第9話 臨時収入とお別れ
「やっぱり、結構な値段で売れたね~♪」
ウキウキとスキップするリアナちゃんの手には硬貨が一杯に詰まった袋が握られている。
我ながらぶっちゃけてしまうと、この世界の金銭感覚は全くわからないので、どれぐらい得したのか全くわからない。
「ああ、これだけあれば当面はまったりとやって行っても問題無いな。それとも誰か欲しい装備とかあったりするかい?」
あ~ よくわかんないけど、そんな感じの収入か~ 日本円にして十万くらいかな? いい臨時収入ですね~ 取り敢えず、これで恩は返せただろうか?
「はっはー!! こりゃ!! クレアを拾って得しちまったな!! なんなら正式にウチのパーティーに入っちまわねぇか!!??」
ザルウォーさんが大声を挙げながらコチラに問いかけて来た。その言葉に最初は笑って受け流そうとしたが、他の皆は結構真面目な目付きでこちらを見ている。
え、マジ? マジな流れなの?
まあ、流石に放っとかねぇのか?
自分で言うのもなんだが、こちとら超絶腕利きの暗殺者だ。それに見た目は超絶美少女だしね。
見る人が見れば見脱がす事が出来ない逸材だろうな!! えっへん!!
まさに100年に一人の逸材!! こんな新人どこで!? みたいな感じだろうな。
まあ、だけど……
「ゴメンナサイ……」
そう言って、俺は勢いよく頭を下げる。
皆が真面目に聞いて考えてくれているみたいなので、こちらも真面目に返事を返さなければならないだろう。
俺は下げていた頭を挙げて皆の目を一人一人見て行く。
リアナちゃん。
レックスさん。
オルドさん。
ザルウォーさん。
「私ヤルコトガアル。ヤラナキャ、イケナイ、ダカラ……」
本当はもっとちゃんとお礼を言いたいけど、言語能力が無いのが悔しい限り。本当はもっと冗談を言い合ったりしたいし。変な話もしたいし。ギルドの話とかも聞きたいし。皆としたいことは山程ある。
だけど、それでも……
「ミンナトイッショ。イレナイ。ゴメンナサイ」
私にはやらなくちゃいけないことがあるんだ。
この世界で唯一の家族を探さなければいけない。
「イママデ、ホントアリガトウ。ゴザイマシタ。コノオンハ。ワスレナイヨ!!」
本当にこう言う時ばかりは言語能力が無い事が悔しくて堪らない。
本当はもう少し言って良い事があるかもしれないのに、それも話す事が出来ないのが悔しくて、もどかしくて堪らない。
それにこれ以上は堅気である彼等に世話になる訳には行かない。もしかしたら、あらぬ迷惑をかけてしまうかもしれない。
それだけはなんとしても避けたい。そう、だから……
多分、これがベストな別れ際だ……
「スコシダッタケド。ウレシカッタ。皆、アリガトウ。マタネ!!」
そう言って、私は彼等にもう一度頭を下げた。
そして、その場を去ろうとした矢先。レックスさんが私に向かっておもむろに口を開いた。




