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幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
幻影を纏う刃編
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第3話 《華族》の掟

 《闇の華族》には少なくてユルユルガバガバな掟が幾つかある。

 そして、その一つが『《華族》の者は恩を受けた者にそれが誰でもあろうと最大限の礼を尽くすべし』である。


 社会のゴミの癖して、そこら辺はいっちょまえに吠えるのである。ここら辺がウチの家族の誇り。


 まあ、言わずもがな。彼等はそれにバチバチに該当するだろう。しかし、今の俺に出来る事なんて、たかが知れている。

 かと言って「誰か殺す時はワイに言ってくれや、50%OFFで請け負いますぜ」とか、某暗殺者一家みたいなことは言えるない。


 だが《華族》の一員として、掟には守りたい。

 社会のゴミでも、良い方のゴミぐらいには分類されたい。


 て言うか、既に彼等に御世話になって一週程経ったが宿代はもちろん食事代もゴチになっている始末だ。

 これは本当に申し訳ない。心が痛んで仕方がないので何か僅かでも恩返しがしたい。それに彼等の手厚い看病のお陰で、身体も少し動かせる様になって来た。


 多分、握力は12くらい。

 因みに、元々の握手は18ね。


 となれば、リハビリがてら何かしようと思わないかい?

 そう、何か彼等の手伝いでも出来ないだろうか?

 これが責めてもの恩返しにならないだろうか?


 そう思わないかい? 

 ワタシはそう思うヨ!!


「私達のお手伝い?」


 そうリアナちゃんが言った。

 まあ、俺が聞いたのである。

 身ぶり手振りを駆使してな……


 とにかく、リアナちゃんは俺の伝えたい事を理解してくれた様なので。俺は勢い良く頷いて見せた。

 すると、リアナちゃんは大きな声で笑って答えた。


「そんなのいいよ!! 今はゆっくり休んでなって!」


 そう言って彼女は笑顔を浮かべながら俺の肩をポンポンと叩くと部屋を後にしようとした。


 違う違う、そうじゃ、そうじゃない!! 

 君を逃せない!!


 すかさず、彼女のノースリーブのそでを掴みおっぱいを覗き見る!!


 いっやっほーーい!! こんにちはーー!! 


 じゃなくて、彼女は肩を掴み。部屋を出ようとする彼女の足を止める。あっぶねー 危うく、命の恩人にセクハラをブチかます所だったぜ。


「どうしたの?」

「オン。カエス。イエノオキテ。アルヨ」


 あまりにもテンパり過ぎて、今までに無いくらい片言になってしまった。でも、まあ、取り敢えず伝わりはしただろうからいいだろう。

 俺の言葉を聞いた彼女は少しの間考える様な仕草をみせた。そして、しばらくすると、頷いてからコチラに可愛らしい笑顔を向けてくれた。


「うん、じゃあ。私達と一緒に薬草でも摘みに行きますか!!」

「ウン、ヤルー!!」


 そう答えると彼女の満面の笑みで笑ってくれた。

 ああ、ええ娘や……


「じゃあ、行こうか!」

「ウンー!」


 そう言うと、彼女はワイの手をニギニギしてくれなすった。


 そして、ワイはリアナはんと共に部屋を後にしたんや!! どや!! 羨ましやろ!! 女の子と御手々ニギニギしてるでぇ!!

 ニギニギだか、モギモギだか、モギモギフルーツモギモギした~らモグモグだか知らんが、こないな事は小学校のキャンプファイヤー以来や!!

 なんやドキドキしてきたわ!! ドキドキだか、モグモグだか、モギモギフルーツモギモギしたらモグモグだか知らんが、ワイは今、幸せや!! 


 どうでもええけど、モギモギフルーツってどこ行ったんや!? アイツ、死んだんかぁ!?


 と、そんな下らない事を考えている内にリアナちゃんは俺をパーティが集まっている机の前に連れて行ってくれなすったんや。


 辺りを見るとザ・ギルドと言った感じの雰囲気が漂っている。


 ナーロッパよろしく。木々で作られた酒場に樽で作られたジョッキ。それを片手に大きな声で騒ぐ冒険者の人々。

 そして、学校の黒板位の大きさの掲示板には依頼書と思えるチラシが所狭しと貼り付けられている。

 不意に一人の男がそのチラシを手に取り奥のカウンターへと向かって行った。そこには小綺麗な服を来た受付嬢らしきお姉さんが立っている。


「ギルドの雰囲気は珍しいかい?」


 そう声を掛けて来たのはレックスはんやった。


 レックスはんのその問い掛けに取り敢えず頷いて見せる。俺のその様子にレックスはんは満足そう頷いて。手に持ったジョッキを口に運んだ。

 あっぶねー!! 全く、関係ないモギモギフルーツの事を考えてましたって言う所だった。


「みんな!! クレアちゃんがね。みんなに恩返ししたいから薬草摘み手伝うって!!」


 単刀直入である。なんか、そう字面にされると目茶苦茶恥ずかしい。普通に健気な女の子みたいじゃん。

 我ながら恥ずかしい。まあ、俺の見た目は美少女だから「その顔で何言っとんねん、ワレ」とはならないだろうけど。それはそれでさっきまでとは違う意味でモジモジして来ちゃう。


 モジモジだが、モギモギだか知らんけどなぁ!!


「ならほど、それはありがたい。是非とも頼むよ!」

「ひゃ!! ひゃい!!」


 思わず、ちゃんと返事をしてしまう。いや、ちゃんと返事出来てなかったけど。

 なんだろう。何だか今更になって、すっごい恥ずかしくなって来た。もう、おうち帰りたい。

 

 そんな俺の様子を見るとレックスは立ち上がり「よし」と一言呟き、俺の前に立った。


「一応、ギルドの仕事だからね。ギルドカードを発行しておこう」

「ギ。ギルド。カードぅ?」


 ファンタジー的な奴で良く聞くけど。結局、なんなんそれ? ギルドカードをコレクションしてる変態なら家のギルドにも居たけど。

 クレジットカード的な奴? それともビザカード? それともポンタカード? それとも、アメリカンな奴? Tカード的な物だと嬉しいんだけどな…… 

 年間費とか必要なのかな? あれ? もしかしてこれって変な詐欺とかじゃないよね? そうだよね? 知らない間に送金とかされないよね?


 て言うか、アタイ。暗殺者ギルドの人間ですけど。そんな人間がギルドカード発行しても大丈夫なんすかね? この状態からでも入れるギルドって有るんですか? なんか警報とかが突然、ビー!! ビー!! とか鳴って警察とか大人の人とかに捕まったりしないよね?

 

 大丈夫だよね!?

 大丈夫ですよね!?

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