呪い
体が重い、身動きが取れない。。。。
朝目を覚ましたが全身の気だるさにより布団から出ることが出来ない。
遠い昔感じたことがあるこの感覚、死霊の森でリッチにかけられたのと同様の『呪い』だ。
その時はパーティで唯一呪いを免れたムサシが3人を教会に担ぎ込んでくれ事なきを得たが、今回はそうもいかない。
このままではとても職場まで辿り着くことが出来そうにない、呪いを解くアイテムなど所持している訳もなく悩んだ末に辿り着いた結論がこの世界で頼ることが出来る存在である三浦への連絡であった。気力を振り絞ってなんとか電話を掛けた。
「三浦さん、、、、もう駄目だ、俺を教会に、、、、。」
「あぁ、風邪ですね。今流行ってますからねぇ」
駆け付けた三浦に連れられて来た病院で医師に告げられた状態異常は『風邪』というものであった。
「熱も大分出ているので、解熱剤も出しておきますので2、3日安静にしていてください。」
診察はあっけないくらい簡単に終わり薬局にて薬を受け取った後に三浦と共にケヴィンの部屋へと戻って来た。
「もう駄目だなんて電話が来たのでびっくりしましたよ。鉄工所の方には私から連絡入れておきました、次回からはご自分でお願いしますね。」
処方された薬を飲み幾分か体は楽になってきた、どうにもならないと思われる状態異常がこちらの世界ではごく一般的に発生し、しかも特殊なアイテムを使わなくても比較的容易に回復させることが出来るようである。
「社長さんが言ってました、ここ最近納期に追われてかなり残業もしてもらっていたし、昨日は帰り傘も差さずに大雨の中を帰って行ったので今までの疲れもあって体調を崩してしまったんだろうと。納品も無事に済んだのでお医者様も言ってた通りゆっくり休んでくださいとのことです。」
三浦はこれまた親切に、簡単に準備が出来る数日分の食糧を買いそろえておいてくれていた。
「それと、研修ではそこまで詳しくやっていなかったかと思いますが教会は特定の宗教の施設になりますので、身体に異常があった場合はやはり病院に行くことをお勧めします。
長居しても久世さんがお疲れになるでしょうから、そろそろお暇しますね。」
いつもながら、何かと事細かに対応してくれる三浦だった。
このタイミングで言うべきがどうか迷ったケヴィンであったが、次にいつ会うかも分からなかったので以前思いついたことを切り出した。
「三浦さん、今日はありがとうございました。こんな時になんなのですが、、、
もし可能であれば私と同様にこちらの世界に転生されて来た人がいるのなら会って話がしたいです。」
「他の転生者の方と?」
「はい、難しいでしょうか?」
少し驚いた様子だった三浦はしばらく考え込んでいるようであった。
「私が現在担当しているのは久世さんだけなので他の担当官に打診はしてみます。いままでに前例がないのでちょっとお時間頂くことになるかと思います。その間にまず体調を万全にしておいてくださいね。」
回答までの時間が気にかかったがいつも通りの笑顔で三浦はケヴィンの部屋を後にした。
その後、状態異常のせいなのか飲んだ薬のせいなのか猛烈な眠気に襲われ夢乃世界へと落ちていった。