第15話 やかましき暗殺
ギルドマスターなど言うから期待していたが、なんの事はない。只のじいさんだ。
兄とギルドマスターの闇夜の技巧派大バトルが見れるかもと思ったがそんな事はなかった。
事の顛末は余りにも呆気なく。決着はベットに寝ているじいさんの口を押さえた時点でついた。
漫画とか、アニメみたいに凄い強いじいさんとかはやつまぱり居ないらしい。少しがっかりだ……
「どうも、マスター・レバノフ。私がわかりますか?」
どうやら、このじいさんはレバノフと言うらしい。兄はそこまで調べていたのだろうか? それとも、知っていて当たり前の事なのだろうか。
取り敢えず、俺も知ってる当たり前。みたいな顔をしておく。その方が格好いいから。
「貴方を殺します。ですが、殺す前に幾つか聞きたい事があります。協力してくれるなら、楽に殺して差し上げます。非協力的なら、私が出来うる限り最悪の方法で貴方を殺します……」
そう言うと兄は一層小さな声で「わかりましたね?」と言った。
その言葉に、じいさんはただただ震えるだけで返答は無かった。しかし、そんな事は関係ないと言った感じで兄は話を続けた。
「私の情報を売ったのは誰ですか? 答えるなら頷きなさい。さもなくば殺します……」
その言葉にじいさんは勢い良く頷く。
兄はその反応に満足げな笑みを浮かべると老人の口を塞いでいた手を話した。その瞬間……
「だれっ……!!」
その瞬間、じいさんは大きな声を挙げ……
挙げ様としたが、その悪足掻きも空しく。その口が大きく開かれた瞬間に、兄の拳がじいさんの口に入り声を挙げるのを制止してみせた。
「ふむ、どうやら苦しんで死にたいみたいですね……」
そう言うと、老人は首をブンブンと横に振ってみせた。
それを見て兄は満面の笑みを浮かべる。
正直、兄が味方だから心強いが普通に怖い。
ちびりそうになる。
「では、最後のチャンスです。私の情報を売ったのは誰ですか? ついでに、貴方はそれでどんな見返りを払ったのですか? それとも貰ったのですか?」
そう言うと兄は拳を老人の口から離した。
すると老人は震えながらも語り出した。
「わ、私は狩りが趣味なんだ、それで……」
「要点だけ言って下さい。殺しますよ……」
フリーザ様かよ……
怖いよ、兄貴……
そんな、おっかない兄貴の言葉に息を飲むと、じいさんはやっと観念したのか息も絶え絶えと言った様子ではあるが語り出した。
「情報をよこした者は誰だかわからない。ただ若い男だった。これは本当だ、信じてくれ……」
この答えに兄はニッコリ笑うと手で「続けて」と諭した。
「その男が《闇の華族》の情報をよこした……」
「……で?」
僅かな、沈黙の間の後に呆れた返答が帰って来た。
「わ、私はお前の銃が欲しかった…… それで……」
うわぁ、コイツ完全に馬鹿だ。
終わってるわ。
まあ、ぶっちゃけると兄の得物は特別な銃で普通の銃としても使えるけど、魔力を込めることで魔弾を撃ち出せる魔銃なのだ。
しかし、そのせいなのか、変な魔力で時折、狂った奴が出現する使用になっている。
何か兎に角、その手の者には喉から手が出る程の欲しい逸品らしい。因みに、俺には全くわからん。
「なるほど…… クレアさん。コイツを頼みます。変な真似したら直ぐに殺して良いですので……」
俺はその言葉に返答はしなかったが、直ぐ様ナイフを取りだし、じいさんの喉元に突きつけると、兄に視線を向けた。
「となると、我が愛銃はここにあると……」
「こ、このベットの下にある……」
その言葉通り、ベットの下を兄が調べると、そこから漆黒に塗られたマスケット銃が見つかった。
その銃の金具は金色に輝いており、魔法が刻まれているのか刻印の様な物が刻まれており、ほのかに魔力が感じられた。
「それで、その情報を売った男とやらは今、何処に?」
「わ、わからない。も、もう、この街にはもう居ない……」
その言葉を聞いた瞬間、兄から魔力が滲み出るのがわかった。
ああ、これは……
「わかりました、もう結構。御協力、ありがとうございました……」
その瞬間、兄の持つ銃から魔弾が放たれ、眩い閃光と共に耳をつんざく様な炸裂音が部屋中に響いた。
そして、それが起こると同時に件のギルドマスターの上半身が消えて無くなっていた。
はあ、やったよ、これは……
今の発砲音で完全にバレたな。
せっかく隠密行動してたのに……
「さ! さっさとズラかりましょ、クレアさん」
そう言うと兄は自らの愛銃を肩に乗せると満足そうに微笑んだ。
思わず溜め息が漏れてしまう。
けど、まあ、これはこれで《闇の華族》ここにあり!! って示すには丁度良いか……
そんなことを思っていると、音を聞き付けてやって来た冒険者だろうか、ドアを蹴り破って何者かが部屋に飛び込んで来た。
「さ、行きますよ。クレアさん!」
次の瞬間、兄は魔弾を放ち壁に大きな穴を空けるとそのまま外に飛び出し闇夜に姿を消した。
俺もそれに続き駆け出す。
「ま、待てッ!!」
その瞬間、聞き覚えのある声が耳に届いた。
咄嗟に声のした方向を見ると、ほんの一瞬。視界の端で見ただけだが。見覚えのある者達が並んでいた。
そう、つい先日まで仲間だった彼等だ……




