第2話 ミラン・エクレール
「俺はレックス。このパーティのリーダーをやらせて貰ってる。それにしても一時はどうなるかと思ったけど、本当に無事でよかった」
そう言ったのは金髪の青年だった。
その背中には一本の長剣を背負い、革の鎧を身に纏っている。とても精悍な顔立ちをしており。見るからに好青年と言った感じだ。
役職は見た目や身体つきからの判断になるがオールラウンダーと言った所だろうか。オールラウンダーと言えば聞こえは言いが、要は器用貧乏。まぁ、そこら辺は本人次第か。
パーティに入るとすれば勇者とか、そんな立ち位置的な格好と顔面だな。一番嫌いなタイプかもしれない。俺もそんな顔に産まれたかったですよ~だ。
「俺はザルウォー。戦士だ。よろしくなぁ!!」
やけにデッカイ図体の男がデッカイ口でデッカイ声を出して自己紹介して来た。
正直、ビックリした。物理的に食べらちゃうかと思った。
マジでクソデッカイ。多分、何もかもがデカい。身長も二メートルくらいある。見た目からして明らかにパワー極振りの筋肉戦士って感じ。
多分、俺がRPGゲームとかでパーティーを作ったら、コイツばっかになると思う。
「ザルウォーさん、彼女は病人ですよ。少しトーンを落として話してあげてください。傷に響きます。いや、これは失礼。私はオルド。一応は魔術師です。どうぞよろしく」
そう言って、青年は綺麗に御辞儀をして見せた。明らかに攻撃特化型の魔術師だな。こう言う、ハキハキしたタイプは大概それに分類される魔術師が多い。
逆にポワポワした感じの魔術師は治療特化型とか補助特化型の魔術師が多かったりする。
まあ、血液型の性格診断みたいな物だから、そこまで信憑性は無いけどね。
そして、お待ちかねは……
「私はリアナ!! 斥候だよ、よろしく!!」
そう言って、彼女は元気よく片腕を高く挙げた。その瞬間チラリと脇が見えた+114514点。
最高、アンコールお願いします。
ま、まぁ、それはさておき。この流れから察するにコチラも自己紹介をする感じか……
やだなぁ、馬鹿がバレるからなぁ……
まあ、仕方ないか。彼等は命の恩人だし。
「ワタシ。クレア。タスケテクレテ。アリガト…… ゴザイマス?」
これで合ってる? 多分、これで合ってるんだけど……
まあ、ちょっと片言ですが許しておくんなしぃ。と言った感じで頭を下げる。
実際の所、本名はミラン・エクレールと言うのだけど。愛称のクレアで良いだろう。本名を教えて正体がバレたら厄介だし。
そんな事を考えながら顔をあげて、一同の顔を順番に見ると全員「お、おう(察し)」みたいな顔をしている。恥ずかしい。
まあ、仕方ない。バチバチの片言でビックリしたんだろうな、と思っておこう。
まあ、そんなことよりだ……
「ココ? ドコ?」
そう、ここがどこだか知りたいのである。何せ俺は気絶した後の記憶がいないないばぁしてしまっているからね。
俺のその質問に一同が一度頷いて見せ。リーダーの青年、レックスがゆっくりと語り掛けて来た。
多分だが、俺がアホの子である事を加味してゆっくりと話してくれてるんだろう。
正直助かります。
そして、アホですみません。
「ここは街のギルドですよ」
な、な、なんやて!? ギルドやて!? ギルドってつまり、その正規の方のギルドですよね!? マジかよ、堅気さんのギルドかえ!? これは御迷惑をお掛けしやした。
さっさとずらかろうか、色々と面倒事が起きる前に…… 堅気さんに迷惑はかけらんないからな…… 追っ手だって居るかもしれないし。生きていればの話だけど《華族》の皆とも合流しなきゃいけないし……
「アリガトゴザマス。オンハ。カナラズ。カエシマス……」
そう言って、スタコラさっさと逃げてしまおうとベットから立ち上がる。が……
「おっと!! いけねぇ、嬢ちゃん!! 行きなり動いたらあぶねぇぞぉ!!」
大きな声が部屋中に響くと同時に凄まじい倦怠感と吐き気。そして、止めの目眩に襲われた。
ウボア!! 気持ち悪い!!
視界がグルグルする!!
これは、我ながら完全にグロッキー状態だ。とてもまともに動ける状態じゃない。気付けば俺はザルウォーとか言った筋肉達磨の丸太の様な腕にしがみついていた。
うぇぇ、マッチョにしがみついちゃったよぉぉ。
なんか、男として負けた気がするぅぅ。
情けないよぉぉ。
そないな事を思ってると、オルドとかなんと言った魔術師が俺の顔を覗きこみ、おでこに手を当てて来た。
これにはビックリ、セクハラかと思たヨ。
「やはり、熱があるみたいですね。無理もありません。アレだけ、深い傷を負って血も大量に流したんです。直ぐに動くだなんて不可能ですよ」
そう言うと二人は力一杯俺の肩を押さえ、そのままベッドへと座らせ様として来た。俺はそれに大丈夫だと言わんばかりに対抗して見せる。
そんな不満げな様子を察したのか、リアナちゃんが俺に優しく馬鹿にもわかる様にゆっくりと語り掛けて来てくれた。
「何か訳有りなんだろうけど。今はゆっくり休まなきゃ駄目だよ。そうじゃないと、またどこかで倒れちゃうかもだよ。そうしたら次は本当に死んじゃうよ……」
大きくてクリンとした青い御目目がこちらをじっと見つめる。
あらまぁ、可愛らしい、金髪碧眼なのね!! うらやましいわん!! わんわん!!
とまぁ、ふざけるのはさておき。そんな事を言われてしまったら、大人しく待てをされた犬の如くじっとしているしかありませんわな。
実際、身体に力入らないし……
多分、握力2くらい。
仕方ない。《華族》の皆を探すのは、ある程度身体が回復してからにするか。こんな状態じゃ、本当に動く事もままならない。
それに大変に運の良い事に善人を絵に書いた様な人達に出会えた様だ。まあ、申し訳無い事この上ないが少しばかり御迷惑を掛けさせて貰いますか。
取り敢えず、ゴチになります。
その善意につけ込ませて貰います。
「ゴメンナサイ。オセワニナルマス」
そう言うと、皆が満足げな笑顔で頷いてくれた。
うぐ!! 皆、いい人!! 笑顔が眩しいよ!!
なんか、申し訳なくなってくるわ!!
《華族》の仲間達以来やわ、こんな人の優しさに触れたのは……
と、勝手に俺は涙ぐんでおりますた。おしり。