表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
華族編
38/75

第33話 三人の暗殺者

 夜の入り江洞窟に三人の暗殺者と一人の女の子が立っている。洞窟の切れ間からはまるで、月がコチラ覗き込んでいるかの様な景色が垣間見える。


 きっと、私以外の三人にもそう見えているんだろう。

 

 もろちん、私とクロード兄ちゃんとアイラお姉ちゃん。そして、ミィちゃんの三人である。

 そして、そんな私達と相対するのは、洞窟の切れ間から覗く月を背負う一隻の帆船。

 あの船は私達がありがたくも頂戴した拠点、その元の持ち主の商売相手だと思われる。


 まあ、必然と言ってしまえば必然なんだと思う。


 本当ならとっくに商品と言うにもはばかられる物が納品されているはずなのに、待てど暮らせどそれは納品されない。

 私の前世なら電話一本で解決する問題だけど、この世界では手紙か直接面と向かって会うしかない。手紙でのやり取りなんて検閲で引っ掛かる可能性もあるから、やる可能性は薄い。もしかしたら、何かしら暗号化した手紙を送ると言うのもあるが、もろちん、そんな物、身に覚えもなければ、返事の仕方も私達はわからない。

 ならば、必然的に奴等は直接ここに顔を出してくる。


 それを迎撃し、皆殺しにする。

 それが今回の依頼だ。


 依頼主は私。

 お代は身内料金でタダ。


「やっぱり、クレアちゃんの言う通り。ノコノコとやって来やがったぜ」


 そう言うとアイラお姉ちゃんがサーベルを引き抜く。そして、そのサーベル背で肩をトントンと小気味良く叩いて見せた。


「ええ。当たり前の事ですが、見事な読みと言っても良いですかね」


 アイラお姉ちゃんに続きクロード兄ちゃんが口を開き。ボウガンの弦を引き矢を添えて見せた。


「ゴメンね。迷惑かけて」

「へへへ、何言ってのよ。可愛い妹の為なら、こんなの朝飯前よ!」 

「その通りですよ。それに、あの船を頂戴出来れば大きな利益を産む事が出来ます。そこまで想定してたならば、私はクレアさんの事を誉め讃えたい位ですよ」


 その後にクロード兄ちゃんは「まあ、危険な行動は誉められませんがね」と付け加えた。二人はこう言ってくれているが正直、素直に「はい、そうですか」とはならない。

 本来は自分で撒いた種だ。それならば最後まで自分で片をつけるのがスジって物だろう。しかし、そうするには余りもリスクが大き過ぎる。私は事戦闘に関してはクソザコナメクジ以下だから。


 だけど、これなら心配はいらない。

 問題なく奴等を血祭りに挙げられるだろう。


 私は隣でこちらにすり寄ってくるミィちゃんを見た。その顔は少し不安げな表情をしている。まあ、当たり前だろう。


 私は膝をついてミィちゃんに視線を合わせて見せた。


「ミィちゃん。これから、私達がヤルこと。良く見てて」

「え? う、うん、わかった」


 うん、えらい。

 

 そう思いながらも、私はミィちゃん頭を一度撫でる。ふわふわの柔らかい髪が心地好く私の指にまとわりつく。

 恐らくだけど、これが彼女に触れる最後の機会になるだろう。


 それで良いんだ。


 彼女には私達がどういう存在か、知ってもらわなければならない。

 

「さあ、行きますよ。《闇の華族》久々の大仕事です。しっかり、殺しましょう」

「おうよ! 奴隷商なんてやってるしょうもない奴等は皆殺しにしてやるぜ!」


 二人はその瞬間、高く跳躍した。そのまま、二人はあっという間に船の上に降り立ってしまった。そして、それと同時に船の方向から人の叫び声が次々と聞こえて来た。

 

 今頃、船の上は地獄と化している事だろう。


「ミィちゃん。これが私達《闇の華族》。よく見ててね」


 そう言うと、私は夜の暗闇に紛れ姿を消した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ