるという行為に違和感を覚えないでもない。

 移動手段含めいろいろな不便さはあるが、元いた世界の方が生物として生きているという実感を得られていたように思える。そんなことを考えより一層元の世界への思いが募るケヴィンであった。

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