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幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
眠る大火山、ホワイト・ヘッジ編
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第56話 潜入、ホワイト・ヘッジ探険隊!

 私が皆の所に戻った頃。彼等はちょうどホワイト・ヘッジの麓まで辿り着くかと言う所だった。


 さりげなく、幻影と入れ替わり。なに食わぬ顔で皆と合流する。その一連の様子を見えていないにも関わらず、見えているかのようにウィザさんが口を開いた。


「大丈夫でしたかな。クレアさん?」

「ええ、問題無し」


 さりげなく答えて見せはしたけど。ぶっちゃけ、何でわかったんだよと言う気持ちで胸が一杯ですよ。


 私はそんなに気配を消すのが下手か?

 それとも、創った幻影が雑だったか?


 それとも、ウィザさんの感覚が化物染みてるのか……


「皆さん。こちらがホワイト・ヘッジになります」


 レックスさんが私達の方を振り向きながらある方向を指差して見せてくれた。どうやら、ホワイト・ヘッジの中へと入る入り口を示してくれているみたいだ。その方向を見て見ると、坑道への入り口の様な物が幾つか見える。


 洞窟を木材で補強し崩れにくくしているのか、なんなのか。木材が飛び出しており。幾つかの入り口からはレールがしかれてて、トロッコか何かが通れる様になってる。


「あの坑道を使ってホワイト・ヘッジの内部へと向かいます。準備は良いですか? それとも、少し休憩してから行きますか?」


 そう言うと、レックスさんが私に視線を向けた。

 私が決めるの?


 いや…… う~ん。正直、ちょっと休みたいけど。

 それより気になることが有るんだよね。だけど、私の語彙力と片言でそれを説明出来るかどうか……


「わりぃ、ちょっいといいか?」


 そう言って、手を挙げたのはロックだった。


 すると、皆の視線がロックに集まって、それを確認した後にロックは一人で喋り始めた。


「このホワイト・ヘッジに《黒の師団》が潜んでるとして、ギルドの人間が使ってる坑道を使うのか? いくらなんでも、無用心過ぎねぇか?」


 そう、それが気になってた。私は自然にロックの意見に頷いていた。カナルさんもその意見に同意らしく、頷きながら口を開いた。


「成る程。確かにそれは一理ありますな。しかし、それなら奴等はどうしているのでしょうか?」


 その疑問には一同、首を傾げてみせた。


 幻影の魔術を使えば坑道の入り口くらい隠せるだろうけど。私達がそれを見つけるとなると至難な技だ。坑山を登山して練り歩きながら、何処かに隠し坑道が無いかなと手探りで探さなければならない。


 ぶっちゃけほぼ無理だ。


 何処にあるかも、どれくらいの大きさもわからない。もしかしたら坑道の中に隠し通路として作ってるかもしれない。そうなるともうお手上げ。訳ワカメ状態。


 だけど、残念な事にわかる方法が無いのでしらみっ潰しにやるしかない。これがどういう意味だかわかりますか? 


 足がパンパンになるって事ですよ。


 私がそんな事を考えてる矢先。ウィザさんが一言呟いて見せた。


「山の中腹。麓を少し登った所。それと頂上付近。ここから見える限りでは、その三ヶ所に幻影魔術で隠された坑道があります」


 だから、なんでわかるんだよ……

 化物じゃねぇか……


「お、おじさん。わかるんですか?」


 余りの衝撃にリアナちゃんが口を開きながら驚いて見せた。そして、ウィザさんもその問い掛けに何の気なしに答えて見せた。因みに、私も目茶苦茶驚いてる。目ン玉ひっくり返るかと思った。


「えぇ。色味が少し違います。例えますと、そうですね。鍛冶をしていると炎や刀の温度を目で見て完全に解るように訓練をするんです。僅な温度の違いから刀の出来は左右されますからね。それと同じですかね。幻影で造り出した岩肌と天然の岩肌では色味や岩の組織面が違います」


 ああ、成る程。

 この人はちゃんと化物だ。

 

 でも、そうか。だから、私の魔術も看破されてたのか。

 私も未だ未だ未熟者だな……


 私がそんな事を考えているとロックがホワイト・ロックを見上げ、不適な笑みを浮かべながら口を開いた。


「成る程。するてぇと、その幻影で隠された坑道に《黒の師団》が潜んでるって事か。じいさん、どこら辺なんだ、さっそく教えてくれ!」

「ええ、一番近くにあるのが……」


 そう言って、ウィザさんが何も無い岩肌を指差した。


 よくわからないが、そこに入り口があるらしい。私だけではなく、一人を覗いてキョトンとした顔をしていた。


 そう、その一人とはロックだった。


「いっよっしゃッ!! 俺様、一番乗り!!」


 そう言って、ロックは高く跳躍した。


 いやいや、入り口に見張りとか居たらどないすんねん。


 そんな事を私が考えてるいると、お構い無しにと言わんばかりの勢いで跳躍したロックはその勢いのまま岩肌をすり抜けて姿を消してしまった。


「ふわぁ、凄い!! ロックお兄ちゃん、消えちゃったよ!?」


 私の手を握っていたミィちゃんがその光景を指差し、目を輝かせながら跳び跳ねて見せた。


 いや、それより大丈夫なのかな? 

 幻影の向こう側は罠でしたとか無いよね?


 その思った瞬間、響いたのはロックの獣の様な叫び声だった。


「でぇぇりやゃゃぁぁぁぁっ!!」


 そう悲鳴とかではなく、人をぶん投げる時に発する気合いの入った叫び声だった。そして、それと同時に岩肌から何者かの人陰が飛び出して来た。


 何やら黒色の鎧に包まれた戦士の様な男だが、その顔面が拳の形に歪んでいる。明らかに《黒の師団》の兵士である。


 うわぁ…… 御愁傷様。


「ほら! お前らも早く来いよ!」


 その声のした方向を見ると、岩肌から首から上だけを出したロックがこちらを悪戯っ子の様な笑顔で見下ろしていた。


 なんて、ワイルドなお方……

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