君の名は
それから続けられた三浦の説明を簡単にまとめると以下の様な内容であった。
・ケヴィンのような異世界からの転生者は、多くはないが一定数この世界に存在している。
・元の世界に戻る方法はまだ発見されていない。
・魔物の類は存在しない。
・経験値やレベルと言った概念も当然ない。
・転生時の唯一の恩恵が「言語認識能力」で意思の疎通には困らない。
「急にこちらの世界で普通に生活してくださいという訳にも行かないかと思いますので退院したら、とりあえず1か月ほど研修施設でオリエンテーション的なものを実施しましょう。
こちらの世界で生きて行く上で必要な情報を身に付けられるように準備をしておきますので、とりあえずは、まずしっかりと体調を整えてください。」
現時点で元の世界に戻る術が分からないのであれば、とりあえずは従うしかないと半ば諦めムードのケヴィンであった。
「元々は魔法剣士だったんだが、魔法が存在しないとなると、、、、下級職の剣士とかになってしまうのか?」
「う~ん、ジョブというやつですかね、残念ながらそういったジョブつまりは職業はこちらにはないんですよね、先ほどお伝えしたように魔物等がいませんので。
いろいろな職業ありますが、ケヴィンさんのような転生者はいきなり自分で職を探すというのは難しいでしょうから、オリエンテーション後我々がいくつか受け入れてくれるところを斡旋させてもらいますね。」
「ギルドに行く、という訳でもなさそうだな。」
「そうですね、誰でもギルドに行って冒険者登録すれば依頼をこなして生活出来ます、という感じではなく個人の情報がしっかりと管理されている社会ですので。
ちなみに個人認証が取れないとこちらで生きて行くのは大変ですのでそれもこちらで準備させてもらいました。これが個人IDカードですので肌身離さずお持ちくださいね。」
三浦から一枚のカードが手渡された。そこには金髪であったケヴィンとは似ても似つかない黒髪の男の顔が記載されていた。
「ケヴィンさん、こちらの世界では久世新平という人間として生活して頂きます。」
今後の段取りを簡単に説明し三浦がその場を去った後、女性(職業:看護師)に付き添ってもらった行った洗面所の鏡にはIDカードに載っているのと同じ顔が映しだされていた。
久世新平、性別男、年齢26歳、無職、それがこれからこの世界を生きて行くケヴィンの新しい肩書であった。
一人ベッドに戻りぼそっとつぶやく。
「ステータスオープン」
、、、、、、、何も出てこない。
「ははは、本当だ。」
元々いた世界であれば職業含め自分の現在の状況が目の前に表示されていたのに、今は手元にある一枚のカードを見る以外確認するすべがないようだ。
まだまだ現実を受け入れられないケヴィンがそこにいた。