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幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
追跡者暗殺編
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第23話 黒の師団

 空に散りばめられた満面の星達に、鋭く研ぎ澄まされた様な三日月。そして、月明かりが照らす夜の海は怪しい光を放ちながら、不気味に、そして神秘的に波打っていた。

 

「私達を始末する様に依頼したのは《黒の師団》だそうです」

「なんだってぇ!? 《黒の師団》だって!?」


 そう声を挙げたのはアイラお姉ちゃんだった。


 先ずは《黒の師団》と言う組織の簡単な概要を整理しよう。《黒の師団》とは言ってしまえば超大規模反社会的組織だ。《闇の華族》である、俺達も《黒の師団》の下部組織と言うか協力関係に当たったりする。まあ、この話の流れからすると今はお払い箱になってしまったと言う所だろうか。

 

 まあ、そうだろう。

 ただ、問題がある。


「な、なんで《黒の師団》が私達を始末するんだ?」

「それはわかりません。恐らく、私が拷問した彼等も知らぬ所でしょう……」


 それはそうだろうな。


 《黒の刃》かどうかは知らないが、恐らく彼等も《黒の師団》の下部組織だろう。その下部組織の人間に事の真相まで伝わる事は先ず無い。て言うか有り得ない。

 要は下請けの下請け。孫請けみたいなモンだ。それもかなり悪どい部類の物に当たるだろう。扱いが悪いのは当然、情報共有なんかもする筈がない。


 孫請けの社長、この世界だとギルドマスターとかになるのだろう。恐らく、それ等は何でこの仕事をするか程度は認識しているだろう。しかし、そのギルドのメンバー。つまり、いち社員となると何でその仕事をするのか、いまいちよくわかってなかったりする。


 て言うか、当の俺でさえそうだった。


 なんで、コイツを殺すのか理由はわからない。でも、殺さなくちゃならない。上の命令だから、みたいな感じ。


 正直、激ヤバ組織なのである。


 普通はこう言うスタイルで組織は成り立たなかったり、途中で歪みが出たりする。

 まあ、そう言うのも「殺してしまえ」の一言でどうにかなっていたのだろう。現に今、俺達の事を殺そうとしてる。

 それに今から殺す奴が何をしでかした奴とか聞きたくないし。みんな、余計な厄介事には巻き込まれたくないのが本音。


 要は金さえ貰えれば、モーマンタイ。


 ぶっちゃけてしまえば、命令する方はちゃんと悪いし、何も考えずに命令される方もどっちも悪い。

 しかし、今回の問題はそこではない。ここら辺の問題は殺し屋をやっていれば飲み込まなくては行けない問題だ。


 今回の問題は……


「私達《闇の華族》は何故《黒の師団》に狙われたのでしょうか。まあ、彼等の気に入らない事をやってしまったのでしょうね」


 素っ気なく兄さんが呟く。


 そう、それが問題なのだ。先ず間違い無くだが、俺達《闇の華族》は《黒の師団》が気に入らない事をしたはず。しかし、それが何なのか。これがわからない。ただ、その理由がなんであれ。こっちのやることは決まってる。


 スーパー逆ギレである。


 もともと《闇の華族》は家族。一家と言う形を取っている。ギルドと言うよりそう言う家族である。

 ギルドの様に利益とか権威だとかは追求しておらず。メンツだとか心情を第一に置いている。まあ、それもそれで問題はあるが、俺は好きだからそれでいいと思う。


 そうでないと、ギルドガードコレクターの変態暗殺者やギャンブル狂いのダークエルフのお姉ちゃんとか、片言の知恵遅れクソザコナメクジ少女とかを抱えたりとかしない。

 でも、そう言うのを抱え込んでしまうのがウチの親父なのだ。義理とか人情。それが第一優先なのだ。


 そんな人と《黒の師団》。軋轢が生まれない訳がない。むしろ、今まで良く上手くやってたなって感じだ。


 ならば、これは起こるべくして起きた事なのだろう。と割り切って全力で迎撃に転じるのみ。自分達家族を守る為に……


 だから、スーパー逆ギレである。

 スーパーぶちギレ、皆殺しである。


 《黒の師団》だろが《黒の刃》だろうが関係ない。向かってくる奴ら全員返り討ちにするまでの事だ。ぶっちゃけ《闇の華族》ってそう言う集団。良い意味でも、悪い意味でも頭が少しおかしいのである。


 その証拠に兄ちゃんにお姉ちゃん。この二人は暗い顔を一つ浮かべていない。むしろ不気味に、そして不敵に笑っている。

 

 《黒の師団》と言う大組織相手にケンカする気満々である。


 やっぱり、この二人は頭がおかしいや。などと思いながらも自分の顔にも笑みが浮かんでいる事に気づき笑いが込み上げてくる。変な表現だが、これが一番しっくり来る表現だろう。


 そうなんだよな。やっぱり、俺も根っからの《闇の華族》の一員なんだよ。だけど何故だろう、今はそれが堪らなくおかしくて、堪らなく嬉しい。


 月明かりが照らす海で、私達は三人はお互いに笑い合った。

 そうやっぱり、私達は家族なんだな。


 そう心の底から思える。


 あれ? 今、私って言ってた?

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