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オリエンテーション

 数日後、無事に病院から退院しそこからは研修施設での教育の日々となった。その日、その日により異なる講師から座学半分・実習半分でこの世界で生きて行くために必要な膨大な知識が叩き込まれていく。

 一般的な生活様式から服装、通貨、娯楽とジャンルも多岐にわたる。

 一番最初に転生された者は右も左も分からずにこの世界に放り込まれさぞ苦労したに違いない。大変ではあるが事前にそれらの情報が入手出来た分、自分はまだ幸せな方だと改めて思えてくる。


 そんな研修生活の中でケヴィンの関心を引いたのが電化製品というアイテム達であった。この世界には魔法がない、その代わりに科学という技術を使い様々な道具を作りだし電気というエネルギーでそれらを動かすことにより便利な生活を送れるようにしているらしい。

 風属性魔法が使えなくてもボタン一つで冷風から温風まで自在に吐き出せるアイテム、氷属性魔法が使えなくて水さえ入れておけば氷が出来るアイテム、炎すら出ていないのに鍋を温められるアイテム、、、、しかも魔力枯渇の心配はなく昼夜問わずに使用が出来る。

 魔道具という存在が元の世界にはあったが、それらは効率良く魔物を討伐出来るような武器であったり、相手から姿が見えなくなるような法衣であったりとベクトル自体が異なってる。そのため一概には言えないが、やはり性能としては電化製品に軍配が上がるだろう。


 こちらの世界の技術に圧倒されつつも研修は順調に進んでいった。一週間が過ぎたタイミングで三浦が再びケヴィンの元を訪ねて来た。退院の時以来の再開となる。

「どうですか、新しい生活は?」

「まぁ、大分要領が分かってきた、、、、きました。」

 冒険者はなめられないように基本的に敬語等は使用しない、その習慣は中々抜けるものではなく、度々注意をうけてしまう。

「焦らず、じっくりいきましょう。でも講師の皆さん久世さんは飲み込みが早いと褒めていましたよ。一流の冒険者は何をやっても出来るもんだんですね。」

「、、、、、あぁ、どうも。」

 久世=自分ということに未だに慣れず、都度反応が遅れる。

「今日、こちらに伺ったのはこれをお渡ししようと思いまして。」

 そう言うと三浦は小型の箱状の物を取り出し、ケヴィンに手渡した。

「携帯電話です。これから研修施設から出ることもあるでしょうし、研修後には必要になるかと思いますので持っていてください。IDカード同様常に持ち歩いてくださいね。」

 離れていても、お互いの番号が分かれば会話をすることが出来るアイテムの様だ。

「私の番号は登録してありますので何か困ったこととかありましたら、いつでも掛けて来てくださいね。出来れば真夜中とかは避けてもらいたいですが。」

 一通りの操作説明をし、しばらく雑談をした後そう言い残し三浦は帰って行った。


 三浦が帰ってから、研修施設内にある宿泊施設の部屋に戻りうとうとしていると先ほど渡された携帯電話が鳴りだした。着信時の対応は教わっているがいざ手元でそれが鳴ると焦ってしまう。慌てふためきながらようやく通話ボタンを押すとその小型の箱から三浦の声が聞こえてきた。

「すいません、さっき伝え忘れてしまいました。明日午前中の研修はなしで、退院後の定期健診ありますので9時位にまたそちらに伺いますね。」

「、、、、、、、、」

「久世さん?聞こえてますか?」

「は、はい、分かりました。」

「あぁ、良かった。ではまた明日。」

 一応辺りを見て回ったが当然、三浦は居ない。会話が出来るとは聞いてはいたが、本当に出来るとは、、、、電話が切れたあともドキドキが収まらないケヴィンは、これからもしばらくは驚きの日々が続くのであろうなと思わずにはいられなかった。

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