第45話 押し売り
少し前に「視線には敏感だ」みたいな話をしたと思う。しかし、それは敵意や疑い、なんて言う負の感情を帯びた視線であって。どちらかと言うと好意的な視線と言うのには慣れていないし、いまいちよくわからない。
だから、なんと言うかむず痒い感じがする。
今まではこんなことは無かったのだが。このギルドの神秘的な雰囲気が俺の外見を更に引き立たせているみたいだ。我ながら、自分の白銀の髪がさぞかし青白く光り輝いているのだろうと思う。
実際に視界の端々に移る自分の髪が光輝いてるのが見える。正直者、チカチカしてウザい。
「でよぉ!! この御嬢様の薬をお宅のギルドで扱って欲しいんだけどよぉ。少しでいいからさ置いちゃくれねぇかい?」
ロックが俺の隣でギルドの受付嬢らしき人と話している。その態度はチンピラと言っても過言ではない。て言うか、完全にチンピラである。
よくよく考えるとロックの見た目は海賊。俺はなんか凄いチカチカしてる奴。ミィちゃんは見たまんま亜人の女の子。カナルさんは竜人。
かなりバラエティーに富んだパーティーをしている。明らかに変だ。でも、ファンタジーの世界ではこんな物当たり前なんじゃないか?
そんなことを考えていると、私達の後ろにいたカナルさんがやや笑いながら口を開いた。
「いやはや、やはり、私達は目立つ見たいですな」
やっぱり珍しいのか? そう思い、カナルさんを見ると彼の青色に鱗が洞窟から放たれる青白い光と合わさり、美しい宝石の様な翡翠色に変化していた。
「カナルさん。綺麗です。宝石。みたい……」
「……それは我ら竜人族に取っては最上の誉め言葉ですな。ですが、美しさと言う話でしたら貴方には敵いませんよ」
そう言うとお互いに呆れた様に笑って見せる。
大人だな、カナルさんは……
「おう、三人とも話は着いたぜ。ギルドで売るのは難しいけど、てきとうにそこら辺の冒険者に声を掛けて薬を売るのは良いってよ。取り敢えず、それで大丈夫か?」
なるほど、訪問販売形式と言うなの押し売り形式ですな。まあ、それで別に問題は無いでしょう。むしろ、そんなに沢山薬を作れる訳でもないし。下手にブースを貰ってしまったら後々大忙しになりそうだからそんな所で問題ないだろう。それにお金はそこまでいらないし。
「大丈夫。問題ない」
よ~し、ならば早速、薬の押し売りをはじめるぞい!
とまあ、そんな感じで押し売りをする訳ですが。まあ勿論、弱ってる人を狙う訳ですね、これ商売の基本です。弱ってるとは言え物理的に弱ってる人って話ですがね。包帯を巻いてる人とかね。取り敢えず、そう言う人達に声を掛けて軟膏だのを塗り付ける、もとい売り付ける。
買ってくれた人達には色々と処置もしてあげる。まあ、薬を買ってくれた人へのアフターサービスですね。まぁ、そこら辺の能力も普通よりは有るから自分でやるよりはマシでしょ。
他には以外や以外な事に、女性の冒険者達には私の着けているポプリが人気だった。まあ、いい香りがした方が精神衛生上いいからね。
ただ、問題としてニオイがあると言う事は、そのニオイが原因で魔物なんかに存在を気づかれる可能性もある。勿論そう言った事は事前に言っておくのだが。彼女達曰く、魔物達にはこちらの存在は大体バレてるそうだ。
魔物達の嗅覚恐るべしと言うべきが、ダンジョンや森に入った時は既に自分の居場所は特定されてる前提で動かなければ行けないらしい。冒険者とはそう言う物らしい。
やっぱり、その道の玄人は凄いね。
他にも女性冒険者達には日焼け止めなんかも人気だった。鉛を使ってないから健康に良いんですよと言ったら「はにゃ?」みたいな顔をしていたので、まだ鉛が身体に悪いと言うと知識が世間に知れ渡っていないのだろうか? そうだとしたら、それを売りにして市場に躍り出ようとしている俺はただの一人相撲なのでは?
まあ、金儲けが目的じゃないから、別にいいんだけどね……
存分に一人相撲して、はっけよいのこったしようじゃないの……
そして、俺の薬を買ってくれた人とか、色々と情報をくれた人達にはもれなく傷薬入りの軟膏容器をプレゼント。
実はこれを渡すのが目的なんですわ。
うっしっし。思ったよりも沢山の人には軟膏容器をあげられたぞ。へへへ、いいぞ、いいぞ~
もしかしたら、この軟膏容器に隠された秘密の成果も直ぐに出るかもしれないな。
ふふふ、一日目の、成果としては上々なんじゃないか?




