第5話 薬草摘み
薬草摘みでございますわよ!!
ふと、思うんですが。どんなゲームでも最初の登竜門的なクエストって、薬草摘みだったりしますよね。それって沢山の人が薬草摘みをするって事ですよね? そうですよね?
薬草が無くなったりしねぇんですかい?
二年後とかに絶滅危惧種とかになっちまわねぇんですかい?
てか、薬草薬草って言うけど何それ?
なんつ~ 名前の植物なんでやんすかって話。
自慢じゃないけど、こちとらこの世界に転生して14年ですが全く知らんで!!
とかなんとか心配しておりましたが、そんな心配はする必要無く、そこら辺は前世の世界と同じ様な感じでごさいました。
薬草とは薬用植物と言う意味で薬の材料だったり、そのまんま使えて生薬になる草達の総称だかなんだか、まあ知らんけど草草草。
そんな事をリアナちゃんに道すがら教えられながら、俺は街の近くの雑木林へとやって来ました。
そして、これがなんとか! これがかんとか! これがあーだーこーだ!! と教えられ、この袋一杯に集めてくれや! と言われ申した。
前世の言葉に訳すと「これがヤツデ。これがオダギリジョー。あれがユーカリで。それがユーコリン。そして、これらトリカブト。だから触らないでね!!」ってな感じ。
ヤツデは確か粉にするんだかしないんだか知らないけど、葉っぱを乾燥させてると、鎮咳、去痰の効果があーだこだする薬になる様な気がする。
そんで、オダギリジョーが仮面ライダーになって、それを煎じて傷口に塗ると傷薬になるんだった気がする。もしかしたら、オトギリソウだったかもしれない。て言うか間違いなくオトギリソウだな。
ユーカリはコアラが食べる奴、もう色々使える。植生が結構目茶苦茶な所を見ると、この雑木林は人工的に薬用に使える植物を育てていると御見受け致した。
特にユーコリンじゃなくて、ユーカリは目茶苦茶有用な植物だからどっかから持って来たんだろうな。
前世の世界でもユーカリはなんだかんだ世界中で栽培されてたし。唯一のデメリットと言えば山火事になった時に死ぬ程良く燃えるくらい。
ぶっちゃけ致命的なデメリットだけど、前世の世界ではそこまで気にしてなかった御様子。
トリカブトは多分矢とかに塗って、魔物とかをブッ殺す用の毒だと思う。アイヌ式の奴だと思う。薬として使うのかな? 結構、難しいんだよね調節するの……
他にもイポー。ストロファントゥス。クラーレと言った化物有毒植物がちらほらと視界に映る。
後で少しパクっとこ……
因みにイポーが桑の葉の仲間。日本には多分自生してないから、前世の世界の皆さんは御安心を……
ストロファントスがキョウチクトウの仲間で日本にもその系統の植物が自生してて気軽に手に入るから気を付けてね。
稀に、この種類の木をバーベキューの薪にして病院に運ばれる人がいたりするけど助かる。確か日本に自生してる種類には急性毒の種はないから、多分……
間違ってたらめんごめんご♪
日本の種は確か経口毒。だからキョウチクトウを触った手をベロベロなめたり。バーベキューの串にしたり、箸にしたり。薪にしてその煙で燻した肉とかを食べたりしなかったら、そうそう毒を味わう事はないと思う。
ただ、これを上手く使うと仕事が非常に楽になる。
経口毒を帯びた煙=吸わせたら勝ち。なので目茶苦茶便利。
まあ、煙にも経口毒の作用が移る種はそうそうないし。他の薬物にあっても目茶苦茶入手や精製がムズいからせいぜい引っ張り出せてキョウチクトウが限界。
中毒になった所をブスりが一番楽で確実。
いやぁ~ やっぱ毒っていいわ~
え? なんでそんなに詳しいかって?
まあ、ぶっちゃけ。俺が毒を主にしてる暗殺者だからですよ。どう? ビックリした? 素人の振りをしてたけど。実は玄人なんですわ、これが。
それになにより。この世界で俺が今日まで生き残れたのは八割方、毒のお陰だったりする。
中二病で毒の事ばっか調べてて良かったですわ。
「じゃあ、クレアちゃんは私と一緒に摘もうか!」
「ウン!!」
てな感じで、皆さん各々まったりと薬草採取が始まり申した。
「クレアちゃん、肌弱そうだからちゃんと手袋つけてね」
「ウン!!」
あったりめ~よ。
暗殺者ギルドで何年毒に触れてると思とんねん、少しでも跳ねて肌に触れよう物なら次の日は目も当てらんない事になってるんだぜ。
俺は御肌よわよわ乙女なんじゃよ。
とまぁ、そんな訳でマイ手袋はいつも常備してますよ、肘まである凄い奴。
若干、そのマイ手袋を見てリアナちゃんがギョッとした様な顔をした気がしたが多分気の所為。気の所為じゃないと思うけど。気のじゃと言うことにしておこう。
糞怪しいし。意味不明だけど。そこら辺は無視する。
そんなこんなでプチプチと薬草摘みます摘みます。我ながら馴れたモンである。
次のシーズンの事も考えて、間を空く様にプチプチと薬草を採取する。更には根っこが目当てではない薬草は根っこを残しながら摘んで行く。
こうする事によって、残された薬草は元気に育ち沢山の種を残してくれる。
まさに、さすていなぶる。
「クレアちゃんて、こう言うことしたことがあるの?」
「……ウン。スコシ」
やっぱり怪しいかな?
まあ、いいか!!
「ふぅん、通りで慣れてると思った」
「ウン!」
まあ、気にせずプチプチと薬草摘みに励む。
馬鹿な振りしとけば、多分大丈夫じゃろう。
しかし、そんな最中リアナちゃんが不意に立ち上がり森の奥を見詰め出し。
そのただならぬ雰囲気に俺もリアナちゃんの視線の先を見る。
リアナちゃんの視線の先には何やら蠢く存在がいた。
その蠢く影は森の木々を縫う様にゆっくりとこちらにやって来ている。
一体なんだろうか、猪か、それか森の熊さんか。わからないが、少なくとも人ではない。
その黒い影はゆっくりとではあるが、確実にこちらにやって来ている。そして、それは近付くに連れその姿を表して行った。
俺はその蠢く物の正体を見て思わず息を飲んだ。
泥まみれで薄汚く、吹き出物の多い肌。身体中にまとわり着く様に厚く垂れた脂肪が蓄えられている。
そして、トドメには豚の様な鼻に顔。
て言うか。ソレは言ってしまえば筋肉質な腕が生えた二足歩行の豚だった。
更に一言、トドメの一撃を言ってしまえば、バッチバチのオークである。
森の中で豚さんに出会っちまったぜぇ。
ど、どうしようだぜぇ……