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幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
眠る大火山、ホワイト・ヘッジ編
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第58話 奈落の底

 とても暗いが、と言うか真っ暗だが、とんでもない早さで落下していると言う事はわかる。それと感触的にミィちゃんが私の腰にしがみ付いてるのもわかる。


「ミィちゃん!! 絶対。離れないで!!」


 正直、出来るかどうかわからないけど、やるしかない。


 もう身体中に隠してあるプッシュダガーを全てかき集めて、その全てで即席のカギヅメ作る。

 そして、目一杯の力を込めて、目の前に有るかもわからない岩肌に向けている右ストレートを繰り出す。


 その瞬間に凄まじい衝撃が右腕から肩に走った。

 見事、私の放った右ストレートは岩肌に当たったらしい。


 握り込んだダガー達がピッケルだか、アイゼンだかの役割をしてくれて。ほんの僅かだが落下の速度が和らいだ気がする。


 一瞬、肩が燃えたのかと思う程の熱かったが、そんなのお構い無しにと次は左ストレートを繰り出す。

 またもや、肩が燃えたのかと思う様な衝撃と激痛が走る。


 またもや速度がやや遅くなった気がする。いや、これは気のせいじゃない。多分、これは無駄じゃない。ならば、続けてやるしかない!!

 

 ファイトォ!! いっぱーーつッ!!

 死にたくないよーー!


 と、思った瞬間。私の握るダガーが弾ける音がした。

 その瞬間、再び恐ろしい浮遊感に襲われた。

 あ、これ死んだ。

 

 思わず、ミィちゃんを胸に抱く。


 これがどれだけの意味を持つのかはわからない。だけど、やらないよりはマシな筈だ。もしかしたら、もしかしたら、ミィだけは運良く生き残るかもしれない。

 だけど、責めてミィちゃんだけは……


 その瞬間。背中に強い衝撃が走った。

 走ったがそれだけだった。


 思わず、声にもならない声が口から漏れる。


 体感として、五十メートル位落ちた気がする。普通なら余裕で死んでるけど。小細工をしたタイミングが良かったのか生きてる。めっちゃ背中痛いけど生きてる。


「お姉ちゃん!! 大丈夫!?」


 ミィちゃんが私を見下ろしている。その目には涙を一杯に浮かべ、こちらを見ている。


 ごめんねぇ、怖い思いさせちゃって……


「わ、わたしは、だい、じょ、ばない……」

「それ、どっち!?」


 ちょっと駄目。

 

 喋ろうとしたら、口から血がどんどん溢れて来る。息が出来ない、苦しい。そうだよね。元々、私の身体は丈夫じゃないから。これは駄目かも。もしかしたら、肋骨が折れて肺に突き刺さってるかも。


 それより、ここはどこだ?

 もしかして、地獄。それとも、あの世?


 なんとか顔だけを動かして周りの様子を見る。

 そして、有る物が目に写った。


「ろ…… うや?」


 そう、鉄格子だ。


 成る程、落とし穴の先は牢屋と言うことか。確かに利に叶ってる。でも、あんだけ落ちたら普通は死んでるぞ。落とし穴の先はお墓にしといた方が良いんじゃないか? その方が絶対効率が良い……


「君達、大丈夫か?」


 その声がすると同時に視界の端で何かが動いた。

 そして、それはのそのそとこちらに近づいて来た。


「あな、たは?」

「私はエレイン」


 そう言うと、彼は私の顔を覗き込んで来た。

 その顔に思わず私は息を飲んだ。


「え、るふ?」


 凄まじく整った顔立ちに白色の肌。そして、その顔を飾る宝石の様な青い瞳。最後には白銀の長髪にエルフ特有の長い耳。

 その余りにも整った顔立ちは性別すらも合間にさせている様にすら思えてしまう。


「驚いた。同族ではないのだな。私はてっきり……」


 てっきり、エルフかと思いましたか。

 残念、わっちはパチモンなんですわ。

 

「にせもの、です」

「それは自分の事を言ってるのか? それならば、そう言う考えはオススメしない。君の美しさはエルフと遜色無い。そして、その美しさは紛れも無い本物だ」


 そう言うと恐らく彼は私の身体を触り始めた。

 恐らく、触診しているのだろう。


「不味いな。内臓がかなり負傷してる。魔術さえ使えれば助けられるのだが……」


 なんとなく、そんな気はしてた。駄目っぽいって。

 これで死にかけるの三度目だからわかる。しかも、その内一回はちゃんと死んでるし。


「この魔封じの手錠さえ解ければ、君を助けられるのに…… 本当にすまない……」


 そう言うと、彼は手錠で拘束された両手を見せて来た。

 その瞬間、自分でも驚愕する程の早さで手が動いていた。


 恐らく、助かりたい一心でだろう。まるで自分の身体ではないかの様なスピードで私の手は走った。


 私の手は自分の髪を纏めている髪留めを瞬時にほどいた。


 実はこの髪留めは針金を依って作ったの物で、ピッキングツールの代わりになったりもする。

 私の針金を持った手は瞬時に彼の手錠へと伸び、一瞬で手錠を解錠して見せた。

 我ながら驚異のスーパー火事場力である。


 そして、肉体に染み込んだ匠の技に感謝である。


「たすけて、おねがい……」


 私がそう言うと彼は目を丸くしながらも、力強く頷いて見せてくれた。

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