Episode 5 四天王フライドポテト
道中、女神様は馬車に揺られて気持ち悪くなっていた。
休憩タイム。
「ハー、スッキリした」
「はい、お水です、お口がゲロ臭いので、濯いでください」
「タテテちゃん、もっとオブラートに包んで、私、これでも女だよ」
「お前のワガママにはパーティー全員が迷惑してるんだよ、自重しろ」
「…そんなことより重要なお話があります、昨夜私のお金が盗まれました、犯人はこのパーティーメンバーの中にいます」
ごくり
「それは俺だ、少しばかり持ち合わせが無かったから、奪った」
「少しばかりじゃねーよ! 旅費の1/3だよ、こんなこともあろうかと本財布、予備の財布、予備予備の財布、分けといて良かったよ、あんたなんて最初から信用してないんだよ!」
「当然だな、俺もだ、次は予備の財布を貰い受ける!」
「はぁあああー、これは私の酒代だから渡すわけないだろー!」
そうこうしてる間に砦の前に到着!
この砦には数多くの魔物が巣くっているらしい、それを魔王軍四天王が指揮している、そんな情報もあってかここにはそこそこのパーティーが待機していた。
そんな中、一人の男が砦から出てきた、捕まってた食糧だろうか?
「助けてくだせぇー、食われてしまいやす」
この言葉を切っ掛けとして、中からぞろぞろと魔物が這い出してくる。
臨戦態勢を取っていたパーティーは迎撃を開始した。
「私も回復術師として皆の支援を…」
「いや、それはいらんから、お前の存在意義は俺がスキル『肩代わり』を取得した事で無くなった、もうお払い箱だ」
「はえぇぇぇー!? 分かった! 攻撃、攻撃をするから、パーティーにいさせてください! セイントアロー セイントアロー! セイントアロー!!」
「人の3倍働け、そしたら、女神として認めてやらなくもない!」
「アイアイサー!」
最後の勇者が全員へ『肩代わり』のスキルを発動させながら、他のパーティーと共に砦から飛び出してきた魔物達を駆逐した。
最初に助けを求めた男が見計らって声をあげる。
「俺が四天王フライドポテトだ、ハッハッハー、引っ掛かったな、あれだけの魔物の軍勢だ、もはやお前達もボロボロだろう…」
「むしろ、ほぼノーダメージでたくさん倒してレベルアップしてますけどね、ご愁傷様ぁー」
「スキルの最終確認にはもってこいの集団だったな、そこのお前、名乗ったからには生きて帰れると思うなよ?」
「ほげぇええー、ゆ、油断をついて、皆殺し作戦が…、こ、こうなっては仕方ない、多少制御がきかないがあいつで止めをさしてやる! 出てこいや!」
プチッ
死因:巨大な魔獣に踏み潰された。
「相当焦ってたみたいだな、召喚場所を間違えって踏み潰されやがった」
「召喚主が死んだ場合は魔力が無くなれば、勝手に消えるけど、逃げるどぉおおーー!」
巨獣に踏まれたら、即死、なので、退避、退避ぃー、当然巨獣は逃げるものを追うのだ。
その中でも最も遅いのは最後の勇者、彼の敏捷性はとてつもなく低い。
「俺には秘策がある、最後の掘り出し物の最後のおまけで貰った疾風の腕輪と疾風の腕輪だ、これを最終装備!!」
「バカぁああー! 色が赤なのは剛力の腕輪だからぁああー! 騙されたんだよ、それじゃあ、素早さは上がらねーつの! あと2つあったら最後って言わんのじゃーーい!」
「あのじじいめー! すまん、皆さん! 助けてくださぁああーい!」
「あー、もー、他人のダメージを力に変えられるんだよね、両手が空いている中で今できる渾身の一発ギャグ、これだ!」
はー、ほっぺっぺ!
女神様は自分の頬を両手でビンタし始めた。
「…なぁ、お前のとこの回復術師、頭おかしいのか?」
「ええ、勿論です、けれど彼女も彼女なりに全力で応援をしています、僕はそれを尊重してあげたい、はー、ほっぺっぺ!」
「分かった、そういうことなら俺もつき合うぜ、はー、ほっぺっぺ!」
ほっぺっぺ、ほっぺっぺ
ほっぺっぺ、ほっぺっぺ
ほっぺっぺの大合唱である、それが功を奏したのか最後の勇者は巨獣から逃げきった。
「っらぁああー、トリを走るのちょー気持ちいい! 皆さん、応援ありがとぉー! あとで金貨1枚渡すので、好きなものでも食べてくださぁーい!」
「やめてぇー! それ、私のお金だよねぇぇー!!」
「タテニ、いっぱしの戦士になったな、今日からケンイチの名前を名乗るといい」
「はい、その名に恥じないようにこれからも精進致します」
「タテテ、魔法使いの道は厳しい、まだまだ修行が必要だ、分かるな?」
「はい、これからも誠心誠意頑張ります!」
「ねぇ、私は? 私を女神だって認めてくれた?」
「おしい、2.8倍だったな、次頑張れ!」
「ふざけんなぁあああー!! 私頑張ったよ、超頑張った! くそぉー、今日も飲んでやるー!」
「いやっははは、おもしれぇパーティーだな、久しぶりにツボに押し込められっちまっだぜ、帰って、一緒に飲もうぜ!」
To Be Continued…
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