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幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
拠点探し編
33/75

第28話 軽業

 さあ、落ち着け落ち着け。

 大丈夫、問題ない。


「お姉ちゃん……」

「大丈夫!」


 不安がるミィちゃんを背後に隠し。私は甲冑男を睨む。甲冑男の表情はわからないが、その声色からして笑っている様だ。


「でへへ!! 睨んだって無駄だぁ、覚悟しておけぇ、ブッ殺してやるからな!!」


 そう言うと甲冑男は壁に立て掛けてあった鉄の棒を乱暴に掴み、コチラにその先端を向けて来た。不味いな、普通にピンチだぞ。


 少女と一緒に魔術で姿を消しても良いけど、それをやると最悪「この鉄格子の中にいる奴らを殺すぞ」的な事をやられるかもしれないん。もし、それをやられると普通に困る。

 いや、知ったこっちゃないんだけど。一度は取り敢えず、助けると決めた人達が殺されるのは個人的に我慢ならない。


 今、甲冑男の興味は私に集中してる。それなら、そのまま誘き寄せてどうにかこうにか他の場所まで移動して、毒煙で動けなくする。そして、ミィちゃんには煙を吸わない様に一工夫する。


 よし、それで行こう。

 そう思い、一歩後退する。 


「でへへへ! さあ、大人しくブッ殺されろ!!」


 鉄の棒を持った甲冑男が、にじりにじりとこちらに近づいて来る。私もそれに応じて、じりりじりりと後退してみせる。

 私は鉄格子が並べられた合間へと入り、ミィちゃんと一緒に奥へ奥へと後ずさる。勿論、甲冑男もそれに応じて鉄格子の合間を縫いこちらへ徐々に近づいてくる。


「へへへ、逃げたって無駄だぜ」


 そして、部屋の奥まで言った時、私は自分の浅はかさを知った。鉄格子がビッチシと隙間無く並べられており、合間を通る隙間もないのだ。


 やっちまっただ~

 私はアホタレや~


 隙間を縫って行って、そのまま甲冑男との距離を保ったままグルッと回って甲板の上にでも昇ろうと思ったんだが、そうは上手く行かなかったか……

 鬼ごっこの時にサッカーゴールの周りをくるくる回ってそのまま逃げる奴をやってしまえばよかった。


 普通にちゃんと追い込まれてしまった。

 もう魔術で姿を消してこの場を去るか。


 取り敢えず、私は自分の後ろに隠れていた少女を抱き抱える。


「お姉ちゃん?」

「じっとしててね……」


 抱え挙げたミィちゃんの身体はとても軽く、私でも軽々と持ち上げられてしまった。

 全身が僅かに骨張っており、抱き抱えて初めてわかったが首元には痣も見える。私は思わず、ミィちゃんを抱き締めてしまった。


 きっと辛かったろうに……


 それでも決して生きる事を諦めなかったんだね。私は貴女の事を心の底から尊敬するよ。

 見ててね、私も貴方の想いに報いてみせるからね。

 

 そう心に決めベルトから第二のダガーを引き抜く。


 相手は動きも鈍い。最悪、このミィちゃんを抱えながらでも、擦れ違いながら逃げる事は十分に可能。少し博打だけどやる価値はある。


 それに鉄の棒程度なら頭さえ守れば意識は保てるはず。

 大丈夫、私ならやれる。


「へへへ、やっと諦めたみたいだな」

「諦めて、ない!!」


 私は女の子を抱き抱えながら、男にダガーを向ける。

 その時、全く関係無い所から男の声が聞こえた。


「いいじゃねぇか!! そう言う、意志の強い女は好きだせぇ!!」


 その声がすると同時に甲冑男が通り過ぎ様とした鉄格子から筋肉質な腕が飛び出した。そして、その腕はそのまま甲冑男の首根っこをその筋肉質な二の腕で抱え込んでみせた。

 更に、その腕は甲冑男が鉄格子にそのままめり込んで行くのではないかと思われる程の力強さで男の首を締め上げて見せた。


「うがっ!! な、なんだ貴様ッ!?」

「テメェに捕まった奴隷その1だよッ!!」


 これは勝機。


 その瞬間、抱き抱えた少女を床へと降ろし。私は跳躍した。


 バグ宙をする様に身体を跳躍させ。身を翻しながら、地面へと着地する間に甲冑男の兜を剥ぎ取り、露になった肌にナイフを突き刺す。


 そして、華麗に着地は失敗!!

 見事にお尻から着地である。


 お尻が二つに割れちゃうかと思った!


 しかし、私は直ぐ様体制を立て直して、ベルトから第三のダガー取り出しながら甲冑男を見る。だが、その時にはすでに甲冑男は泡を吹いてひきつけを起こしながら床に倒れていた。


「お、おう。こりゃ、驚いたぜ!! 見事な軽業だ!!」


 そう声を挙げたのは鉄格子の中にいる男だった。

 

 男は腰巻き一枚に逞しく鍛え上げられた肉体をしており。その大きく広い小麦色の胸板に、綺麗に六つに割れた腹筋が輝いている。顔立ちは少し長めの金髪に意思の強そうな太めの眉。

 しかし、巌の様に男らしいと言う訳でもなく、かと言って優男と言うにはやや男らし過ぎると言った風体をしている。


「すまねぇが、嬢ちゃん俺もひとつ助けちゃくれねぇか」


 そう言って、男の意思の強そうな蒼い瞳がこちらを貫く。大海原を彷彿とさせる綺麗な青色の瞳。その真っ直ぐな眼差しに思わず胸の高鳴りを覚える。


 そして、一瞬だけとは言え、ドキリとした自分に寒気が走る。

 しかも、さっきまで普通に私とか言ってたよね?


 やべっちやべっち。完全に肉体に精神が持ってかれてたってばよ。


 俺は漢の中の漢、大和漢子やぞ。

 冷静になれ。具体的にはトマトの冷製パスタぐらい冷静になれ。


 よし、おっけ!!

 冷製になったぜ!!

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