プロローグ
プロローグ
「ニーナ、ムサシの傷を治療してやってくれ、その間、俺が奴の気を引くから隙をみてマリンは強力な一発を食らわせてやってくれ。」
数々のダンジョンを踏破してきた魔法剣士ケヴィンは、それまで何度も苦楽を共にしてきた仲間たちと北の大地にある常闇の迷宮最深部で、迷宮の主と激闘を繰り広げていた。
今まで多くの冒険者達が挑み、誰一人として地下10階以降の攻略が出来ていなかった常闇の迷宮の最深部18階まで歩みを進めることは出来たが、最深部に鎮座していた主の力はあまりにも強力であった。パーティの体力・魔力は徐々に削られていく。
「すまん、俺はどうやらここまでのようだ。始まりの丘でまた会おう。」
まず最初に狂戦士のムサシが最初に力尽きた。常に先頭に立ち、敵の直接攻撃・魔法攻撃を引き受けていたのだから当然の結果と言って良いだろう。一同感謝の念でムサシを見送った。
しかし感傷に浸っている訳にもいかず主との戦闘は無慈悲に継続されていく。
どれくらいの時間がたったであろう、全てを飲み込むような闇に包まれた迷宮全体に爆音と鈍い金属音が鳴り響き続けている。
時間にしたらわずかなのかも知れない、気を抜くことが出来ない緊張感から残されたパーティには永遠にも思えるような長さに感じられた。そんな中ついに一つの綻びから回復魔法が使える聖女ニーナも命を落とすこととなった。
そうなってしまうと体力を回復することも、傷を癒すこともできない。残された魔法剣士と魔法使いにも確実に死が近づいて来ている。
「マリン、時間を稼いでくれ!俺の残された全ての魔力を剣に乗せて奴にお見舞いしてやる!」
「任せて、でも私の魔力も枯渇寸前だからそんなに持たないかもよ。なるべく早くしてね。」
非力な魔法使いが何の護衛もないまま連続して魔法を繰り出す中、ケヴィンは残された魔力をすべて剣に流し込む。例え敵を打ち破ったとしても迷宮から生還ことは難しいだろう、それでも散っていった仲間たちのためにも、二人ここで引き下がる訳にはいかない。
準備は整った。全身に付いた傷の痛みに耐え、疲労によりいつもの軽々と振っている剣も構えているのが精一杯な状態ではあるが残された気力を振り絞り敵めがけて一直線に突進する。
次の瞬間今まで一人で応戦していた魔法使いが壁面に叩きつけられる光景が目に飛び込んで来たが、折角作ってくれた最後のチャンスを無駄にすることになってしまうため救出には向かえない。
「くらえ!!」
ケヴィンはありったけの力で主の頭めがけて剣を振り下ろした。