第16話 スッテンテンの真相
「所でアイラさん。なんで貴女はそんな裸族の様な格好をしているんですか?」
兄さんが若干青ざめた顔で言い放った。
まだ気分は悪いらしい。
「いやぁ…… これには色々とありましてね。てへへへ……」
と、お姉ちゃんはバツが悪そうにも笑いながら答えた。一体、どう色々あったのだろうか、是非とも聞きたい物だ……
果たして、それがスッテンテンになる程の理由だろうか。もしそうでなかった時はお説教が必要だろう……
まあ、そこは兄さんに任せておけば問題無し。
「なるほど、それでその色々とは一体どんな事があったんですか?」
「ああ、実はな……」
かいつまんで説明すると、アイラお姉ちゃんは《黒の刃》からの追っ手を振り切ってこの街、スラン・ベリスに来たが、直ぐに家族を探す為に元の街に戻ったらしい。
だけど、アジトはもぬけの殻、俺達がいそうな場所を探してもいない、むしろ追っ手の気配もいない。
まあ、これは仕方がない。
私は何故か堅気の世界の方のギルドにいたし。兄さんは兄さんで牢獄にいたし。そこまでは頭が回らなかったのだろう。
そこに違和感を感じたお姉ちゃんは、この街に家族はいないと考えて、またスラン・ベリスに戻り仲間の捜索を始めたそうな。
ほいだら、カジノのオーナーが家族の情報を持ってるから、それを賭けて勝負をしようとなったらしい。それであっという間にスッテンテンとなったらしい。
何故そこで大人しく賭けで勝負をするのか、これがわからない。
そのままふんじばって、爪なり皮なり剥いだりするなりして吐かせれば良かったのに……
「なぜ、律儀に賭けに乗ったんですか。骨の一本や二本、軽く折れば吐かせられたでしょう?」
と、兄さんが物騒な事を口にする。
我ながら流石、兄妹。発想がほぼ同じである。
「いや…… 勝負と言われたら、ついつい……」
そう言えば、軽く骨を折るとはどう言う事なのだろうか?
もう折ってる時点で軽くはないのではないか?
折るのに軽いも重いもあるのか?
単純骨折か複雑骨折の違いか?
どうしよう。まったく、関係無い所が気になってしまう。まあ、別にいいか。今回の問題に関してはもう話がついている様な物だし。
「まあ、いいでしょう……」
クロード兄さんが少し頭を抱えながら呟く。
そして、その瞳に殺意の光が宿る。
「とにかく、私達《闇の華族》になめた真似をしていただいたのは事実。彼等には悪いですが、少し痛い目に会って貰いますか……」
そう、お姉ちゃんがスッテンテンになったのはお姉ちゃんが悪い。そこは何も言えない。だけど、私達家族の情報を出汁にしてお姉ちゃんを賭け事に引っ張り出すのは、勝手な意見で申し訳ないが決して許せない。
「アイラさん。今回の件で貴女が懸けた装備や剣、それを失ったのは貴女の責任です。それに関して私達は一切関与しません。しかし、家族の情報、これだけはなんとしても手に入れさせて貰います、もしもの場合はわかってますね……」
そう、もし。私達家族の情報を持ってると言うのが嘘だった場合は全てを奪った後に皆殺し。本当に情報を持っていたら、情報だけ貰い受けてそれで終わり。勝手な言い分と行動で申し訳ないが、私達《華族》はそう言う集団だ。そんな私達を相手にした事を後悔して貰うしかない。
自分にも殺意の感情が宿るのがわかる。
「さあ、始めましょう。我々《華族》の恐ろしさと話の通じなさ。とくと見せて差し上げましょう」




