第14話 闇夜に……
街の灯りは消え去り、肌寒い空気と風が辺りを通り抜ける。耳が痛くなる程の静寂と、ほんの僅かに聞こえる虫の唄が夜の深さを物語る。
「ギルドカードが新しくなった、そう聞いて怪しいと感じたんです」
俺達はある建物の屋根の上で話していた。
「ギルドカードは個人の識別番号も兼ねている。その為に偽造を防ぐ細工が細かく作られています」
俺は兄の話を黙って聞きく。
基本、俺は口下手と言うか、言葉をろくに話せないので小難しい話の時は聞き役に徹する様にしている。
特に兄の話の時は小難しい話の事が多いのでもっぱら聞き役に回る。
「本来、ギルドカードをあんな簡易的な物にしてはならないのです。なのに、わざわざ私だけの対策の為にギルドカードを“あんなもの”に変えるなんて少し可笑しいと思いませんか?」
そうだろうか、当然の対応じゃ無いのか? と思うが黙って兄を眺める。
当の兄はそんな事を小声で呟きながら、それと平行する様に建物の窓を弄くり回している。
決して、イタズラしている訳ではない。
ピッキングをしているのだ。
現在、俺達はこの建物に新入しようとしているのだ。
「確かに、私はギルドカードをコレクションしてます。しかし、ギルドに私の存在が露見しているとは思えません。なんせ、私の仕事と思われている殺人事態が少ないハズですからね」
む、そう言えばそうかもしれない。
兄も馬鹿ではない。殺すにしても、ダンジョン内で殺したり。死体を魔物に食わせたりして証拠の隠滅はする。
それに兄は腐っても闇ギルド《闇の華族》その長兄なんだ。
変な趣味嗜好はあるけど、その腕前は超一流だ。そうそう簡単には足が付くような真似はしない。
そんな、ヘマをするような奴は兄くらいの年齢になる前に死んでる。
「となると、誰かさんが私の情報をギルドに渡した可能性が高いです」
そう言うと、兄は建物の窓をガチャリと開けた。
そして、さも当たり前かの様に中へと滑り込む。
俺もそれに習い、建物の中にはいる。
確かに、兄の言うことは一理ある。
となると、誰が兄の情報をギルド渡したか。考えられる可能性は身内か依頼主だ。
ただ、俺達家族の中に裏切り者がいるとは考えられない。
少なくとも、俺は確信している。
「恐らく、依頼主の誰かが漏らしたのでしょう」
俺と同じ結論を言うと、兄は音もなく歩き出しある部屋のドアへと向かう。
下調べはバッチリ、と言った所だろう。その足取りに迷いはない。まあ、それもそうだろう。
なにせ、これから向かうのは兄を牢獄に入れた張本人かもしれないんだ。
兄を下らない罠に嵌めた野郎。
そいつに天誅を下しに行くのだ。
まあ、ぶっちゃけ。八つ当たり以外の何者でもないけど、我ら《華族》に舐めた真似をしてくれたんだ、それ相応の対応はしなければならない。
「さあ、ここが目的の部屋。このギルドの頭領。ギルドマスターの部屋ですよ」
そう呟くと兄は不適な笑みを浮かべ、ドアをゆっくりと開けた。




