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幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
眠る大火山、ホワイト・ヘッジ編
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第64話 破滅の祭壇へ

「お姉ちゃん、大丈夫だった!?」


 私の帰りを大人しく待っていたミィちゃんが、こちらに駆け寄って来てそう言ってくれた。私はミィちゃんに一度だけ頷いて見せた。


「大丈夫だよ……」


 そう言いながらミィちゃんの柔らかい髪を撫で付ける。

 柔らかくてフワフワの髪が私の指を流れていく。ミィちゃんも嬉しいそうな顔をしてこちらを見上げて来てくれている。

 思わず、私も頬が緩んでしまう。


 大丈夫、ミィちゃんの未来は私が守るから。


「さあ、行こう。ミィちゃん……」

「うん、わかった!!」


 そう言って、私はミィちゃんと共に歩き出そうとした時。ある人物が私達を呼び止めた。


「待ってくれ!!」


 そう、そこには先程のエルフ。ハンバーガーみたいな名前のエルフが立っていた。

 だけど、彼の顔立ちは先程までとは、どこか違う雰囲気をしていた。

 まるで何かを決意した様な強い眼差しをしている。


 目の前の問題に正面から向き合った、一人のエルフの瞳。

 宝石の様に青いその瞳は先程よりも強く強く輝いている様に見える。


 整った顔立ちにその宝石の様な瞳が私を写す。


 これ程に美しい顔面の持ち主に見詰められては、普通の女の子ならイチコロなんだろうけど、元男の私からすると、なんやかんや、ようわからん感覚を覚える。


 それにぶっちゃけ好みのタイプではない。

 個人的にはロックみたいな感じの……


 いや、それもそれで違うって!!


 元男ですから、私は……

 それに、今はそう言う話をしている時ではないだろうし……


「そうか…… その娘の為なのだな…… 君が闘うのは……」


 そう言うと、彼は私の隣にいたミィちゃんに視線を落とした。そして、何やら勝手に語り始めた。


「私は認められたかった…… 私の研究を認めさせ、世に私の存在を認めさせたかった…… しかし、その結果がこれだ…… 恐らく、権力者や師団の人間達は私のことを褒め称えるだろう…… しかし、世間は社会は、私のことを決して称えはしないだろう…… だが、私は何を勘違いしたのか、師団の人間達の形だけの賞賛に酔いしれていた。心の底ではわかっていたのだ。これは、私の望んでいた物ではないと…… 私は……」


 いや、長い長い!!

 もう、そう言うのいいって!!


 多分、自分の責任を自分で蹴りを着けようと思ってくらたんでしょう? それなら、それだけ言って「手を貸してくれ!」って言ってくれればいいのに…… 


 それなら、私だって頑張って手を貸すのに……

 思わず呆れてしまう……


 彼は今もなお一人で下を向きブツブツ喋るだけの機械と化してしまっいる。


 全く、仕方の無い人だな……


 私は彼を眺めながら一歩二歩と彼へと歩み寄った。

 そして、私は両手で彼の両頬を包み込んで、視線を私に強制的に向けさせた。


 人と喋る時は、目と目を見て喋りましょう!!


「一緒に、戦って、くれるの?」


 私と彼の視線が結ばれる。彼は目を丸くし驚きながらも目を反らしはしなかった。

 そして、一度自らの口を強く結ぶ。そして、次にその口を開かれた時、彼は答えを口にした。


「……あ、ああ、勿論だ!!」


 そう、男ならそれだけで十分だよね。


 だけど、彼の表情には不安や戸惑いの様な物が見て取れる。そうだろう。自分の研究で産み出した巨大な力、その大きさはその本人が一番に理解しているはずだ。


 相対するのは相当な覚悟が必要だろ。

 それでも、産み出した本人だからこそ、その力に対抗出来る手段も見つける事が出来るはずだ。


「うん。お願い。頼りにしてる」


 私がそう言葉にすると、彼はその言葉を皮切りに吹っ切れた様に表情が変わった。


「あ…… ああ!! ま、任せてくれ!!」


 うん、凄くいい表情をしてる。

 覚悟完了の顔だ。

 間違いなく、強い味方になってくれるに違いない。


「さ! 案内してくれる!?」

「ああ、着いてきてくれ。祭壇のある場所へと案内しよう」


 彼はそう言うと坑道の奥へと迷いの無い足取りで踏み出した。

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