第18話 事の顛末
前回。パエリアをいただいた店で同じくパエリアをいただく。
兄さんも前回と同じくボンゴレにフォークを伸ばしている。
そして、お姉ちゃんはと言うと……
「いやはや、久し振り食べる人並みの食事は格別だねぇ。うんうん、港街で食べるシーフードピッツァは更に一段と格別だねぇ」
そう言って、ピザをひとピース取り口へと運ぶ。
露出部位の多いビキニパンツにも似たホットパンツ。そして、放漫な胸を包む黒革のビキニブラ。ほとんど格好はビキニギャルのそれと変わらない。
変わってる所と言うと、その長い足を黒革のハイブーツで覆っており、腕も黒革のグローブが肘まで覆い、そのくびれた腰からはサーベルがぶら下がっている所だろうか。うん、言ってみると結構違うな……
そんな話はさておき、これがアイラお姉ちゃんの真の姿である。
その時、近くの席に座っているお客さんの会話が俺達の耳に届いた。
「おい、館の話、聞いたか? あの貴族の別荘だって噂になってた豪邸の話……」
「ああ、聞いたよ。館の主はもちろん守衛も皆、殺されてたんだろ?」
おやおや、噂が広がるのは早いね……
「どうやら話はそれだけじゃねぇらしいぜ。なんでもあの館の地下は賭博場になってて各地のお偉いさんや商人が夜な夜な集まって賭け事をしてたらしいんだよ」
「あぁ? 嘘だろ? そんな話があるのか?」
あるんだなこれが……
「まあ、あくまで噂だが。その賭博場に集まってたお偉いさんも、誰も彼も関係無く皆殺しにされてて今各地では大混乱が起きてるらしいぜ。まあ、噂だけどな……」
「そりゃ嘘だよ。現にほら、今日もいつも通り何も起こっちゃいない平和な日常その物だ、だろ?」
その男の言葉を聞いて、噂を持って来た男が周りを一度だけ見渡して「それもそうか」と笑い、再び食事に戻った。
まあ、所詮は各地のお偉いさんが死んでもこんな物。
特に博打に精を出してる、お偉いさんなんて死んだ方が世の為になるのかもしれない。まあ、こちらとしてはそんなの知った事ではない。
そう、表向きには屋敷の主人が死んだ程度の話。ただ、裏の世界の住人達には間違いなくコチラの意図は伝わったはだろう。
《闇の華族》は今尚、健在だと。
そして、我々《華族》になめた真似をしたらこうなるぞと……
更には家族の者達よ、ここに俺達はいるぞと……
三つ目は伝わったかはわからないが、少なくとも前者の二つは伝わっただろう。
「少しの間はこの街に留まり、家族との合流を計りましょう。その後にまた別の街にでも移りましょう。金の保管はクレアさんの方式を採用します。隠し場所は私とクレアさんで管理します」
「ええ!! なんでえぇぇ!!」
「お姉ちゃん。直ぐギャンブルに使う。だから、駄目……」
そう言うと、お姉ちゃんは「ぐぬぬ」と悔しそうな、それでいて申し訳なさそうな顔を浮かべながらピザを一掴みして口へと突っ込んだ。まあ。取り敢えずはこんな所だろう……
家族が三人も集まれば早々簡単に追っ手の奴等にも遅れは取らない。俺は戦闘能力的にはクソザコナメクジだが、兄さんとお姉ちゃんは戦闘能力に関しては化物クラスだ。だから、そこら辺の心配は殆どなくなった。
いいぞ、《黒の刃》への報復の時も近い。待ってろよ《黒の刃》の糞野郎共、必ず目に物見せてくれるからな。




