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幻影を纏う刃  作者: ふたばみつき
プロローグ
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プロローグ1 -1人の暗殺者-

 いやはや、しくじっちまったぜ。


 いつかは、こんな日が来るとは思ってはいたが。いざ、その時が来たとなると何やら意外と感慨深い物があるな。


 前世の記憶を持って。この世界に産まれて14年。


 言葉はわからない。文字も読めない。言語野を前世の言語に持って行かれているせいか。未だにこの世界の言葉は片言。

 剣と魔法の世界にも関わらず魔術の才能はハナクソ以下のクソザコナメクジ。

 肉体の強靭さも男だった前世と比べると、貧弱極まりない少女に産まれてしまった。

 散々なまでに煮え湯を飲まされる転生だった。だけど、それでもなんとか、この世界で生きて来た。しかし、ここら辺が年貢の納め時って所らしい……


 自分のか細く白い腕で押さえている脇腹を覗く。

 すると、その場所を赤黒い血が染め上げていた。


 急所は外していると思うが、このままだと間違いなく死んでしまうだろう。


 と言うより。もう意識を保っているのも難しい。

 目茶苦茶眠いし。寒い。

 その悪寒で身体が勝手に震え出す程だ。


 うわぁ。これ知ってるわ。

 だって、一回味わった事あるもん。

 これ、もうすぐ死ぬ奴だ。


 ああ、今までの人生が走馬灯の様に甦る。


 親無し。金無し。家無し。身分無し。名前無し。無し無し三昧で産まれたこの世界。物心着く以前の赤子の頃、闇ギルドに拾われてしまったのが運の尽き……


 まあ、運の尽きとは言う物の悪い場所ではなかった……

 と言うより。居心地が良いか、悪いかで言ったらとても良かった。


 メンバーにはギャンブル狂いのダークエルフだの。血液が苦手な吸血鬼だの。獣だの昆虫だのの亜人がいたり。ヤバめの魔術の研究する老人や、その弟子がいたり。ムキムキマッチョの親父がいたり。獲物のギルドカードをコレクションする変態兄貴もいたり。

 今にして思えば、個性豊かで濃い面子がアットホームに和気あいあいと家族ごっこを繰り広げていた。

 少なくとも、俺のギルドのメンバーはお互いを家族として接していた。


 暗殺者ギルド《闇の華族》


 まあ、暗殺者ギルドなので人様に誇れる様な事は何一つしてないし。それを気にする事も無い位には社会を憎んでたりする。まあ、だからね。


 五分五分ってことで許してね。とか思ってたりする。


 まあ、一言で片付けるとヤバい人達の集まりですわ。俺も含めてね……


 それでも、なんとか上手く行っていた。いつか、手痛いしっぺ返しが来るのも覚悟していた。それは他のギルドメンバーも同じだと思う。それ相応の行為には、それ相応の結果が伴う。


 因果応報、それは已む無し。

 しかし、この仕打ちは無い。

 決して許される物ではない。


 闇ギルドは暗殺者ギルドだけではない。

 無論、他のギルドも存在する。


「クソ…… 《黒の刃》め……」


 思わず、傷口を押さえる腕に力が入る。


 ある日突然だ。


 そう、ある日突然。彼ら《黒の刃》が襲って来た。

 本来は協力関係にあるはずの《黒の刃》がだ……


 その所為で《闇の華族》の皆は……


「くそ…… くそ……」


 なんなんだよアイツら。


 意味わかんねぇよ。


 あ~あ、これで死ぬのかな……


 まあ、好き勝手やってたし。こう言う終わり方をしても、仕方がないのか……



 そうだ、他の皆は無事かな……




 なんとか逃げ切れたかな?





 逃げ切れてたらいいな……


 

 

 

 皆、どうか無事で……

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