第51話 これが仲間か!?
「なるほど、するってぇと。ウィザの旦那はクレアの親父さんに借りがあるって訳か……」
「左様。一時的とは言え家族同様に世話になりました次第です。故に彼女の家族探しには出来る限りの助力する所存です」
私が半泣きになったお陰で皆のボルテージが最低にまでガン萎えしたらしく。御互いに顔を向けあって今までの経緯や情報、私との関係を冷静に話し合ってくれている。
そして、当の私は情けなくも言葉の大切さと自分の無能さ加減にショボくれていたり、いなかったりする。
はぁ、もっとちゃんと勉強しよう……
スピードラーニングしよう……
「しかし、ウィザさん。クレアの家族探しとホワイト・ヘッジへ向かう事がどう繋がるのですか?」
そう口を開いたのはレックスさんだった。ぶっちゃけ、今までの経緯を話していてその他にも色々と突っ込み処はあっただろうが、レックスさんはそんな所が気になるらしい。他の突っ込み処はどう納得しのだろうか……
そして、その問題に関しては先程のグチャグチャな有り様を見て貰ったらわかる通り、私が説明できる範疇を越えてしまっている。
なので、任せましたよ!!
ドドリアさん、ザーボンさん、ウィザさん!!
「ふむ、そうですな。端的に言えば、彼女の家族を襲った手の者がホワイト・ヘッジに居ると思われるのです」
ほぼ、真実!!
て言うか、ただの真実なんですけど!!
それって不味くない? 《黒の師団》と私達が関係あるってバレたら不味くない? いや、《黒の師団》って目茶苦茶な組織だから「なんで、狙われたかわかんないけど、狙われたんです! 酷いですアイツ等、人間のクズでゴミでやんすよ!」とか言えばどうにかなるか?
いや、冷静に考えると、マジで私達《華族》がなんで《黒の師団》に狙われたのかわかってないんだよな…… なら、まあ、しょうがないか…… 本当にわかんないんだし。
取り敢えず、私はウィザさんの言葉にうんうんと頷いてみる。それに続く様にウィザさんが更に話を進めた。
「奴等は《黒の師団》。闇の世界で大きな力を持つ巨大な組織です。そして、何をしでかすかわからない者達でもあります。そんな輩がホワイト・ヘッジに居るのは危険以外の何者でもありません」
おいおーい、ウィザさーん。全部話してますよーい。そんな、私の視線など意にも介さずウィザさんは尚も話を続けている。
「奴等がホワイト・ヘッジを噴火でもさせれば、この街は火山に飲み込まれるやも知れません。奴等の事です、街に張られた結界もどうにかするはずです。私はこの街を守りたいのです。そして、彼女は家族情報が手に入るかも知れないと協力を約束してくれました」
おいおいーい、ぜーんぶ、真実じゃないかーい。
怪しいよね、怪しくない?
「なるほど、そう言うことだったんですね。まさか《黒の師団》が…… それ程の組織がクレアさんの……」
「そう言うことだったのか。ったく《黒の師団》とは、これまた意地糞悪い奴等に目を付けられたな……」
おいおいーい。それで納得するんかーい。
じゃあ、取り敢えず、私は私で被害者面しとこ。あとは、もう「きゅ~ん、きゅ~ん」って言っとこ。更には捨て猫の様に雨風に打たれて、寒くて寂しくて震えて泣いている、みたいな演技しておこ……
プルプル、プルプル。
取り敢えず、皆が私の事を「なんだ、あの女は、馬鹿か?」みたいな顔で見ているが取り敢えず無視。
それに実際馬鹿だからしょうがない。そこは甘んじて受け入れよう。
「して、この話を聞いて尚、私達と共に行くと言うなら止めはしません。しかし、覚悟の無い者は是非お引き取りください。この先、足手まといになるだけです。レックス殿もホワイト・ヘッジまでの付き添いだけで構いません。何かありましたら、直ちにお逃げくださいませ」
ああ、成る程。ビビらせて、お引き取り頂く作戦ね。
なんか、さっきからウィザさんの雰囲気が尖ってるな、とは思ったがそう言う考えが有ったのね、それなら納得。
だけど、ウィザさんは知らないんだよねぇ……
「へっ、面白れじゃねぇか!! 《黒の師団》上等!! やってやろうじゃねぇかぁ!!」
そう言うとロックが拳を握りしめ、こちらに太陽の様な笑顔を向けて来た。そのロックの視線はウィザさんを真っ直ぐと見詰めている。
やがて、その視線はゆっくりと私に移る。
そこで、何故、私を見る。
止めろ、その視線は私に効く。
余りにも力強く真っ直ぐな視線が私を射抜いてくる。
うぅ、本当にこの男は迷いと言う物がない。
「残念ですが。俺もここで引き下がるつもりはないよ、クレア。俺達は強くなった。今の俺達なら君と共に戦える、いや、戦ってみせる!!」
レックスさんも何故か私を見詰めて来た。その後ろにいるリアナちゃんや、ザルウォーさん、オルドさんも皆が考えは同じだと言わんばかりに私に視線を向けている。
見ると、ロックの後ろにいるカナルさんもそのつもりらしく、こちらを見つめている。
そう、わかってたよ。この人達はそんな事で引き下がる様な中途半端な人達じゃないんだよ。
底無しの御人好し集団に、夢見る大馬鹿たれ。本当に皆は凄い真っ直ぐな人達なんだよ……
いや、でもね、そんな見詰められても困るんですよ……
私は、ほぼ御人形さん状態だから……
「おやおや、これはこれは。誰一人引かないとは、驚きましたな。さぁ、どうしますかな、クレアさん?」
そう言うと、最後の一人だったウィザさんが私の方へと視線を向けて来た。いや、まだミィちゃんがいるか…… と、思ったらミィちゃんも私の方をじっと見上げていた。
「ミィも、お姉ちゃんと一緒ッ!!」
ミィちゃんの瞳はこちらを力強く見詰めている。ぶっちゃけ、お留守番して貰うつもりだったけど、これは無理そうだな……
下手に置いてって、姿を消して勝手に着いてこられたら結局の所、置いて行く意見が全く無いしな。
あ、そうか。勝手に着いた来られたら何の意味も無いのは皆もミィちゃんも同じか……
いや、て言うか……
「皆。駄目って言っても。来るん。でしょ?」
私がそう言うと、皆は満面の笑みで返答してくれた。
な、なるほど。
これが、仲間かぁ……




