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幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
華族編
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第36話 お別れ

 事が起きてから速い物で数ヵ月。


 ミィちゃんとはギクシャクしながらも、なんとか師弟関係は保ちながら薬師としての最低限の知識は教える事が出来たと思う。

 これで、わからない事は自分で調べられるだろうし、自分で色々と試行錯誤して薬師としての実力を上げて行くだろう。

 

 そんな風に思った矢先、彼は来た。


「お~い!! すまなかったな、待たせちまってよ。今、そっちに行くぜぇ!!」


 行きに乗っていったのと同じ船に乗り、彼はこの入り江洞窟までやって来た。

 まあ、当たり前の事だろうけど。その船に乗って来た乗組員達の面子がガラリと変わっていた。

 全員が船乗りか何かなのかわからないが、かなり慣れた動きをしている。碇を下ろす手際も、小舟をこちらに渡す作業もそつなくテキパキとこなしている。

 その水面へと下ろされた小舟に彼、ロックは乗り。その漕ぎ手だろうか、背の高い竜人と共に海岸へと降り立った。


「よう! 久しぶりだな!!」

「……う、うん」


 相も変わらず、太陽の様な爽やかな笑顔がこちらに向かって輝いて魅せてくる。

 その格好は前回の腰巻き一枚とは打って変わり、帽子は被っていないが大きく胸のはだけた海賊の様な格好をしている。

 コスプレか何かだろうか? て言うか、なんなんだろう、その格好は?

 すると、ロックの後ろにいた背の高い竜人が私に向かって話し掛けて来た。


「この格好に疑問をお持ちでしょうが。この船は現在、貿易船として活動しております。活動しているんですが…… 何故か船長はこの格好にこだわっているようです」

「いやぁ!! やっぱり、船っつったら海賊の格好だろうよ!!」


 いや、マジでコスプレだったんかい。それより、それで商売が成り立つのか?

 思わず呆れた表情を浮かべてしまう。

 いや、て言うか……


「あの、あなたは?」


 そう言いながら、私は背の高い竜人を見上げてみせる。

 一言で言えば二足歩行の青い蜥蜴。翼は無いが大きな爪に牙が目立つ。でと、それ以上に青く光る宝石の様に綺麗な鱗が目に入る。

 私の言葉を聞くや否や、彼は礼儀正しく腰を折り背の高い頭を私の目線まで下げてくれた。

 とても、礼儀正しい人みたいだ。


「私はカナル。竜人族の戦士であります。貴方にはこの前の檻から出してもらったのですが覚えはありませんか?」

「はぇ?」


 あはあ? いたかな? いたかも?


「いえ、覚えがないなら構いません。あの時は本当にありがとうございました。その節は感謝しても仕切れません」


 そう言うと彼はもう一度頭を深く下げて見せた。

 本当に礼儀正しい人みたいだ。それが種族による物か、彼自身の人間性に依る物なのか、竜人族がかなり珍しい種族だから、わからないがかなり好感が持てる。

 だけど、取り敢えず語彙力が無いのでどう対応したらいいのかわからないので取り敢えずコチラも「いえいえ」と頭をヘコヘコと下げておく。

 こう言う、礼儀正しい人に頭を下げるのは悪い気はしない。


 ただ、私が頭をあげるのを見ると、二人はキョトンとしていたが。まあ、これはシカト。

 取り敢えずなんかあったらお辞儀しちゃうのは私の魂に染み付いたジャパニーズソウルに依る者だから、変な風に見られても、もうしょうがない。

 

 そんな事よりだ……


「あの時。船にいた人達。元気?」

「ああ、元気にやってるはずだぜ!」

 

 そう言うと、ロックが笑ってみせた。

 なんか少し不安になるけど、本当に大丈夫なのだろうか?


 そう思いながらロックからカナルさんに視線を移す。私の視線に気付いたカナルさんがゆっくりと頷いてみせた。


「皆さん、一人一人に合った仕事を紹介され、その先で上手くやっているようです。この目で確かに見ましました」


 そうですか、それはよかった。取り敢えず、にっこりと笑っておく。

 そんな私の顔を見てカナルさんがギョッとした様な顔を見せた。


 なんだ、そんなに私は笑顔は下手くそか?

 今度、笑顔の練習でもしとくか?


 いや、まあいいか。


 このロックと言う男とカナルさんがある程度信用出来ると言う事はわかった。これならば、ミィちゃんをこの人達に任せても問題無いだろう。


「二人とも。待ってて。ミィちゃん。呼んでくる」

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